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Cペプチドとは?インスリン分泌との関係や検査の重要性を解説

[2025.06.29]

cペプチドとは、膵臓から分泌されるインスリンが作られる過程で生成される物質です。
インスリンと一緒にほぼ同じ量(等モル)が分泌されるため、体内でどのくらいインスリンが作られているかを知るための重要な指標となります。
特に糖尿病の診断や治療において、自身のインスリン分泌能力を把握するために広く用いられています。
cペプチドの値を調べることで、糖尿病の病型を判断したり、適切な治療法を選択したりする上で役立ちます。

cペプチドとは?

インスリン生成におけるcペプチドの役割

cペプチド(Connecting Peptide)は、インスリンを生成する際に膵臓のβ細胞で作られるペプチド(アミノ酸がいくつか結合したもの)です。
インスリンは、血糖値を下げる働きを持つ非常に重要なホルモンですが、その合成過程は少し複雑です。

インスリンは最初から単独のホルモンとして存在するわけではなく、「プロインスリン」という前駆体として合成されます。
このプロインスリンは、インスリン本体となる部分と、それを繋ぐcペプチド部分から構成されています。
プロインスリンが酵素によって分解されると、インスリンとcペプチドが切り離され、それぞれが独立して分泌されます。

CPR(C-ペプチド)がインスリン分泌能力の指標となる理由

cペプチドそのものに直接的な血糖降下作用はありません。
かつては単なるインスリン合成の副産物と考えられていましたが、近年の研究では、神経障害や腎症といった糖尿病合併症の進行を抑制する効果がある可能性も示唆されています。
しかし、その主な役割は、インスリンが膵臓で適切に合成されていることの「証」として、インスリンと同時に分泌される点にあります。

プロインスリンが分解される際に、インスリン分子1つに対してcペプチド分子も1つ生成されます。
そのため、血中や尿中のcペプチド濃度を測定することで、膵臓のβ細胞がどのくらいインスリンを分泌しているかを間接的に知ることができるのです。

インスリンは体内で非常に速やかに分解されます。
特に肝臓で多く分解されるため、血中に入ったインスリンは比較的早く消失してしまいます。
一方、cペプチドは肝臓での分解を受けにくく、主に腎臓から排泄されます。
この性質から、血中での半減期(濃度が半分になるまでの時間)がインスリンよりも長く、インスリンよりも安定した濃度で存在します。

これにより、体内に分泌されたインスリンの総量を推測する上で、血中や尿中のcペプチド濃度の方が、直接血中インスリン濃度を測定するよりも正確な指標となります。
特に、外からインスリン注射による治療を受けている場合、血中インスリン濃度を測定しても、体内で作られたインスリンと注射されたインスリンを区別することが困難です。
しかし、cペプチドは体内で作られたインスリンに伴ってのみ分泌されるため、注射されたインスリンの影響を受けずに、自身の膵臓のインスリン分泌能力(内因性インスリン分泌能)を評価することができるのです。

cペプチドの検査方法と目的

cペプチドの検査は、主に血液または尿を用いて行われます。
これらの検査によって、膵臓のβ細胞がどのくらいインスリンを分泌しているか、つまりインスリン分泌能力(能)を評価することが主な目的です。

cペプチド検査の種類(血液・尿)

cペプチド検査には、大きく分けて血液検査と尿検査があります。

  1. 血中cペプチド検査 (Serum C-peptide: SCR または CPR):
    • 静脈から採血した血液中のcペプチド濃度を測定します。
    • 主に空腹時や、ブドウ糖負荷試験(糖を摂取した後の血糖値とホルモン分泌の変化を見る検査)と組み合わせて測定されることが多いです。
    • 食前(空腹時)と食後(または糖負荷後)の値を比較することで、血糖値の上昇に対するインスリン分泌の応答性を評価できます。
    • 測定時の血中濃度を反映するため、比較的手軽に実施できますが、食事や体調、直前の運動などの影響を受けやすい側面もあります。
  2. 尿中cペプチド検査 (Urinary C-peptide: U-CPR):
    • 尿中のcペプチド排泄量を測定します。
    • 随時尿(いつでも採取した尿)で測定することもありますが、通常は24時間蓄積尿(24時間分の尿をすべて集めて測定)で測定することが多いです。
    • 24時間蓄積尿で測定すると、1日の総インスリン分泌量をより正確に反映できるため、血中cペプチドよりも安定した指標となる場合があります。
    • 腎機能が低下している場合は、cペプチドの排泄が滞るため、実際の内因性インスリン分泌能よりも高値を示すことがある点に注意が必要です。

どちらの検査も、それぞれのメリット・デメリットや目的に応じて選択されます。
一般的には、まず血中cペプチド検査が行われ、より詳細な評価が必要な場合に尿中cペプチド検査が追加されることもあります。

cペプチドの検査でわかること

cペプチド検査によって、主に以下のことがわかります。

  • 膵臓のインスリン分泌能力の評価: 最も重要な目的です。
    インスリンが体内でどの程度作られているかを知ることで、インスリン分泌が十分か、不足しているか、あるいは過剰かを判断します。
  • 糖尿病の病型診断: 1型糖尿病は膵臓のβ細胞が破壊されインスリン分泌が著しく低下する病気であるのに対し、2型糖尿病はインスリンの作用不足(インスリン抵抗性)や分泌能力の低下が主な原因です。
    cペプチド値は1型糖尿病で極端に低く、2型糖尿病では病状によって様々であるため、病型を区別する上で重要な情報となります。
    特に、診断初期の段階での病型判断に役立ちます。
  • 糖尿病治療法の選択: cペプチド値が低い(インスリン分泌が少ない)場合は、インスリン補充療法(インスリン注射)が必要となる可能性が高いです。
    一方、cペプチド値がある程度保たれている場合は、経口血糖降下薬による治療や生活習慣の改善が有効である可能性があります。
    cペプチド値は、患者さんのインスリン分泌能に応じた適切な治療法を選択するための判断材料となります。
  • インスリン療法の効果判定: 外からのインスリン注射の効果を判定する際、自身のインスリン分泌能がどの程度保たれているかを知ることが重要です。
    cペプチド値は外来インスリンの影響を受けないため、この評価に役立ちます。
  • 低血糖の原因究明: 原因不明の低血糖が起こった場合、インスリノーマ(インスリンを過剰に分泌する腫瘍)やインスリン自己免疫症候群など、インスリン分泌が過剰になっている病気が原因であるかを判断するためにcペプチド値が測定されます。

このように、cペプチド検査は、糖尿病に関する様々な状況で、患者さん自身のインスリン分泌の状態を把握し、適切な診断や治療方針を立てる上で非常に有用な検査です。

cペプチドの基準値・正常値

cペプチドの基準値は、測定方法(血液か尿か、空腹時か食後かなど)や検査を実施する医療機関によって多少異なります。
一般的な目安として、以下に血中cペプチドと尿中cペプチドの基準値を示します。

血中cペプチドの基準値(食前・食後)

血中cペプチドは、食事や血糖値の上昇に反応して分泌が促進されるため、空腹時と食後(またはブドウ糖負荷後)で基準値が異なります。

  • 空腹時血中cペプチド:
    • 0.5 ~ 2.0 ng/mL (ナノグラム/ミリリットル) あるいは 0.17 ~ 0.66 nmol/L (ナノモル/リットル) 程度が一般的です。
    • 医療機関によっては単位や測定方法が異なるため、具体的な基準値は検査結果を確認する必要があります。
    • この値は、食事をしていない安静時の基礎的なインスリン分泌能を示します。
  • 食後またはブドウ糖負荷後血中cペプチド:
    • 食事やブドウ糖の摂取により血糖値が上昇すると、それに反応してインスリンとcペプチドの分泌が増加します。
    • 食後(例えば30分後、1時間後、2時間後)やブドウ糖負荷試験(OGTT:Oral Glucose Tolerance Test)実施後の血中cペプチド値は、空腹時よりも高くなります。
    • 具体的な基準値は検査プロトコルによって異なりますが、空腹時値の数倍(例えば2.0 ~ 7.0 ng/mL以上)になるのが通常です。
      血糖値の上昇に応じて適切にインスリンが分泌されているか(インスリン分泌応答性)を評価します。

尿中cペプチドの基準値

尿中cペプチドは、腎臓から排泄されたcペプチドの量を測定します。
通常は24時間蓄積尿で測定し、1日あたりの排泄量を評価します。

  • 24時間蓄積尿中cペプチド:
    • 40 ~ 200 μg/日 (マイクログラム/日) あるいは 13 ~ 66 nmol/日 (ナノモル/日) 程度が一般的です。
    • この値は、1日を通してどのくらいのインスリンが分泌されているかを推測する目安となります。
  • 随時尿中cペプチド:
    • 任意のタイミングで採取した尿中のcペプチド濃度を測定します。
    • 尿の濃さによって値が変動するため、正確なインスリン分泌能の評価には限界がありますが、手軽に実施できる利点があります。
    • 尿中クレアチニン値で補正して評価することもあります。
      基準値は測定方法によって異なります。

基準値はあくまで目安です

ここで示した基準値は一般的なものであり、使用する検査キットや測定方法、医療機関によって設定されている基準値は異なる場合があります。
検査結果を受け取った際には、必ず担当の医師や検査技師に確認し、ご自身の値がその医療機関の基準値と比較してどうであるかを説明してもらうことが重要です。

また、cペプチドの値は、体調、食事の内容、運動、腎機能など様々な要因によって変動する可能性があります。
そのため、一度の検査結果だけで安易に判断せず、医師の総合的な判断に基づいた評価を受けるようにしましょう。
基準値をわずかに超えている、あるいは下回っている場合でも、直ちに病的な状態を示すわけではありません。

cペプチドが高い(高値)場合

血中または尿中のcペプチド値が基準値よりも高い(高値)場合、これは体内でインスリンが通常よりも多く分泌されている、あるいは分泌されたインスリンが適切に処理されずに残っている状態を示唆します。

cペプチド高値が示す可能性

cペプチド高値は、主に以下の状態を示している可能性があります。

  • インスリン分泌過剰: 膵臓のβ細胞が通常よりも多くのインスリンを分泌している状態です。
  • インスリン抵抗性の存在: インスリンは分泌されているものの、体の組織(筋肉、脂肪、肝臓など)でのインスリンの効きが悪くなっている状態(インスリン抵抗性)です。
    体は血糖値を下げようと、より多くのインスリンを分泌することで対応しようとします。
    この場合、インスリン分泌量は多いものの、血糖コントロールはうまくいかないことがあります。
  • インスリンクリアランスの低下: 分泌されたインスリンやcペプチドが体内で分解・排泄される速度が遅くなっている状態です。
    特にcペプチドは主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している場合に高値となることがあります。

cペプチド高値の原因となる疾患や状態

cペプチド高値の原因としては、様々な疾患や状態が考えられます。

  • 2型糖尿病(特に初期〜中期): 2型糖尿病の初期段階では、インスリン抵抗性が主な原因であることが多く、膵臓はこれに対抗するためにインスリンを過剰に分泌しようとします。
    この代償機構が働いている間は、cペプチド値は高値を示すことがあります。
    病状が進行し、膵臓の疲弊が進むと、徐々にインスリン分泌能が低下し、cペプチド値も低下していきます。
  • インスリノーマ: 膵臓のβ細胞に発生する腫瘍で、インスリンを過剰かつ無秩序に分泌します。
    これにより血糖値が必要以上に下がり、低血糖を引き起こします。
    インスリン分泌が多いことを示すcペプチド値も著しく高値となります。
    原因不明の低血糖でcペプチド高値が見られた場合に強く疑われる病気です。
  • インスリン自己免疫症候群: 体内で作られたインスリンに対する抗体(インスリン自己抗体)ができることで起こる病気です。
    この抗体がインスリンと結合し、一時的にインスリンの作用を妨げますが、後に抗体からインスリンが遊離することで急激な低血糖を引き起こすことがあります。
    インスリンと結合した抗体はゆっくりと体外へ排泄されるため、インスリンやcペプチドの血中濃度が長期間高値になることがあります。
  • 腎機能低下: cペプチドは主に腎臓から排泄されるため、慢性腎臓病などにより腎臓の機能が低下すると、cペプチドが体内に蓄積し、血中濃度が高くなります。
    この場合は、インスリン分泌自体が過剰でなくてもcペプチド高値となるため、注意が必要です。
    腎機能の状態と合わせて評価する必要があります。
  • 薬剤の影響: スルホニル尿素薬(SU薬)やグリニド薬など、膵臓からのインスリン分泌を促進するタイプの血糖降下薬を服用している場合、cペプチド値が高くなることがあります。
  • 妊娠: 妊娠中はインスリン抵抗性が増大し、妊娠糖尿病などではインスリン分泌が亢進するため、cペプチド値が高くなることがあります。
  • 肥満: 高度な肥満がある場合、インスリン抵抗性が生じやすく、代償的にインスリン分泌が増加するためcペプチド高値となることがあります。

cペプチド高値が見られた場合、その原因を特定するために、追加の検査(血糖値、インスリン値、インスリン自己抗体、腎機能検査など)や詳細な問診、画像検査などが行われます。
原因疾患に応じた適切な治療が必要です。

cペプチドが低い(低値)場合

血中または尿中のcペプチド値が基準値よりも低い(低値)場合、これは体内でインスリンがあまり作られていない、あるいはほとんど作られていない状態を示唆します。

cペプチド低値が示す可能性

cペプチド低値は、主に以下の状態を示している可能性があります。

  • インスリン分泌不全: 膵臓のβ細胞の機能が低下しているか、破壊されているために、十分な量のインスリンを分泌できない状態です。
  • 外来インスリンの影響: 外からインスリン注射を受けている場合、自身の膵臓からのインスリン分泌が抑制されることがあります(外来インスリンによるフィードバック制御)。
    この場合、体内で作られるインスリン量が減るため、cペプチド値が低くなることがあります。
    ただし、インスリン療法中でも自身の分泌能を評価するためにcペプチドは有用です。

cペプチド低値の原因となる疾患や状態

cペプチド低値の最も代表的な原因は、膵臓のβ細胞の機能障害または破壊です。

  • 1型糖尿病: 自己免疫などによって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。
    診断時には、cペプチド値が著しく低い、あるいは測定感度以下であることがほとんどです。
    劇症1型糖尿病の場合は、β細胞の破壊が非常に急速に進行するため、診断時にはすでにcペプチド値が測定限界以下であることが多いです。
    1型糖尿病の患者さんは、生涯にわたりインスリン補充療法が必要となります。
  • 膵臓疾患: 慢性膵炎や膵臓の手術(膵切除)などにより、膵臓のβ細胞が障害を受けたり失われたりした場合、インスリン分泌能が低下しcペプチド値が低くなることがあります。
    膵性糖尿病と呼ばれる状態です。
  • 長期間の高血糖: 長期間にわたってコントロール不良の高血糖状態が続くと、膵臓のβ細胞が「糖毒性」によって疲弊し、インスリン分泌能力が低下することがあります。
    この状態は、適切な血糖コントロールによってある程度回復することもありますが、慢性的な高血糖はβ細胞機能にダメージを与えます。
  • インスリン療法中: 前述の通り、外からインスリンを注射している場合、自身のインスリン分泌が抑制されるため、cペプチド値が低くなることがあります。
    これは治療によるものであり、必ずしも病的なインスリン分泌不全を示しているわけではありません。
    しかし、インスリン治療を受けている糖尿病患者さんでも、自身のインスリン分泌能がどの程度保たれているかを知ることは、治療方針を立てる上で重要です。

cペプチド低値は、多くの場合、インスリン分泌が不足している状態を示しており、特に1型糖尿病の重要な診断基準の一つとなります。
cペプチド値が著しく低い場合は、インスリン補充療法が必要不可欠であることを意味します。

cペプチドと糖尿病の関係

cペプチドは、糖尿病の診断、病型分類、治療方針の決定、治療効果の評価において非常に重要な役割を果たします。
糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が高い状態が慢性的に続く病気であり、その原因によって大きく1型と2型に分けられます。

糖尿病の種類(1型・2型)とcペプチド値

1型糖尿病と2型糖尿病は、発症のメカニズムが大きく異なります。
cペプチド値は、この違いを判断する上で役立ちます。

  • 1型糖尿病:
    • 膵臓のβ細胞が自己免疫などによって破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなります。
    • そのため、体内で作られるインスリン量は極めて少なく、cペプチド値は著しく低い(基準値以下または測定限界以下)ことが特徴です。
    • cペプチド値が極端に低いことが、1型糖尿病診断の重要な根拠となります。
    • 治療には、外からのインスリン補充(インスリン注射やポンプ)が必須です。
  • 2型糖尿病:
    • 遺伝的な要因や、食べ過ぎ・運動不足といった生活習慣が複雑に絡み合って発症します。
    • 主な原因は、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」と、それに続くインスリン分泌能力の低下です。
    • 病気の初期段階では、インスリン抵抗性に対して膵臓が代償的にインスリンを過剰に分泌しようとするため、cペプチド値は基準値内〜高めを示すことがあります。
    • 病気が進行し、膵臓のβ細胞が疲弊してくると、徐々にインスリン分泌能力が低下し、cペプチド値も低下していきます。
    • cペプチド値は、2型糖尿病患者さんの現在のインスリン分泌能を知り、経口血糖降下薬で対応できるか、あるいはインスリン療法が必要かを判断する目安となります。
糖尿病の種類 主な原因 インスリン分泌能 cペプチド値 主な治療
1型 β細胞の破壊(自己免疫など) 著しく低下または消失 著しく低い(測定限界以下になることも) インスリン療法(必須)
2型 インスリン抵抗性、β細胞機能低下(生活習慣) 初期:代償性分泌亢進
進行:徐々に低下
初期:基準値内〜高め
進行:徐々に低下
生活習慣改善、経口薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン療法

インスリン抵抗性との関連

インスリン抵抗性とは、インスリンが正常に分泌されているにも関わらず、筋肉や脂肪、肝臓などの細胞がインスリンの作用(血糖を取り込む働き)を受けにくくなっている状態です。
インスリンがうまく働かないため、血糖値が下がりにくくなります。

体は血糖値を正常に保とうとして、膵臓に「もっとインスリンを出せ!」という指令を送ります。
この指令を受けて、膵臓のβ細胞はインスリン抵抗性を克服するために、通常よりも多くのインスリンを分泌しようとします。
この代償的なインスリン分泌の亢進に伴って、cペプチドもより多く分泌されるため、インスリン抵抗性が強い状態では、cペプチド値が高くなる傾向が見られます。

しかし、この代償機構も無限に続くわけではありません。
長期間にわたる過剰なインスリン分泌は、膵臓のβ細胞に負担をかけ、徐々にその機能が疲弊していきます。
インスリン分泌能力が低下し始めると、インスリン抵抗性があるにも関わらず、十分なインスリンを分泌できなくなり、血糖値はさらに上昇します。
この段階になると、cペプチド値も低下してきます。

このように、cペプチド値は、単にインスリン分泌量を示すだけでなく、インスリン抵抗性の有無や、膵臓がどれだけ抵抗性に対応しようとしているか、そしてβ細胞の疲弊がどの程度進んでいるかといった、糖尿病の病態を理解する上で非常に重要な情報を提供してくれます。

cペプチドについてよくある質問(FAQ)

cペプチドに関するよくある質問とその回答です。

cペプチドが高いとどうなりますか?

cペプチドが高いということは、体内でインスリンが通常よりも多く分泌されている可能性が高いことを示します。
これが続くと、主に以下のような影響が考えられます。

  • 高インスリン血症: 血中のインスリン濃度が高い状態です。
    インスリン抵抗性がある場合や、インスリノーマなどで起こります。
  • 低血糖のリスク: インスリノーマやインスリン自己免疫症候群など、インスリンが過剰に分泌される病気の場合、血糖値が必要以上に下がり、冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、意識障害などの低血糖症状を引き起こす可能性があります。
    薬剤(SU薬やグリニド薬)による治療中にも起こり得ます。
  • 動脈硬化の促進: 高インスリン血症は、肥満、高血圧、脂質異常症などと関連が深く、これらの危険因子とともに動脈硬化を進行させる可能性が指摘されています(メタボリックシンドロームの一部と考えられます)。
  • 高血糖の持続: 2型糖尿病でインスリン抵抗性がある場合、インスリンはたくさん出ているにも関わらず血糖値は十分に下がりません。
    高血糖が続くと、全身の血管や神経にダメージを与え、糖尿病合併症(神経障害、網膜症、腎症など)のリスクが高まります。

cペプチド高値は、これらの状態を示唆するサインの一つであり、原因を特定して適切な対応をとることが重要です。

cペプチド検査は何の検査ですか?

cペプチド検査は、自身の膵臓がどのくらいインスリンを作って分泌しているか(インスリン分泌能力)を評価するための検査です。
血液や尿中のcペプチド濃度(または排泄量)を測定することで、膵臓のβ細胞の働き具合を間接的に知ることができます。
特に、糖尿病の病型診断や、インスリン療法を含めた治療法の選択・評価に役立ちます。

糖尿病のcペプチドの基準値は?

糖尿病の種類や病状によって、cペプチド値の解釈は異なります。
一般的な基準値は前述の通りですが、糖尿病患者さんの場合、その基準値と比較して自身のインスリン分泌能が十分か、不足しているか、あるいは過剰かを判断します。

  • 1型糖尿病: 通常、cペプチド値は著しく低い(基準値以下または測定限界以下)です。
  • 2型糖尿病: 病状によって様々です。
    初期のインスリン抵抗性が強い時期は基準値内〜高め、病状が進み膵臓が疲弊すると基準値以下に低下します。

糖尿病患者さんのcペプチド値の具体的な評価や目標値は、個々の病状、治療目標、合併症の有無などを考慮して医師が判断します。

シーペプチドの正常値はいくつですか?

「シーペプチド」は「cペプチド」のカタカナ表記です。
正常値、つまり基準値は、検査方法によって異なります。

  • 空腹時血中cペプチド: 一般的に 0.5 ~ 2.0 ng/mL 程度
  • 24時間蓄積尿中cペプチド: 一般的に 40 ~ 200 μg/日 程度

ただし、これらの値はあくまで一般的な目安であり、検査機関によって基準値は異なります。
ご自身の検査結果については、必ず医師に確認してください。

cペプチドは食事の影響を受けますか?

はい、血中cペプチドは食事の影響を受けます
食事をすると血糖値が上昇し、それに反応してインスリンとcペプチドの分泌が促進されるため、食後は空腹時よりも血中cペプチド値が高くなります。
尿中cペプチドも、食事の影響で分泌が増えた分が尿中に排泄されるため影響を受けますが、24時間蓄積尿であれば1日の総排泄量として評価するため、特定の食事の影響は平準化されます。
血中cペプチド検査を受ける場合は、検査の目的に応じて、空腹時なのか、食後なのか、または糖負荷試験なのか、事前に医師からの指示をよく確認し、その指示に従うことが重要です。
特に空腹時検査の場合は、通常8時間以上(できれば10時間以上)の絶食が必要です。

cペプチドの検査を受けるべき方

cペプチドの検査は、主に以下のような方に推奨されます。

  • 糖尿病が疑われる方: 血糖値が高い、尿糖が出るといった症状がある場合、糖尿病の診断や病型を判断するためにcペプチド検査が行われます。
  • 既に糖尿病と診断されている方:
    • 病型診断の確定: 特に1型糖尿病と2型糖尿病、あるいはその他の稀な型の糖尿病(MODYなど)を区別するために重要な検査です。
    • 治療方針の決定: cペプチド値に基づき、経口血糖降下薬が有効か、インスリン療法が必要かなど、患者さんのインスリン分泌能に応じた最適な治療法を選択する際に参考にされます。
    • 治療効果の評価: 治療によってインスリン分泌能が改善したか、あるいは低下が進んでいないかなどを評価するために定期的に検査されることがあります。
    • インスリン療法を受けている方: 自身のインスリン分泌能がどの程度残存しているかを知ることは、インスリンの種類や量を調整する上で役立ちます。
  • 原因不明の低血糖を経験した方: 低血糖の原因が、インスリノーマやインスリン自己免疫症候群など、インスリン分泌過剰によるものであるかを調べるために、血糖値やインスリン値と合わせてcペプチド値が測定されます。
  • 膵臓の病気がある方: 慢性膵炎や膵臓手術後など、膵臓機能が低下している可能性がある方で、糖尿病や血糖コントロール異常がみられる場合に、インスリン分泌能を評価するために検査されることがあります。

cペプチド検査は、糖尿病や血糖コントロールに関連する様々な病態の把握に役立つ重要な検査です。
どのような場合に検査が必要かについては、ご自身の症状や既往歴、健康状態を踏まえて医師とよく相談してください。

まとめ:cペプチドでわかる体の状態

cペプチドは、膵臓でインスリンが作られる際にインスリンと等しい量で分泌されるペプチドです。
インスリンとは異なり体内で比較的安定しており、主に腎臓から排泄されるという性質を持つため、血中や尿中のcペプチド濃度を測定することで、自身のインスリン分泌能力(内因性インスリン分泌能)を正確に評価することができます。

このcペプチド検査は、特に糖尿病の医療において極めて有用なツールです。

  • cペプチド値が著しく低い場合: 膵臓からのインスリン分泌がほとんどない状態を示唆し、主に1型糖尿病が強く疑われます。
    この場合、インスリン補充療法が生命維持のために必須となります。
  • cペプチド値が基準値内〜高めの場合: 膵臓のインスリン分泌能力がある程度保たれている、あるいは代償的にインスリンを過剰に分泌している状態を示唆します。
    2型糖尿病の初期〜中期や、インスリン抵抗性が主な原因である場合に多く見られます。
    また、インスリノーマやインスリン自己免疫症候群、腎機能低下などが原因となることもあります。
  • cペプチド値が低下している場合(2型糖尿病): 2型糖尿病が進行し、膵臓のβ細胞が疲弊してインスリン分泌能力が低下している状態を示唆します。
    治療によってcペプチド値がある程度改善することもありますが、低下が進むと経口薬だけでは血糖コントロールが難しくなり、インスリン療法が必要になる場合があります。

cペプチド検査の結果は、糖尿病の病型診断、患者さん一人ひとりに合った治療法(生活習慣改善、経口薬、インスリン療法など)の選択、そして治療効果の判定に役立ちます。
また、原因不明の低血糖の診断にも重要な情報を提供します。

cペプチド値は、検査時の体調、食事、腎機能など様々な要因によって変動する可能性があります。
そのため、検査結果の解釈にあたっては、必ず担当の医師にご相談ください。
cペプチド検査は、自身の体の状態、特に血糖を調節する重要なホルモンであるインスリンの分泌能力を知るための鍵となる検査であり、適切な健康管理や治療方針を立てる上で非常に重要な役割を果たします。

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