2型糖尿病とは?なぜなる?原因・症状・治療法を解説
2型糖尿病とは、血糖値が高い状態が続く病気です。
体内で血糖値を調節するホルモンであるインスリンの働きが十分でないか、量が足りなくなることで起こります。
自覚症状がないまま進行することが多く、気づかないうちに血管や神経にダメージを与え、様々な合併症を引き起こす可能性があります。
しかし、適切な対策を講じることで、病気の進行を抑え、合併症を防ぐことができます。
この記事では、2型糖尿病の基本的な知識から、原因、症状、診断、治療、予防までを詳しく解説します。
ご自身の健康状態を見直し、2型糖尿病について理解を深めることで、早期発見や適切な対応につなげましょう。
2型糖尿病とは? 基本的な定義
2型糖尿病は、日本人に最も多いタイプの糖尿病です。
遺伝的な要因に加え、過食、運動不足、肥満、喫煙、ストレスといった生活習慣が深く関わって発症することが特徴です。
体質的にインスリンの分泌が少ない、またはインスリンは分泌されているものの、その働きが十分に発揮されない(インスリン抵抗性)状態が続くことで、血糖値が高い状態が慢性的に持続します。
血糖値が高い状態とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことです。
食事をして炭水化物を摂取すると、消化されてブドウ糖になり、血液中に吸収されて全身の細胞にエネルギーとして供給されます。
この時、一時的に血糖値は上昇しますが、通常は膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、細胞へのブドウ糖の取り込みが促進され、血糖値は正常な範囲に戻ります。
しかし、インスリンの働きが悪くなったり、分泌量が減ったりすると、血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込まれず、血管の中にブドウ糖が溢れた状態になります。
これが「高血糖」です。
一時的な高血糖であれば問題ありませんが、高血糖が長期間続くと、血管や神経などがダメージを受け始め、様々な病気(合併症)を引き起こすリスクが高まります。
高血糖状態は、まるで血管が砂糖水の中に浸かっているような状態とも言われ、全身の臓器に悪影響を及ぼすのです。
インスリンの働きとは
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンです。
その主な働きは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませてエネルギーとして利用させたり、余ったブドウ糖をグリコーゲンや脂肪に変えて肝臓や筋肉に蓄えたりすることです。
これにより、食後の上がった血糖値を下げ、常に血糖値が一定の範囲に保たれるように調節しています。
2型糖尿病では、このインスリンの働きが二つの側面で障害されます。
一つは「インスリン抵抗性」です。
これは、インスリンは十分な量が出ているにも関わらず、細胞側がインスリンの信号をうまく受け取れず、ブドウ糖を取り込みにくい状態を指します。
特に肥満、中でも内臓脂肪が多い場合に起こりやすいとされています。
もう一つは「インスリン分泌不全」です。
これは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能が低下し、インスリンの分泌量自体が減ってしまう状態です。
これは遺伝的な要因や長年の高血糖によるβ細胞の疲弊などが原因となります。
2型糖尿病患者さんの多くは、これら両方の問題が程度の差こそあれ存在しています。
1型糖尿病との違い
糖尿病は大きく1型と2型に分けられますが、これらは全く異なる病気です。
病気の原因、発症のメカニズム、発症時期、治療法などが異なります。
2型糖尿病は生活習慣との関連が強いのに対し、1型糖尿病は自己免疫疾患としての側面が強いのが特徴です。
発症の原因の比較
1型糖尿病は、自己免疫によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなることで発症します。
自己免疫とは、本来であれば外から侵入した異物(ウイルスや細菌など)を攻撃するはずの免疫システムが、自分自身の体を攻撃してしまう状態です。
なぜ自己免疫がβ細胞を攻撃するのか、詳しい原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な素因に加えて、特定のウイルス感染などが引き金になると考えられています。
一方、2型糖尿病は、遺伝的な体質に加えて、長年の不適切な生活習慣(過食、運動不足、肥満、喫煙など)が複合的に作用して発症します。
インスリンの働きが悪くなるインスリン抵抗性や、インスリンの分泌量が不足するインスリン分泌不全が主な原因です。
生活習慣病としての側面が強く、予防や改善には生活習慣の改善が非常に重要となります。
発症時期・スピードの比較
1型糖尿病は、免疫システムによるβ細胞の破壊が比較的急速に進むことが多く、多くの場合、小児期から思春期にかけて突然発症します。
数日から数週間といった短い期間で急激に高血糖状態となり、重篤な症状が現れることが多いです。
対照的に、2型糖尿病は、インスリンの働きや分泌の低下がゆっくりと進行することが一般的です。
そのため、多くの場合、中年以降に発症しますが、近年では食生活の変化などにより若い世代や小児期に発症するケースも増えています。
病気の進行が緩やかなため、初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。
数年、あるいは十数年かけて徐々に血糖値が上昇していくケースが多いです。
治療法の違い
原因と発症メカニズムが異なるため、治療法も大きく異なります。
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されないため、外部からインスリンを補充する「インスリン療法」が必須となります。
食事療法や運動療法も重要ですが、血糖コントロールの中心はインスリン注射です。
生涯にわたってインスリン療法を続ける必要があります。
2型糖尿病は、インスリン抵抗性やインスリン分泌不全が原因であるため、まずは「食事療法」と「運動療法」による生活習慣の改善が治療の基本となります。
これらによっても血糖コントロールが不十分な場合に、「薬物療法」が追加されます。
薬物療法には、様々な種類の飲み薬や、GLP-1受容体作動薬などの注射薬、そしてインスリン注射があります。
病状の進行度や個々の状態に合わせて、これらの治療法を組み合わせて行います。
生活習慣の改善によって、薬物療法が不要になる「寛解」を目指せる場合もあります。
両者の違いをまとめると以下のようになります。
特徴 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
---|---|---|
原因 | 自己免疫によるβ細胞破壊 | インスリン抵抗性、インスリン分泌不全 |
発症のメカニズム | インスリンがほとんど出なくなる | インスリンの働きが悪い・量が少ない |
主な発症時期 | 小児期・思春期に多い | 中年以降に多い(若年化傾向) |
発症のスピード | 急激 | 緩徐 |
体型との関連 | 肥満でないことが多い | 肥満(特に内臓脂肪型)が多い |
治療の基本 | インスリン療法が必須 | 食事療法、運動療法(必要に応じて薬物療法) |
インスリン療法 | 生涯にわたり必要 | 病状に応じて必要 |
予防 | 困難 | 生活習慣の改善によりある程度可能 |
2型糖尿病の症状
2型糖尿病の最大の特徴は、初期にはほとんど自覚症状がないことが多い点です。
このため、病気がかなり進行してから発見されるケースが少なくありません。
しかし、血糖値が非常に高くなると、様々な症状が現れてきます。
初期症状がないことが多い
なぜ初期に症状がないのでしょうか?
それは、私たちの体が血糖値の上昇に比較的順応できてしまうためです。
正常な血糖値の範囲を少し超えた程度であれば、体は何とか血糖値を下げようと頑張ります。
膵臓のβ細胞はインスリンを増産し、インスリン抵抗性に対抗しようとします。
この段階では、高血糖による明らかな体の不調を感じることは少ないのです。
しかし、高血糖状態が長期間続くと、血管や神経は徐々にダメージを受け始めます。
また、膵臓のβ細胞も疲弊し、インスリンの分泌能力がさらに低下していきます。
こうして血糖値がさらに高くなると、いよいよ体に様々な影響が出始め、症状として現れるようになります。
自覚症状が現れた時には、すでに合併症が始まっている可能性もゼロではありません。
定期的な健康診断で血糖値をチェックし、早期発見に努めることが非常に重要です。
典型的な症状
血糖値が非常に高くなると現れる、比較的わかりやすい症状を「典型的な症状」といいます。
多飲・多尿・体重減少
血糖値が著しく高くなると、血液中のブドウ糖が尿中に漏れ出すようになります(尿糖)。
これは、腎臓が血液をろ過する際に、高すぎるブドウ糖をすべて再吸収しきれなくなるためです。
尿中にブドウ糖が多くなると、浸透圧の関係で尿量が増えます(多尿)。
尿量が増えることで体から水分が失われるため、喉が異常に乾き、水分をたくさん飲むようになります(多飲)。
さらに、本来エネルギー源として利用されるべきブドウ糖が尿中に排出されてしまうため、十分なエネルギーが細胞に取り込まれず、食べても体がエネルギー不足の状態になります。
この結果、体が脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとするため、いくら食べても体重が減ってしまうことがあります(体重減少)。
これは、高血糖がかなり進行しているサインの一つです。
疲労感、皮膚のかゆみ
細胞がエネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できないため、体全体がエネルギー不足になり、疲れやすさや強い疲労感を感じることがあります。
また、高血糖は皮膚にも影響を与えます。
皮膚のバリア機能が低下したり、感染しやすくなったりすることで、かゆみを感じやすくなることがあります。
特に下半身などに強いかゆみが出ることがあります。
見逃されがちな症状
典型的な症状に比べて、糖尿病との関連に気づきにくい、あるいは他の病気と間違えやすい症状もあります。
これらも見逃さずに注意が必要です。
手足のしびれ・感覚低下
高血糖が長く続くと、手足の末梢神経が障害されます。
これを「糖尿病神経障害」といい、糖尿病の三大合併症の一つです。
初期には足の指先や足の裏から始まり、左右対称にピリピリ、ジンジンといったしびれを感じたり、感覚が鈍くなったりします。
進行すると、痛覚や温度覚も鈍くなり、小さな傷や火傷に気づきにくくなり、重症化するリスクが高まります。
逆に、何も触れていないのに強い痛みを感じることもあります。
感染症にかかりやすい
高血糖状態では、免疫細胞の機能が低下したり、体液(血液や尿)の糖分が高くなることで細菌やカビが繁殖しやすくなったりします。
そのため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすく、また治りにくくなります。
特に、膀胱炎、腎盂腎炎、肺炎、皮膚の化膿、歯周病などの感染症を繰り返しやすい場合は、糖尿病のサインである可能性があります。
目のかすみ
高血糖は目の小さな血管や神経にも影響を与えます。
血糖値が急激に変動した際に一時的に目が見えにくくなったり、焦点が合いにくくなったりすることがあります。
また、進行すると「糖尿病網膜症」という糖尿病の三大合併症の一つを引き起こします。
これは目の奥にある網膜の血管が障害される病気で、初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると視力低下や飛蚊症(目の前に黒い点が飛んでいるように見える症状)が現れ、最終的には失明に至る可能性もあります。
性機能の問題(ED)
男性の場合、高血糖が長く続くと、陰茎の血管や神経が障害され、勃起不全(ED)を引き起こすことがあります。
これは糖尿病の合併症の一つとして比較的多く見られます。
EDは性生活だけでなく、男性のQOL(生活の質)に大きく影響します。
また、EDは動脈硬化のサインであることも多く、心筋梗塞や脳卒中といったより重篤な血管の病気が隠れている可能性を示唆することもあります。
これらの見逃されがちな症状がある場合も、糖尿病の可能性を疑い、医療機関を受診することが大切です。
2型糖尿病の原因とリスク因子
2型糖尿病の発症には、遺伝的な体質と後天的な生活習慣が複雑に絡み合っています。
特に、インスリン抵抗性を引き起こしやすい生活習慣や、インスリン分泌能力を低下させる要因が重要です。
生活習慣の要因
不適切な生活習慣は、2型糖尿病の最も大きなリスク因子です。
食事(暴飲暴食、偏り、不規則)
エネルギー過多の食事、特に糖分や脂質の多い食事を摂りすぎると、血糖値が急激に上昇したり、インスリン抵抗性が強まったりします。
- 暴飲暴食、過食: 必要以上のカロリーを摂取することで体重が増加し、肥満につながります。
内臓脂肪が増えると、インスリンの働きが悪くなる物質が分泌され、インスリン抵抗性が高まります。 - 糖分の多い食事: 甘い飲み物や菓子類、精製された炭水化物(白米、パンなど)は血糖値を急激に上昇させます。
これを繰り返すと、膵臓はインスリンをたくさん分泌しようと疲弊し、インスリン分泌能力が低下する原因となります。 - 脂質の多い食事: 動物性脂肪などの摂りすぎは、インスリン抵抗性を高める一因となります。
また、カロリー過多になりやすく、肥満を招きます。 - 不規則な食事時間: 朝食を抜いたり、夜遅くに食事をしたり、ドカ食いをしたりするなどの不規則な食事習慣は、血糖値のコントロールを乱しやすくします。
特に朝食を抜くと、昼食後の血糖値が急上昇しやすくなることが知られています。
運動不足
体を動かす量が少ないと、エネルギー消費が少なくなり、体重が増加しやすくなります。
また、筋肉量が減るとブドウ糖の利用効率が悪くなり、インスリン抵抗性が高まります。
適度な運動は、筋肉のブドウ糖利用を促進し、インスリンの働きを改善する効果があります。
運動不足が続くと、この恩恵が得られず、血糖コントロールが悪化しやすくなります。
喫煙
喫煙は血管を収縮させ、血行を悪くします。
また、インスリン抵抗性を高めることが分かっています。
さらに、喫煙は糖尿病の合併症である動脈硬化(心筋梗塞、脳卒中など)や糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害を悪化させる最大の危険因子の一つです。
糖尿病患者さんが喫煙を続けることは、病気を急速に進行させることにつながります。
遺伝的要因
2型糖尿病は遺伝する病気ではありませんが、「なりやすい体質」は遺伝すると考えられています。
両親や兄弟、祖父母などに2型糖尿病の人がいる場合、そうでない人に比べて2型糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています。
これは、インスリンの分泌能力や、インスリンに対する体の反応性に関わる遺伝子のタイプを受け継ぐ可能性があるためです。
しかし、遺伝的な素因があっても、適切な生活習慣を心がけることで発症を予防したり、遅らせたりすることは十分に可能です。
肥満
特に内臓に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」(リンゴ型肥満)は、インスリン抵抗性を強く引き起こす最大の原因の一つです。
内臓脂肪細胞からは、インスリンの働きを妨げる様々な生理活性物質(アディポサイトカイン)が分泌されます。
この物質がインスリン抵抗性を高め、血糖コントロールを難しくします。
BMI(体格指数)が25以上の場合は肥満と判定されますが、BMIがそれほど高くなくても、腹囲が大きい(男性85cm以上、女性90cm以上)内臓脂肪型肥満の場合はリスクが高いとされます。
加齢
年齢を重ねるにつれて、誰でもインスリンの分泌能力が徐々に低下したり、インスリン抵抗性が増したりする傾向があります。
これは生理的な変化の一つですが、特に生活習慣に問題がある場合、加齢とともに2型糖尿病を発症しやすくなります。
高齢者は腎臓や肝臓の機能も低下していることがあるため、糖尿病の診断や治療には特別な配慮が必要となる場合があります。
ストレス
精神的なストレスや肉体的なストレス(過労、睡眠不足など)は、ストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌を増加させます。
これらのホルモンは血糖値を上昇させる作用があるため、慢性的なストレスは血糖コントロールを悪化させる原因となります。
また、ストレスが原因で過食や飲酒、喫煙が増えるなど、他のリスク因子を強めてしまうこともあります。
なりやすい人の特徴
上記のリスク因子を踏まえると、2型糖尿病になりやすい人の特徴として、以下のような人が挙げられます。
- 血縁者(両親、兄弟など)に糖尿病の人がいる
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)である
- 食べ過ぎ、飲み過ぎが多い
- 運動不足である、普段体を動かさない
- 喫煙習慣がある
- 年齢が40歳以上である
- ストレスを抱えている
- 高血圧、脂質異常症、高尿酸血症など、他の生活習慣病がある
- 妊娠糖尿病になったことがある女性
- 多嚢胞性卵巣症候群の女性
これらの特徴に当てはまる場合は、定期的な健康診断を受け、生活習慣を見直すなどの対策を積極的に行うことが推奨されます。
2型糖尿病の診断方法
2型糖尿病は、血液検査によって診断されます。
主に血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という値が用いられます。
自覚症状がなくても、健康診断などでこれらの値に異常が見つかり、精密検査で診断されるケースが多いです。
血糖値検査の基準
血糖値は、採血時の食事からの時間によって変動します。
診断には、以下のいずれかの基準が用いられます。
- 空腹時血糖値: 10時間以上食事を摂らない状態で測定した血糖値です。
126mg/dL以上の場合、糖尿病型と判定されます。 - ブドウ糖負荷試験(OGTT: Oral Glucose Tolerance Test): 75gのブドウ糖を溶かした水を飲み、その後の血糖値の変化を測定する検査です。
ブドウ糖摂取後2時間値が200mg/dL以上の場合、糖尿病型と判定されます。
この検査は、食後の高血糖を見つけるのに有効です。 - 随時血糖値: 食事時間に関係なく測定した血糖値です。
著しい高血糖を示唆する症状(多飲、多尿、体重減少など)がある場合に、随時血糖値が200mg/dL以上であれば糖尿病型と判定されます。
これらの基準のいずれかに該当した場合、「糖尿病型」と判定され、後述するHbA1cの値と組み合わせて総合的に診断されます。
HbA1c検査の基準
HbA1cは、過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標です。
赤血球中のヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、血糖値が高い状態が続くとHbA1cの値も高くなります。
採血時の食事の影響を受けにくいため、日常的な血糖コントロールの状態を把握するのに非常に有用です。
診断には、原則として血糖値の基準(空腹時血糖値126以上、OGTT2時間値200以上、随時血糖値200以上)のいずれかに該当し、かつHbA1cが6.5%以上の場合に「糖尿病」と診断されます。
ただし、血糖値が糖尿病型を示していても、HbA1cが6.5%未満の場合や、HbA1cが6.5%以上であっても血糖値が糖尿病型を示さない場合など、状況によっては別の日に再度検査を行ったり、OGTTを実施したりして総合的に診断を確定します。
また、糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値やHbA1cが正常よりもやや高い状態を「糖尿病予備群」または「境界型」と呼びます。
具体的には、空腹時血糖値が100〜125mg/dL、またはOGTT2時間値が140〜199mg/dL、またはHbA1cが6.0〜6.4%の場合がこれにあたります。
境界型は、将来的に2型糖尿病へ移行するリスクが高い状態であり、この段階で生活習慣の改善に取り組むことが非常に重要です。
その他の検査
糖尿病の診断や病状の評価のためには、血糖値やHbA1c以外にも様々な検査が行われます。
- 尿糖検査: 尿中にブドウ糖が出ているかどうかを調べます。
通常、血糖値が160〜180mg/dLを超えると尿中にブドウ糖が出始めますが、腎臓の状態によって個人差があります。 - 尿蛋白検査: 尿中に蛋白が出ているかどうかを調べます。
糖尿病腎症の早期発見に非常に重要な検査です。 - インスリン分泌能の検査: 血液中のインスリンや、インスリンが作られる際にできるC-ペプチドという物質の量を測定し、膵臓からのインスリン分泌能力を評価します。
- 自己抗体検査: 1型糖尿病を除外するために、膵臓のβ細胞に対する自己抗体(GAD抗体、IA-2抗体など)を調べることがあります。
- グリコアルブミン(GA)検査: 過去2週間程度の平均的な血糖値を反映する指標です。
HbA1cよりも短い期間の血糖変動を把握したい場合などに用いられます。 - 合併症の検査: 糖尿病と診断されたら、すでに合併症が起きていないかを確認するために、眼底検査、尿検査(蛋白、アルブミン)、神経学的検査などが行われます。
これらの検査結果を総合的に判断し、医師が診断を確定し、適切な治療方針を決定します。
2型糖尿病の治療法
2型糖尿病の治療目標は、良好な血糖コントロールを維持し、糖尿病によって引き起こされる様々な合併症の発症や進行を阻止し、健康な人と変わらないQOL(生活の質)を維持して長生きすることです。
治療の中心は生活習慣の改善であり、必要に応じて薬物療法が加えられます。
治療の基本的な考え方
2型糖尿病の治療は、まず食事療法と運動療法から始まります。
これによっても目標とする血糖値に達しない場合や、診断された時点で血糖値が著しく高い場合には、薬物療法が開始されます。
薬物療法には、飲み薬や注射薬があり、患者さんの病状(インスリン分泌能、インスリン抵抗性の程度など)や年齢、合併症の有無、ライフスタイルなどを考慮して最適な薬剤が選択されます。
治療の進め方や目標とする血糖値は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて個別に設定されます。
年齢が若く、合併症がなく、比較的早期に発見された場合は、より厳格な血糖コントロールを目指すことで合併症を予防します。
一方、高齢で重篤な合併症がある場合などは、低血糖のリスクなどを考慮し、無理のない範囲での血糖コントロールを目指すこともあります。
医師とよく相談し、ご自身に合った治療目標を設定することが重要です。
食事療法
食事療法は、2型糖尿病治療の最も基本的な柱です。
摂取するエネルギー量や栄養バランスを適切に管理することで、血糖値の上昇を抑え、体重をコントロールすることを目指します。
- 適正なエネルギー摂取量: 年齢、性別、体格、活動量などを考慮して、一日あたりの適切なエネルギー摂取量を医師や管理栄養士と相談して決定します。
肥満がある場合は、体重を減らすためにエネルギー摂取量を制限することが特に重要です。 - 栄養バランス: 炭水化物、タンパク質、脂質をバランス良く摂取することが大切です。
炭水化物は血糖値に最も影響するため、摂取量や質(食物繊維の多い全粒穀物などを選ぶ)に注意が必要です。
野菜、きのこ類、海藻類など、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂ることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。 - 規則正しい食事時間: 1日3食、できるだけ決まった時間に食事をすることで、食後の血糖値の変動を安定させやすくなります。
- 食べる順番: 食事の最初に野菜などの食物繊維を多く含む食品を摂り、次にタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、最後に炭水化物(ご飯、パン、麺類)を摂るようにすると、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果があることが知られています。
- ゆっくり噛んで食べる: よく噛んでゆっくり食べることで、満腹感を得やすくなり、過食を防ぐことができます。
また、血糖値の上昇も緩やかになります。 - 間食や夜食を控える: 頻繁な間食や夜遅い時間の食事は、血糖コントロールを乱す原因となります。
どうしても間食をする場合は、血糖値への影響が少ないもの(無糖ヨーグルトやナッツ少量など)を選び、量に注意しましょう。 - 清涼飲料水や果物ジュースを控える: これらは糖分が多く含まれており、血糖値を急激に上昇させます。
水やお茶などを飲む習慣をつけましょう。 - アルコール: 適量であれば血糖値への影響は少ない場合もありますが、飲み過ぎは血糖コントロールを乱したり、エネルギー過多になったりする原因となります。
飲酒する際は、量と種類に注意し、医師に相談しましょう。
食事療法は一時的なものではなく、生涯にわたって続けていく習慣です。
無理なく続けられるように、管理栄養士などの専門家から具体的なアドバイスを受けることが推奨されます。
運動療法
運動療法も、食事療法と並んで2型糖尿病治療の重要な柱です。
適度な運動は、血糖値を下げる効果があるだけでなく、インスリンの働きを改善(インスリン抵抗性を改善)し、体重コントロールにも役立ちます。
また、心肺機能を高め、ストレス解消にもつながります。
- どんな運動が良いか: 血糖コントロールには、ウォーキング、軽いジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動が特に効果的です。
筋肉量を増やす筋力トレーニングも、ブドウ糖の利用効率を高める上で重要です。
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるのが理想的です。 - どのくらいの頻度・時間行うか: 週に3回以上、1回あたり20分〜60分程度の有酸素運動を行うことが推奨されています。
可能であれば毎日行うのが理想です。
筋力トレーニングは週に2〜3回程度が良いでしょう。
ただし、運動習慣のない方が急に激しい運動をするのは危険です。
まずは短い時間から始め、徐々に時間や強度を増やしていくことが大切です。 - いつ行うか: 食後1〜2時間後に行うと、食後の高血糖を抑えるのに効果的です。
- 運動時の注意点:
- 低血糖: 特に血糖降下薬やインスリン注射を使用している場合は、運動中に低血糖を起こす可能性があります。
運動前に血糖値を測定したり、ブドウ糖などを携帯したりするなどの対策が必要です。
激しい運動や空腹時の運動は避けましょう。 - 合併症: 糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害など)が進んでいる場合、運動によって病状が悪化する可能性があります。
特に網膜症が進んでいる場合は、激しい運動や力む運動は避ける必要があります。
運動療法を開始する前には必ず医師に相談し、運動の種類や強度について指導を受けることが重要です。 - 足のケア: 神経障害がある場合、足に傷ができても気づきにくく、重症化することがあります。
運動前後に足を観察し、清潔に保ち、足に合った靴下や靴を選びましょう。
- 低血糖: 特に血糖降下薬やインスリン注射を使用している場合は、運動中に低血糖を起こす可能性があります。
日常生活の中で、意識的に体を動かす機会を増やすことも有効です。
例えば、一駅分歩く、階段を使う、休憩時間に軽いストレッチをするなど、できることから始めてみましょう。
薬物療法
食事療法や運動療法だけでは目標とする血糖値に達しない場合や、血糖値が非常に高い場合には、血糖降下薬を用いた薬物療法が開始されます。
薬物療法には、様々な種類の飲み薬や注射薬があります。
飲み薬の種類と働き
2型糖尿病の飲み薬には、様々な作用機序を持つ薬剤があります。
患者さんの病状やインスリン分泌能、インスリン抵抗性の程度、合併症の有無などを考慮して、最適な薬剤が選択されます。
必要に応じて複数の種類の薬を組み合わせて使用することもあります。
主な飲み薬の種類と働きは以下の通りです。
- ビグアナイド薬(メトホルミンなど): 肝臓での糖新生(ブドウ糖を新しく作り出すこと)を抑えたり、筋肉でのブドウ糖利用を促進したりすることで血糖値を下げます。
インスリン抵抗性の改善にも効果があり、体重増加のリスクが少ないことから、2型糖尿病の初期治療薬として広く用いられています。 - DPP-4阻害薬: 食事によって消化管から分泌されるGLP-1やGIPといったホルモン(インクレチン)の分解を抑えることで、インスリン分泌を促進し、グルカゴン(血糖値を上げるホルモン)の分泌を抑えます。
血糖値が高いときにのみ作用するため、低血糖を起こしにくいのが特徴です。 - SGLT2阻害薬: 腎臓のSGLT2というタンパク質の働きを抑え、血液中の余分なブドウ糖を尿として体の外に出すことで血糖値を下げます。
血糖値を下げる効果だけでなく、心不全や腎臓病の進行を抑制する効果も期待されており、注目されています。
尿量が増えたり、性器や尿路の感染症のリスクがやや高まることがあります。 - SU薬(スルホニル尿素薬): 膵臓のβ細胞に直接働きかけ、インスリンの分泌を強く促進します。
血糖値を下げる効果が高い反面、低血糖を起こしやすいことや、体重が増加しやすいことに注意が必要です。 - チアゾリジン薬: 筋肉や脂肪細胞などでのインスリン抵抗性を改善し、インスリンの働きを良くします。
効果が現れるまでにやや時間がかかる場合があります。
浮腫や心不全の悪化などに注意が必要です。 - 速効型インスリン分泌促進薬: 食事の直前に服用することで、食後のインスリン分泌を促進し、食後の血糖値の急激な上昇を抑えます。
作用時間が短いため、低血糖のリスクはSU薬より低いとされています。 - α-グルコシダーゼ阻害薬: 消化管で炭水化物がブドウ糖に分解・吸収されるのを遅らせることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑えます。
お腹の張りやガスが出やすくなるなどの副作用が出ることがあります。
どの薬が適しているかは、患者さんの状態や病状、他の病気の有無などによって異なります。
医師とよく相談し、指示された通りに服用することが大切です。
注射薬(GLP-1受容体作動薬、インスリン注射)
飲み薬で血糖コントロールが不十分な場合や、インスリン分泌能力が著しく低下している場合などには、注射薬が用いられます。
- GLP-1受容体作動薬: GLP-1というホルモンと似た働きをする薬です。
血糖値が高いときにインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑え、胃の内容物の排出を遅らせるなどの作用により血糖値を下げます。
また、食欲を抑え、体重減少効果が期待できる薬剤もあります。
自己注射が必要ですが、週1回の注射で済む製剤などもあります。 - インスリン注射: 膵臓からのインスリン分泌が著しく不足している場合や、緊急的に血糖値を下げたい場合などに用いられます。
外部からインスリンを補充することで、血糖値を効果的に下げることができます。
インスリンには作用時間の異なる様々な種類(超速効型、速効型、混合型、持効型など)があり、患者さんのライフスタイルや病状に合わせて使い分けられます。
自己注射が必要であり、適切な打ち方や量、タイミングについて医療スタッフの指導を受けることが重要です。
インスリン注射は低血糖を起こしやすい薬ですので、注意が必要です。
薬物療法は、あくまで食事療法と運動療法を補助するものです。
薬を服用しているからといって、生活習慣の改善を怠ると、薬の効果が十分に得られなかったり、薬の量が増えたりする可能性があります。
2型糖尿病は「治る」のか?(寛解について)
残念ながら、一度診断された2型糖尿病が完全に「治る」ことは、現在の医療では難しいと考えられています。
しかし、食事療法や運動療法、減量などによって良好な血糖コントロールを維持し、薬物療法が不要な状態になることを「寛解(かんかい)」と呼びます。
寛解の定義はいくつかありますが、一般的には、薬物療法を行わずにHbA1cが6.5%未満、空腹時血糖値が126mg/dL未満の状態が一定期間(例えば3ヶ月〜1年以上)続くことを指します。
特に、病気の比較的早期に大幅な減量(例えば、体重の10%以上)を達成できた場合、寛解に至る可能性が高いことが知られています。
寛解はあくまで一時的な状態であり、生活習慣が乱れると再び血糖値が悪化する可能性があります。
そのため、寛解に至った後も、油断せずに食事療法や運動療法を継続し、定期的に血糖値をチェックすることが非常に重要です。
寛解を目指すことは、薬物療法を減らしたり中止したりできるだけでなく、将来的な合併症のリスクを大幅に減らすことにつながるため、治療における大きな目標の一つとなります。
2型糖尿病の合併症
2型糖尿病の最も恐ろしい側面は、高血糖が長期間続くことによって引き起こされる様々な合併症です。
合併症は全身の血管や神経にダメージを与え、QOLを著しく低下させたり、生命を脅かしたりすることがあります。
慢性合併症(三大合併症)
糖尿病の慢性合併症のうち、特に発生頻度が高く、患者さんの生活に大きな影響を与える「三大合併症」があります。
これらは主に細い血管(毛細血管)が障害されることで起こります。
糖尿病神経障害
高血糖によって末梢神経の機能が悪くなる病気です。
手足のしびれや痛み、感覚の鈍化などが現れます。
特に足の感覚が鈍くなると、小さな傷や火傷に気づきにくくなり、感染や潰瘍、壊疽(組織が腐ること)につながる「糖尿病足病変」のリスクが高まります。
重症化すると切断に至ることもあります。
また、自律神経も障害されることがあり、立ちくらみ、便秘や下痢、胃もたれ、発汗異常、勃起不全、排尿困難などの症状が現れることもあります。
糖尿病網膜症
高血糖によって目の奥にある網膜の細い血管が障害される病気です。
進行すると血管が詰まったり、出血したり、新しい異常な血管(新生血管)が生えたりします。
新生血管は非常に脆く、破れて大出血を起こすと急激な視力低下や失明につながります。
初期にはほとんど自覚症状がないため、定期的な眼底検査が非常に重要です。
我が国において、成人の失明原因の第一位となっています。
糖尿病腎症
高血糖によって腎臓の機能が悪くなる病気です。
腎臓にある糸球体という毛細血管の塊が障害され、血液をろ過して老廃物を尿として排出する腎臓の働きが徐々に低下します。
初期には自覚症状がなく、尿中にわずかな量の蛋白(アルブミン)が出始めることから診断されます(微量アルブミン尿期)。
進行すると尿蛋白が増え、むくみや高血圧が現れ、さらに進行すると腎不全となり、最終的には人工透析が必要となります。
我が国において、人工透析導入原因の第一位となっています。
これら三大合併症は、高血糖が続けば続くほど発症・進行リスクが高まります。
良好な血糖コントロールを維持することが、これらの合併症を防ぐために最も重要です。
動脈硬化性疾患
高血糖は、太い血管(動脈)にもダメージを与え、動脈硬化を促進します。
糖尿病患者さんは、そうでない人に比べて動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な病気を起こすリスクが高いことが知られています。
特に、高血圧や脂質異常症、喫煙などの危険因子が重なると、さらにリスクが増大します。
心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈という血管が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりすることで、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。
激しい胸の痛みなどが典型的な症状ですが、糖尿病神経障害のために痛みの感覚が鈍くなり、痛みを伴わないまま心筋梗塞を起こしてしまう「無痛性心筋梗塞」に注意が必要です。
脳卒中
脳に血液を送る血管が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりする「脳梗塞」、あるいは血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」などの総称です。
突然の手足の麻痺、顔の歪み、言葉が出にくい、意識障害などの症状が現れます。
脳卒中も生命に関わるだけでなく、重い後遺症を残す可能性のある病気です。
末梢動脈疾患
手足、特に足の血管が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりする病気です。
足の血行が悪くなり、歩くと足が痛くなる(間歇性跛行)、足が冷たい、足の傷が治りにくいなどの症状が現れます。
糖尿病神経障害による感覚低下と相まって、足病変を重症化させる原因となります。
これらの動脈硬化性疾患の予防には、血糖コントロールだけでなく、血圧や脂質(コレステロール、中性脂肪)のコントロール、禁煙などが非常に重要です。
その他の合併症
糖尿病は、上記以外にも様々な合併症を引き起こす可能性があります。
感染症(歯周病など)
前述の通り、高血糖状態では免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。
特に口腔内の細菌感染である歯周病は、糖尿病患者さんで重症化しやすく、また歯周病が悪化すると血糖コントロールがさらに難しくなるという悪循環が生じることがあります。
その他、皮膚感染症、尿路感染症なども起こりやすくなります。
勃起不全(ED)
男性の場合、高血糖による血管や神経の障害により、勃起不全(ED)を引き起こすことがあります。
EDは性的QOLに影響するだけでなく、前述の通り動脈硬化のサインである可能性もあります。
その他にも、糖尿病は骨粗しょう症、認知症、癌などのリスクを高める可能性も指摘されています。
このように、糖尿病は全身の様々な臓器に影響を与え、多くの合併症を引き起こす可能性がある病気です。
したがって、糖尿病と診断されたら、血糖コントロールだけでなく、血圧、脂質、体重の管理、禁煙など、総合的な治療を行うことが極めて重要となります。
2型糖尿病の予防
2型糖尿病は、遺伝的な体質に加えて生活習慣が大きく関与して発症するため、適切な対策を講じることで発症を予防したり、発症を遅らせたりすることが十分に可能です。
特に、糖尿病予備群(境界型)の段階であれば、積極的に生活習慣の改善に取り組むことで、糖尿病への進行を阻止できる可能性が高いことが分かっています。
生活習慣の見直し
糖尿病予防の基本は、糖尿病の原因となる生活習慣を改善することです。
- 食習慣の改善:
- 腹八分目を心がけ、食べ過ぎないようにする。
- 栄養バランスの取れた食事を摂る(主食、主菜、副菜を揃える)。
- 野菜、きのこ、海藻など、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂る。
- 糖分の多い飲み物やお菓子、加工食品を控える。
- 脂質の多い食事(揚げ物や肉の脂身など)を控えめにする。
- 規則正しい時間に3食しっかり食べる。
特に朝食を抜かない。 - ゆっくりよく噛んで食べる。
- 運動習慣をつける:
- 毎日少しでも体を動かす習慣をつける。
- ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる有酸素運動を取り入れる。
- 可能であれば、筋力トレーニングも行う。
- 日常生活の中で、意識的に体を動かす機会を増やす(階段を使う、一駅分歩くなど)。
- 適正体重を維持する:
- 肥満の場合は、現在の体重から5〜10%の減量を目指すだけでも、インスリン抵抗性が改善し、糖尿病リスクを大幅に下げることができます。
無理なダイエットではなく、食事と運動による健康的な減量を目指しましょう。
- 肥満の場合は、現在の体重から5〜10%の減量を目指すだけでも、インスリン抵抗性が改善し、糖尿病リスクを大幅に下げることができます。
- 禁煙:
- 喫煙習慣がある場合は、禁煙することが最も重要です。
禁煙することで、糖尿病の発症リスクを下げるだけでなく、合併症の発症・進行リスクも大幅に減らすことができます。
- 喫煙習慣がある場合は、禁煙することが最も重要です。
- ストレス解消:
- 自分に合った方法でストレスを解消する習慣をつけましょう。
趣味やリラクゼーション、十分な睡眠などが有効です。
- 自分に合った方法でストレスを解消する習慣をつけましょう。
- 十分な睡眠:
- 睡眠不足は血糖コントロールを乱し、糖尿病リスクを高める可能性があります。
規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間を確保しましょう。
- 睡眠不足は血糖コントロールを乱し、糖尿病リスクを高める可能性があります。
これらの生活習慣の改善は、糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症、心血管疾患など、他の様々な病気の予防にもつながります。
定期的な健康診断の重要性
2型糖尿病は初期に自覚症状がないことが多いため、定期的な健康診断を受けることが早期発見のために非常に重要です。
特に、上記で挙げた「なりやすい人の特徴」に当てはまる方は、積極的に健康診断や人間ドックを受け、血糖値やHbA1cの値を確認しましょう。
健康診断で血糖値やHbA1cの異常(糖尿病型や境界型)を指摘された場合は、放置せずに必ず医療機関を受診し、精密検査や医師のアドバイスを受けることが大切です。
早期に発見し、適切な対策を始めることで、糖尿病の発症を予防したり、発症した場合でも重症化や合併症の発症を防ぐことができます。
ご自身の健康状態を把握し、リスクを早期に認識することが、2型糖尿病予防の第一歩となります。
まとめ:2型糖尿病の理解と適切な対策を
2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて、過食、運動不足、肥満、喫煙などの生活習慣が複合的に関与して発症する病気です。
インスリンの働きが悪くなったり、分泌量が減ったりすることで血糖値が高い状態が続き、知らず知らずのうちに全身の血管や神経にダメージを与え、様々な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な管理が非常に重要です。
初期にはほとんど自覚症状がないことが多いため、症状が現れたときには病気がかなり進行しているケースも少なくありません。
多飲、多尿、体重減少といった典型的な症状だけでなく、手足のしびれ、感染症にかかりやすい、目のかすみ、性機能の問題(ED)といった見逃されがちな症状にも注意が必要です。
診断は、空腹時血糖値、OGTT、随時血糖値、そして過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するHbA1cの検査によって行われます。
これらの検査で異常を指摘された場合は、糖尿病または糖尿病予備群である可能性があり、放置せずに医療機関を受診することが大切です。
2型糖尿病の治療は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善が基本です。
これによっても血糖コントロールが不十分な場合は、様々な種類の飲み薬や注射薬(GLP-1受容体作動薬、インスリン注射など)を用いた薬物療法が追加されます。
治療目標は、良好な血糖コントロールを維持し、合併症を予防することです。
病状によっては薬が不要になる「寛解」を目指すことも可能ですが、寛解後も生活習慣の改善を継続することが重要です。
糖尿病の合併症には、細い血管が障害される糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症の「三大合併症」や、太い血管が障害される心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患、その他にも感染症やEDなどがあります。
これらの合併症はQOLを著しく低下させたり、生命に関わることもあります。
2型糖尿病は生活習慣の改善によって発症を予防したり、発症を遅らせたりすることが可能な病気です。
バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適正体重の維持、ストレス解消などを日頃から心がけましょう。
また、自覚症状がなくても定期的に健康診断を受け、ご自身の血糖値をチェックし、早期発見に努めることが大切です。
2型糖尿病と向き合うことは、単に血糖値を管理することだけでなく、生活習慣全体を見直し、より健康的なライフスタイルを送ることでもあります。
この機会に、ご自身の健康状態を確認し、できることから適切な対策を始めてみましょう。
※本記事で提供する情報は一般的なものであり、個々の病状や治療については必ず医療機関で医師の診断・指導を受けてください。