高血糖のサインを見逃すな!初期症状とセルフチェックリスト
「高血糖」と聞くと、「糖尿病」を連想する方が多いかもしれません。
しかし、高血糖は必ずしも糖尿病を意味するわけではなく、一時的なものから命に関わる状態まで、様々なケースがあります。
多くの人は、初期のうちは自覚症状がない、あるいは気づきにくい subtle な症状が現れるため、知らず知らずのうちに進行させてしまうことがあります。
高血糖の状態が続くと、全身の血管や神経にダメージを与え、将来的に深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。
この記事では、医師監修のもと、高血糖の代表的な症状、見逃しやすい初期サイン、危険な状態を示す顕著な症状、さらにはその原因や日頃からできる対策について詳しく解説します。「自分も高血糖かもしれない」「どんな症状に注意すれば良い?」と感じている方は、ぜひ最後までお読みください。
高血糖とは?血糖値の基礎知識
高血糖とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高い状態が続くことを指します。
食事をすると、食べ物に含まれる糖質が分解されてブドウ糖となり、血液中に吸収されて全身の細胞に運ばれ、エネルギーとして利用されます。
このとき、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが、ブドウ糖を細胞内に取り込む働きを助け、血糖値を適切な範囲に保っています。
しかし、インスリンの働きが悪くなったり、分泌量が不足したりすると、ブドウ糖がうまく細胞に取り込まれず、血液中に余ってしまい、血糖値が高くなってしまいます。
血糖値の正常値と高血糖の基準
血糖値は、食事や運動、ストレスなどによって常に変動しています。
一般的に、空腹時や食後の特定の時間で測定した値によって、正常な範囲か、高血糖であるか、あるいは糖尿病の可能性があるかを判断します。
測定タイミング | 正常値の目安(HbA1cを除く) | 高血糖の基準(HbA1cを除く) | 糖尿病の診断基準(HbA1cを除く) |
---|---|---|---|
空腹時血糖値 | 100 mg/dL 未満 | 100 mg/dL ~ 125 mg/dL | 126 mg/dL 以上 |
食後2時間血糖値 | 140 mg/dL 未満 | 140 mg/dL ~ 199 mg/dL | 200 mg/dL 以上 |
随時血糖値 | 特定の基準なし | 特定の基準なし | 200 mg/dL 以上 (典型的症状がある場合) |
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー) | 4.6 % ~ 6.0 % | 6.1 % ~ 6.4 % (糖尿病予備群相当) | 6.5 % 以上 |
※上記の基準値は一般的な目安であり、診断は医師が行います。
※HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標です。
空腹時血糖値が100 mg/dLから125 mg/dLの間、またはブドウ糖負荷試験(OGTT)で食後2時間値が140 mg/dLから199 mg/dLの間にある状態は「糖尿病予備群」と呼ばれ、将来的に糖尿病へ移行するリスクが高いと考えられています。
これらの基準を超える血糖値が続くと、体には様々な影響が現れ始めます。
高血糖が体に与える影響
高血糖の状態が慢性的に続くと、全身の血管(特に細い血管)や神経がダメージを受けます。
これは、血液中に余分なブドウ糖が多い状態が、血管の内壁を傷つけたり、細胞の機能異常を引き起こしたりするためです。
短期的な影響:
急激な高血糖の場合、喉の渇きや多尿、疲労感などの症状が現れます。
さらに血糖値が非常に高くなると、意識障害などの緊急性の高い状態(急性合併症)を引き起こすことがあります。
長期的な影響:
自覚症状がない、あるいは軽微な高血糖が数ヶ月、数年と続くと、全身の様々な臓器に慢性的なダメージが蓄積されます。
これにより、糖尿病の三大合併症と呼ばれる神経障害、網膜症、腎症をはじめ、心筋梗塞、脳卒中といった大血管障害、足病変など、重篤な病気を引き起こすリスクが著しく高まります。
これらの合併症は、一度発症すると元の状態に戻すことが難しく、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。
高血糖の初期症状:見逃しがちなサイン
高血糖の初期段階では、多くの場合、自覚できるはっきりとした症状は現れません。
しかし、注意深く自身の体の変化を観察すると、高血糖のサインかもしれない subtle な異変に気づくことがあります。
これらの初期症状は、他の原因でも起こりうるため見過ごされがちですが、高血糖の可能性を示唆する重要なサインです。
喉の渇き(口渇)と多飲
血糖値が高くなると、血液中のブドウ糖濃度を下げるために、体は水分を増やそうとします。
また、高すぎる血糖値を薄めようとして、細胞から水分が血液中に移動します。
これにより、細胞が脱水状態になり、強い喉の渇きを感じるようになります。
喉が渇くため、自然と水分をたくさん飲むようになります。
- チェックポイント:
- いつもより水分を摂る量が増えたか?
- 夜中に喉が渇いて目が覚めることがあるか?
- 甘くない飲み物でも喉の渇きが十分に癒えないか?
尿の回数が増える(多尿)
血液中のブドウ糖が一定濃度を超えると、腎臓で糖を再吸収しきれなくなり、ブドウ糖が尿と一緒に排出されるようになります(尿糖)。
ブドウ糖には水分を引き寄せる性質があるため、尿糖が増えると、一緒に排出される水分の量も増えます。
この結果、尿の量が増え、トイレに行く回数が頻繁になります。
特に夜間頻尿が顕著になることがあります。
- チェックポイント:
- 以前より明らかにトイレに行く回数が増えたか?
- 夜中に何度もトイレのために起きるようになったか?
- 1回あたりの尿量が多いと感じるか?
原因不明の体重減少
高血糖が続くと、体はブドウ糖をエネルギーとして効率よく利用できなくなります。
細胞がエネルギー不足に陥るため、体は蓄えていた脂肪や筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。
その結果、特に食事量が変わっていない、あるいはむしろ増えているのに、意図せず体重が減少することがあります。
これは高血糖がある程度進行したサインである可能性があります。
- チェックポイント:
- 食事を変えたり運動量を増やしたりしていないのに、体重が減ってきたか?
- 急に、あるいは数ヶ月の間に数キログラム以上体重が減少したか?
強い疲労感やだるさ
細胞がブドウ糖をエネルギーとして利用できない状態では、全身がエネルギー不足に陥り、強い疲労感や倦怠感を感じやすくなります。
十分に休息をとってもだるさが改善しない、といった症状が現れることがあります。
これも高血糖によるエネルギー代謝の異常が原因と考えられます。
- チェックポイント:
- 十分な睡眠をとっているのに、日中強い眠気やだるさを感じるか?
- 以前より疲れやすく、活動的でなくなったか?
視界のかすみ(目のかすみ)
血糖値が急激に変動すると、目のレンズである水晶体の水分量が変化し、一時的に厚みが変わることがあります。
これにより、ピント調節がうまくいかず、物がかすんで見えたり、視力が不安定になったりすることがあります。
血糖値が安定すると改善することもありますが、高血糖が長期間続くと、糖尿病網膜症という合併症に進展し、永続的な視力障害を引き起こす可能性があります。
- チェックポイント:
- 物が二重に見えたり、ぼやけて見えたりすることが増えたか?
- 視力が不安定になったと感じるか?
傷が治りにくい・感染しやすい
高血糖の状態では、血行が悪くなりやすく、また免疫機能が低下することが知られています。
このため、一度できた傷が治りにくくなったり、感染症(風邪、インフルエンザ、膀胱炎、皮膚感染症など)にかかりやすくなったり、治りにくくなったりすることがあります。
- チェックポイント:
- 小さな傷や擦り傷が以前より治りにくいと感じるか?
- 感染症にかかりやすくなった、あるいは治癒に時間がかかるようになったか?
- 皮膚の乾燥やかゆみが増えたか?
これらの初期症状は、高血糖以外の原因でも起こりうるため、これらの症状があるからといって必ずしも高血糖であるとは断定できません。
しかし、これらのサインが複数現れている場合や、以前はなかった症状が出ている場合は、一度医療機関で血糖値をチェックしてもらうことを強くお勧めします。
危険な高血糖の顕著な症状:急性合併症のサイン
血糖値が著しく高い状態が続くと、数時間から数日のうちに命に関わる重篤な状態になることがあります。
これを高血糖の急性合併症と呼び、主に糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態の二つがあります。
これらの状態では、初期症状よりもはるかに強く、危険な症状が現れます。
これらの症状に気づいたら、速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。
ケトアシドーシスなどの症状
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンが極度に不足した際に起こりやすい急性合併症です。
主に1型糖尿病の患者さんに起こりやすいですが、2型糖尿病の患者さんでも、感染症や他のストレスが引き金となって発症することがあります。
体がブドウ糖をエネルギーとして利用できないため、代わりに脂肪を分解してエネルギーを得ようとします。
この脂肪分解の過程で「ケトン体」という物質が大量に生成され、血液が酸性に傾いてしまう状態です。
吐き気、嘔吐、腹痛
ケトン体が体内に蓄積すると、吐き気や嘔吐、強い腹痛を引き起こすことがあります。
風邪や胃腸炎と間違われることもありますが、血糖値が著しく高い場合はケトアシドーシスを疑う必要があります。
深く速い呼吸(クスマウル呼吸)
体が酸性になった血液を中和しようとして、二酸化炭素を体外に排出しようとします。
このため、呼吸が深く、規則的に速くなる特徴的な呼吸(クスマウル呼吸)が見られます。
アセトンの匂い(甘酸っぱい、果物のような匂い)が息から感じられることもあります。
意識レベルの低下、昏睡
ケトアシドーシスが進行すると、脳の機能が障害され、意識が朦朧としたり、呼びかけへの反応が鈍くなったり、最終的には意識を失って昏睡状態に陥ることがあります。
これは非常に危険なサインであり、速やかな治療が必要です。
高浸透圧高血糖状態の症状
高浸透圧高血糖状態は、高度な脱水と著しい高血糖が特徴的な急性合併症です。
主に2型糖尿病の患者さんや高齢者で起こりやすいとされています。
インスリンが全くないわけではないためケトン体はそれほど増えませんが、高すぎる血糖値によって体内の水分が血管内に引き出され、高度な脱水状態になります。
- 高度な脱水: 極度の喉の渇き、皮膚の乾燥、尿量の減少(初期の多尿から進行)、脱水による血圧低下などが見られます。
- 意識障害: 脱水と高血糖が脳機能に影響を与え、意識レベルの低下、傾眠、昏睡を引き起こします。
ケトアシドーシスよりも意識障害が重い傾向があります。 - 神経症状: 体の片側の麻痺やけいれんなど、脳卒中に似た神経症状が現れることがあります。
これらの急性合併症の症状は、一刻を争う状態です。
もし、糖尿病と診断されている方や、高血糖を指摘されたことがある方が、上記のような症状(特に吐き気、意識の変調、異常な呼吸など)を呈した場合は、ためらわずに救急車を呼ぶなど、迅速な対応が必要です。
高血糖になる主な原因
高血糖を引き起こす原因は一つだけではありません。
多くの要因が複雑に絡み合って発症することが多いです。
ここでは、高血糖になる主な原因について解説します。
食事内容と生活習慣
高血糖の最も一般的な原因の一つが、日々の食事内容や生活習慣の乱れです。
- 糖質の多い食事: ご飯、パン、麺類、菓子類、清涼飲料水など、糖質を多く含む食品を摂りすぎると、食後に血糖値が急激に上昇しやすくなります。
- 不規則な食事: 欠食したり、食事と食事の間隔が極端に空いたりすると、次に食事を摂った際に血糖値が急上昇しやすくなります(血糖値スパイク)。
- 運動不足: 運動は筋肉がブドウ糖を取り込み、エネルギーとして消費するのを助けます。
運動不足になると、ブドウ糖の利用が低下し、血糖値が下がりにくくなります。 - 喫煙: 喫煙は血管を収縮させ、インスリンの働きを妨げると考えられています。
- 過度な飲酒: アルコール自体は血糖を上げる作用は弱いですが、一緒に摂るおつまみ(特に糖質の多いもの)や、アルコールの分解過程が血糖コントロールに影響を与えることがあります。
ストレスや睡眠不足
精神的なストレスや慢性的な睡眠不足も、血糖値を上昇させる原因となります。
ストレスを感じたり睡眠が不足したりすると、血糖値を上げる作用のあるホルモン(アドレナリンやコルチゾールなど)が分泌されやすくなります。
これらのホルモンはインスリンの働きを妨げるため、血糖値が上昇しやすくなります。
薬剤の影響
特定の薬剤が血糖値を上昇させる副作用を持つことがあります。
- ステロイド薬: 炎症を抑える目的で広く使われるステロイド薬は、強力に血糖値を上昇させることが知られています。
- 免疫抑制剤
- 一部の降圧剤
- 向精神薬 など
これらの薬を服用している方が高血糖になった場合は、自己判断で中止せず、必ず処方した医師に相談してください。
関連する病気(糖尿病以外も)
糖尿病自体が高血糖を引き起こす代表的な病気ですが、糖尿病以外の病気が原因で高血糖になることもあります。
- 膵臓の病気: 膵炎や膵臓がんなど、膵臓の病気によってインスリンを分泌する細胞が破壊されたり、機能が低下したりすると高血糖になります。
- 内分泌疾患:
- クッシング症候群: 副腎からコルチゾールという血糖値を上げるホルモンが過剰に分泌される病気。
- 先端巨大症: 成長ホルモンが過剰に分泌される病気。
- 褐色細胞腫: アドレナリンなどが過剰に分泌される病気。
- 甲状腺機能亢進症: 血糖値を上げるホルモンの働きを強めることがあります。
これらの病気によって高血糖が引き起こされている場合は、原因となっている病気の治療が必要です。
血糖値が突然高くなる原因
通常は血糖コントロールができている人でも、一時的に血糖値が急激に高くなることがあります。
これは「血糖値スパイク」と呼ばれることもありますが、特定の状況下で突然高血糖になる原因もいくつか考えられます。
- 過食: 特に急激に大量の糖質を摂取した場合、インスリンの分泌が間に合わず、食後数時間で血糖値が急激に上昇することがあります。
- 体調不良(シックデイ): 風邪、発熱、下痢、嘔吐など、体調を崩した時は、体がストレスを受けて血糖値を上げるホルモンが増えたり、食事や水分が十分に摂れなかったりすることで血糖コントロールが乱れやすくなります。
特に糖尿病患者さんのシックデイは注意が必要です。 - 感染症: 肺炎や尿路感染症などの感染症は、体に大きな負担をかけ、血糖値を著しく上昇させることがあります。
- 手術や大きな怪我: 手術や怪我も体にストレスを与え、血糖値を上げることがあります。
- ステロイド注射や点滴: 一時的であってもステロイドを使用すると、血糖値が急上昇することがあります。
- インスリンや経口血糖降下薬の打ち忘れ・飲み忘れ: 糖尿病治療中の患者さんが薬を忘れると、当然血糖値は上昇します。
- 他の薬剤による影響: 上記の「薬剤の影響」で述べた薬を新しく開始したり、増量したりした場合。
このような一時的な急激な高血糖も、繰り返されると血管にダメージを与える可能性があります。
特に糖尿病と診断されている方や、血糖コントロールに不安がある方は、体調不良時などにどのように対応すべきか、あらかじめ医師に相談しておくことが重要です。
高血糖と糖尿病の関係
高血糖は糖尿病の最も重要なサインですが、必ずしも高血糖=糖尿病ではありません。
高血糖と糖尿病の関係、そして糖尿病の診断基準について正しく理解することは、自身の健康状態を知る上で非常に大切です。
高血糖は必ずしも糖尿病ではない?
はい、一時的な高血糖や、空腹時血糖値が100~125mg/dLの範囲(糖尿病予備群)は、直ちに糖尿病と診断されるわけではありません。
- 一時的な高血糖: ストレス、睡眠不足、特定の食事、体調不良などによって一時的に血糖値が高くなることは誰にでも起こりえます。
これが継続しない場合は問題ないことが多いです。 - 食後高血糖(血糖値スパイク): 空腹時血糖値は正常でも、食後だけ血糖値が急上昇する状態です。
これは動脈硬化のリスクを高めるため注意が必要ですが、診断基準を満たさない場合は糖尿病とは診断されません(ただし糖尿病予備群に含まれることがあります)。 - 糖尿病予備群: 診断基準には満たないものの、正常よりも高い血糖値の状態です。
この段階であれば、生活習慣の改善によって糖尿病への移行を防いだり、遅らせたりすることが十分可能です。
糖尿病と診断されるのは、高血糖の状態が慢性的に続き、特定の診断基準を満たす場合です。
糖尿病の診断基準と予備群
日本糖尿病学会では、以下のいずれかを満たす場合に糖尿病と診断されます。
診断基準項目 | 基準値 | 備考 |
---|---|---|
以下のいずれかを満たす場合: | ||
1. 空腹時血糖値 | 126 mg/dL 以上 | 10時間以上絶食後の測定 |
2. 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) 2時間値 |
200 mg/dL 以上 | ブドウ糖を摂取し、2時間後に測定 |
3. 随時血糖値 | 200 mg/dL 以上 | 食事時間に関係なく測定。 典型的な糖尿病症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)がある場合 |
上記1~3のいずれか+HbA1c | HbA1c 6.5 % 以上 | |
ただし、初回検査で基準を満たしても、別の日にもう一度検査を行い、再確認が必要です。 | ||
例外: ケトアシドーシスなどの明らかな高血糖症状があり、随時血糖値が200 mg/dL以上の場合は、HbA1cが6.5%未満でも糖尿病と診断されることがあります。 |
糖尿病予備群は、以下のいずれかを満たす場合を指します。
診断基準項目 | 基準値 |
---|---|
空腹時血糖値 | 100 mg/dL ~ 125 mg/dL |
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) 2時間値 |
140 mg/dL ~ 199 mg/dL |
HbA1c | 6.1 % ~ 6.4 % |
糖尿病予備群の段階で生活習慣を改善することで、糖尿病の発症を遅らせたり、予防したりすることが可能です。
健康診断などで高血糖を指摘された場合は、「まだ大丈夫」と放置せず、自身の血糖状態を正しく把握し、必要であれば医師に相談することが大切です。
自分で高血糖に気づくには
前述のように、高血糖の初期症状は非常に気づきにくいものです。
では、どのようにすれば自身の高血糖に気づくことができるのでしょうか。
健康診断・人間ドックの活用
最も確実で一般的な方法は、定期的に健康診断や人間ドックを受けることです。
これらの検査には通常、血糖値(空腹時血糖値、HbA1c)の測定が含まれています。
検査値を見ることで、自分では気づいていない高血糖の有無や程度を知ることができます。
年に一度は健康診断を受ける習慣をつけましょう。
検査結果で異常を指摘された場合は、必ず精密検査を受けたり、医療機関を受診したりしてください。
自宅での血糖測定
糖尿病と診断された方や、医師から指導を受けている方は、自宅で簡易血糖測定器を使って血糖値を測定することがあります。
これにより、日々の血糖値の変動を把握し、食事や運動、薬の効果を確認することができます。
ただし、医師の指導なしに自己判断で血糖測定を行うことは、適切な解釈が難しいため推奨されません。
血糖測定器は薬局や通販で購入可能ですが、まずは医療機関を受診し、自身の状態について相談した上で、必要であれば医師の指導のもとで行うようにしましょう。
高血糖の改善・コントロール方法
高血糖を改善し、血糖値を適切にコントロールすることは、将来的な合併症を防ぐために非常に重要です。
血糖コントロールの中心となるのは、食事療法と運動療法です。
食事療法のポイント
食事は血糖値に最も大きな影響を与えます。
バランスの取れた食事を心がけ、糖質の摂りすぎに注意することが基本です。
- バランスの取れた食事: 炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく摂り、ビタミンやミネラル、食物繊維も十分に摂取しましょう。
- 糖質の量と質: 砂糖が多く含まれる食品や、血糖値を急激に上げる精製された炭水化物(白いご飯、白いパンなど)の摂りすぎに注意し、GI値の低い食品(玄米、全粒粉パン、野菜など)を選ぶようにしましょう。
- 食べる順番: 食物繊維が多い野菜やきのこ類、海藻類から先に食べ始め、次にタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、最後に炭水化物(ご飯、パン、麺類)を食べるようにすると、血糖値の急激な上昇を抑えられます。
- ゆっくりよく噛んで: 早食いは血糖値を急激に上げやすいです。
ゆっくり時間をかけてよく噛んで食べることを意識しましょう。 - 間食に注意: スナック菓子や甘い飲み物など、間食で糖質を摂りすぎないように注意しましょう。
運動療法の効果
運動は、血液中のブドウ糖をエネルギーとして消費し、インスリンの働きを良くする効果があります。
特に食後に体を動かすことで、食後の血糖値上昇を抑えることができます。
- 有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、軽度から中等度の有酸素運動を、可能であれば毎日、少なくとも週に3~5回、1回あたり20~30分以上行うのが理想です。
- 筋力トレーニング: 筋肉量が増えると、より多くのブドウ糖をエネルギーとして消費できるようになります。
無理のない範囲で筋力トレーニングも取り入れましょう。 - 食後すぐに軽く動く: 食後15分~1時間以内に、家事や軽い散歩など体を動かすと、食後の血糖値上昇を抑えるのに効果的です。
ただし、持病がある方や血糖値が極端に高い方、合併症がある方などは、運動の種類や強度に注意が必要です。
運動療法を開始する前に、必ず医師に相談してください。
医療機関での治療・相談
生活習慣の改善だけでは血糖コントロールが難しい場合や、糖尿病と診断された場合は、医療機関での治療が必要となります。
- 医師や管理栄養士との連携: 医師や管理栄養士から、個々の状態に合わせた食事指導や運動指導を受けることができます。
- 薬物療法: 生活習慣の改善だけでは目標とする血糖値に達しない場合、経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬、インスリン注射などの薬物療法が必要となることがあります。
医師の指示に従って適切に使用することが重要です。 - 定期的な検査: 血糖値だけでなく、HbA1c、尿糖、腎機能、眼底検査など、定期的な検査を受けることで、血糖コントロールの状況や合併症の有無を確認し、早期発見・早期治療につなげることができます。
高血糖や糖尿病の治療は、医師や他の医療スタッフと連携しながら、根気強く取り組むことが大切です。
高血糖の症状に気づいたら
もし、この記事で紹介した高血糖の初期症状や顕著な症状に心当たりがある場合、どのように行動すべきでしょうか。
まず行うべきこと
高血糖の症状に気づいたら、まず行うべきことは自己判断せず、医療機関に相談することです。
インターネットの情報だけで自己診断したり、市販のサプリメントなどに頼ったりするのは危険です。
医師による正確な診断と、適切なアドバイスを受けることが最も重要です。
受診の目安となる症状
以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
- 初期症状が複数、あるいは持続的に現れている: 喉の渇き、多飲、多尿、体重減少、強い疲労感、目のかすみなどが続いている。
- 健康診断で高血糖を指摘された: 異常値が出たにもかかわらず、まだ医療機関を受診していない。
- ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態が疑われる症状がある: 吐き気や嘔吐、強い腹痛、異常な呼吸、意識の変調(朦朧、昏睡)などがある場合は、直ちに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
- 糖尿病と診断されているが、血糖コントロールがうまくいかない、あるいは体調が悪い。
かかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談するのが良いでしょう。
かかりつけ医がいない場合は、内科や糖尿病内科を受診してください。
早期に高血糖の原因を特定し、適切な対応をとることで、将来の健康を守ることにつながります。
【まとめ】高血糖のサインを見逃さず、早めのチェックと対策を
高血糖は、初期には自覚症状が乏しいため見過ごされがちですが、放置すると全身の血管や臓器にダメージを与え、将来的に深刻な合併症を引き起こすリスクを高めます。
喉の渇き、多尿、原因不明の体重減少、強い疲労感、目のかすみ、傷の治りの悪さといったサインに気づいたら、「年のせいかな」「疲れているだけかな」と安易に考えず、高血糖の可能性を疑い、医療機関で血糖値をチェックしてもらうことが大切です。
特に、吐き気や異常な呼吸、意識の変調といった危険なサインが現れた場合は、命に関わる急性合併症の可能性が高いため、ためらわずに救急受診が必要です。
高血糖になる原因は、食生活や運動不足といった生活習慣の乱れが最も多いですが、ストレス、睡眠不足、特定の薬剤、他の病気なども関連します。
高血糖を改善・コントロールするためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休養といった生活習慣の改善が基本となります。
場合によっては、医療機関での薬物療法が必要となることもあります。
自身の高血糖に気づくためには、定期的な健康診断が非常に有効です。
健康診断で異常を指摘されたら、必ず医療機関を受診し、医師の指導のもとで適切な対応をとることが重要です。
高血糖は、早期に発見し適切に対策をとることで、健康状態を良好に保ち、合併症を防ぐことが十分に可能です。
自身の体のサインに注意を払い、早めのチェックと対策を始めましょう。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の病状の診断や治療に関するアドバイスを提供するものではありません。
高血糖の症状に気づいた場合や、健康状態に不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。