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血糖値を下げる運動|食後や自宅でできる効果的なやり方

[2025.06.29]

血糖値が高い状態が続くと、将来的にさまざまな健康問題を引き起こすリスクが高まります。生活習慣病の代表格である糖尿病をはじめ、心筋梗梗塞や脳卒中といった重篤な合併症につながる可能性も否定できません。血糖値をコントロールするためには、食事療法と並んで「運動」が非常に重要です。適切な運動は、インスリンの効果を高め、ブドウ糖を効率よくエネルギーとして消費する助けとなります。この記事では、血糖値を下げるために効果的な運動方法や、実践する上での注意点などを詳しく解説します。

血糖値が高いとなぜ運動が必要なのか?

血糖値が高い状態が続くこと、いわゆる高血糖は、血管や神経にダメージを与え、全身の臓器に様々な障害を引き起こします。これは糖尿病やその合併症の主な原因となります。

血糖値は、食事から摂取したブドウ糖の血液中の濃度を示します。通常、食事をして血糖値が上がると、膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞(特に筋肉や肝臓)に取り込ませ、エネルギーとして利用したり貯蔵したりする働きをします。これにより、血糖値は適切な範囲に保たれます。

しかし、運動不足や過食、肥満などが続くと、インスリンの働きが悪くなることがあります。これを「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリン抵抗性が高まると、インスリンが十分に分泌されていても、ブドウ糖がうまく細胞に取り込まれず、血糖値が高いままになってしまいます。

ここで運動が重要な役割を果たします。運動は、筋肉がブドウ糖を直接エネルギーとして利用することを促進します。さらに、定期的な運動は筋肉量を維持・増加させ、インスリンの働きを高める効果(インスリン感受性の改善)が期待できます。これにより、食後に上昇した血糖値を速やかに下げたり、インスリンの効きを良くしてブドウ糖が細胞に取り込まれやすい体質に改善したりすることができるのです。つまり、運動は高血糖の状態を改善し、糖尿病の発症や進行を予防・遅延させるための強力な手段となります。

血糖値 下げる 運動の効果 - 有酸素運動と筋トレ

血糖値を下げるために効果的な運動には、主に「有酸素運動」と「筋力トレーニング(筋トレ)」の2種類があります。それぞれ異なるメカニズムで血糖値にアプローチするため、これらを組み合わせて行うことが、より効果的な血糖コントロールにつながります。

血糖値改善に効果的な運動の種類

有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)

有酸素運動は、比較的軽い負荷を継続的にかける運動で、酸素を使って体内のブドウ糖や脂肪をエネルギーとして利用します。血糖値を下げる効果が特に期待されるのが、運動中に筋肉がブドウ糖を消費することです。

代表的な有酸素運動としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ウォーキング: 最も手軽に始められる運動です。通勤・通学で一駅歩く、買い物に行く際に少し遠回りするなど、日常生活に取り入れやすいのが魅力です。
  • ジョギング/ランニング: ウォーキングよりも強度が高く、より多くのブドウ糖やカロリーを消費できます。
  • 水泳: 全身を使う運動で、関節への負担が少ないため、体重が気になる方にもおすすめです。
  • サイクリング: 屋外でのサイクリングはもちろん、フィットネスバイクを使った運動も効果的です。
  • エアロビクス/ダンス: 楽しみながら続けやすく、全身運動になるため効果が期待できます。

有酸素運動は、特に運動中の血糖値低下作用が顕著です。運動を持続することで、筋肉が継続的にブドウ糖を血液中から取り込み、エネルギーとして利用するため、血糖値が下がりやすくなります。

筋力トレーニング(スクワット、軽い体操など)

筋力トレーニング(レジスタンス運動とも呼ばれます)は、筋肉に抵抗をかけて行う運動です。ダンベルを使ったトレーニングや、自重(自分の体重)を利用したトレーニングなどがあります。

筋トレが血糖値改善に効果的な理由は、主に以下の2点です。

  • ブドウ糖の利用促進: 運動中、筋肉はエネルギーとしてブドウ糖を利用します。筋トレの場合、運動そのものによる消費に加え、運動後も筋肉の修復などのためにブドウ糖が消費されます。
  • 筋肉量の増加とインスリン感受性の改善: 筋トレを継続することで筋肉量が増えると、体全体のブドウ糖を貯蔵・利用できる場所が増えます。また、筋肉の細胞膜にあるブドウ糖を取り込むための輸送体(主にGLUT4)の働きが活性化され、インスリンの効きが良くなります(インスリン感受性が向上します)。これにより、インスリンの分泌量が少なくても、血糖値が効率よく下がるようになります。

代表的な筋力トレーニングとしては、以下のようなものがあります。

  • スクワット: 太ももやお尻の大きな筋肉を鍛えられます。自重でも十分な負荷をかけられます。
  • 腕立て伏せ(プッシュアップ): 胸や腕、肩を鍛えられます。膝をついて行うなど、強度を調整可能です。
  • 腹筋運動(クランチ): 腹部の筋肉を鍛えます。
  • 軽いダンベルを使ったトレーニング: 上半身や下半身の様々な筋肉を鍛えられます。
  • チューブトレーニング: ゴムチューブを使って全身の筋肉に負荷をかけられます。
  • 椅子を使った立ち座り: 高齢者や運動習慣のない方でも安全に取り組めます。

筋トレは、特に長期的な血糖コントロールの改善に寄与します。筋肉量が増え、インスリン感受性が向上することで、安静時や食後の血糖値もコントロールしやすくなるためです。有酸素運動と組み合わせて行うことで、短期的な血糖値低下と長期的な体質改善の両面からアプローチできます。

食後の血糖値に効く運動

食後の血糖値、特に食後1~2時間後に急激に血糖値が上昇する「血糖値スパイク」を抑えるためには、食後すぐに軽い運動を行うことが効果的です。

食後は、食事から摂取したブドウ糖が血液中に吸収され、血糖値が上昇しやすい時間帯です。このタイミングで運動を行うことで、筋肉が血液中のブドウ糖をすぐにエネルギーとして利用し始めます。これにより、血糖値の急上昇を抑え、緩やかに推移させることができます。

食後の運動としては、あまり激しい運動ではなく、以下のようない軽い運動が適しています。

  • 食後15~30分後からの15~20分程度のウォーキング
  • 軽い足踏み
  • 簡単なストレッチや軽い体操
  • 家事(食器洗い、部屋の片付けなど)

食後すぐに激しい運動をすると、消化不良を起こしたり、かえって血糖値が不安定になったりする可能性もあります。あくまで「軽い運動」を心がけることが重要です。

室内でできる運動・体操

天候に左右されず、自宅で手軽にできる運動や体操も、血糖値改善に有効です。特に運動習慣がない方や、まとまった時間を確保するのが難しい方におすすめです。

  • その場足踏み: テレビを見ながらなど、「ながら運動」として手軽にできます。腕を大きく振ると全身運動になります。
  • スクワット: 自重で行うスクワットは、室内でも十分な筋トレになります。椅子に座るように腰を下ろす動作を繰り返します。
  • かかと上げ下げ(カーフレイズ): ふくらはぎの筋肉を鍛えます。立ったままでも、椅子に座ったままでも可能です。
  • アームカール(ペットボトルなどを使用): 水を入れたペットボトルなどをダンベル代わりにして、腕の筋肉を鍛えます。
  • プランク: 体幹を鍛える運動です。うつ伏せになり、肘とつま先で体を支え、体を一直線に保ちます。
  • ラジオ体操: 全身の筋肉を動かすことができる優れた体操です。NHKなどで放送されているものに合わせて行うと、習慣化しやすいでしょう。
  • 踏み台昇降: 段差を利用して昇り降りを繰り返す有酸素運動です。専用の踏み台がなくても、安定した階段や低い台などで代用できます。

これらの室内運動は、短時間でも継続して行うことが重要です。例えば、「10分間のその場足踏み」を1日に数回行ったり、「食後に5分だけ簡単な体操をする」など、無理のない範囲で daily routine に組み込みましょう。

血糖値が下がるメカニズム

運動によって血糖値が下がる主なメカニズムは、筋肉がブドウ糖をエネルギーとして利用すること、そしてインスリンの働きが改善することです。

運動を開始すると、筋肉は活動に必要なエネルギーとして、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込み始めます。このブドウ糖の取り込みには、「ブドウ糖輸送体」と呼ばれるタンパク質が関わっています。特に重要なのが「GLUT4」という輸送体で、これは主に筋肉細胞や脂肪細胞に存在します。

安静時には、GLUT4の大部分は細胞内に蓄えられていますが、運動を開始すると、インスリンの有無に関わらず、GLUT4が細胞膜表面に移動してブドウ糖を取り込む能力が高まります。これにより、血液中のブドウ糖が効率よく筋肉に取り込まれ、血糖値が低下します。運動強度が高いほど、ブドウ糖の利用率は高まります。

さらに、定期的な運動を継続することで、筋肉のGLUT4の量が増加したり、インスリンによるGLUT4の細胞膜への移動が促進されたりするなど、インスリンの働き自体が改善されます(インスリン感受性の向上)。インスリン感受性が高まると、同じ量のインスリンでもより多くのブドウ糖を細胞に取り込めるようになるため、血糖値が正常範囲に保たれやすくなります。

特に筋力トレーニングは、筋肉量を増やす効果があるため、ブドウ糖を貯蔵・利用できる場所(筋肉)そのものを増やし、インスリン非依存性のブドウ糖取り込み能力も高めるため、インスリン感受性の長期的な改善に寄与すると考えられています。

このように、運動は「運動中のブドウ糖利用促進」と「運動後のインスリン感受性向上」という二重の効果で、血糖値をコントロールする重要な役割を果たしています。

血糖値を下げる運動の具体的な方法

血糖値を効果的に下げるためには、ただ運動するだけでなく、運動の強度、時間、頻度、そして行うタイミングが重要になります。ここでは、より具体的な運動方法について解説します。

運動強度と時間の目安

血糖値改善に効果的な運動の強度や時間については、いくつかのガイドラインが存在します。一般的には、少しきついと感じる「中強度」の運動を、まとめて行うか、または短い時間で複数回行うことが推奨されています。

週にどのくらい運動すればいい?

日本糖尿病学会のガイドラインなどでは、血糖コントロールのために週に合計150分以上中強度有酸素運動を行うことが推奨されています。これに加えて、週に2~3回筋力トレーニングを組み合わせることが望ましいとされています。

週150分というと、例えば1日30分のウォーキングを週に5日行う、といったイメージです。まとめて時間が取れない場合は、1回10分程度の運動を1日に複数回(例:朝10分、昼食後10分、夕食後10分)行っても合計時間に含まれ、効果が期待できることが分かっています。

1回あたりどのくらいの時間行う?

有酸素運動は、1回あたり20分以上続けることで、より効果的にブドウ糖や脂肪の燃焼が促進されると言われています。しかし、上述したように、まとめて時間が取れない場合は、1回10分以上の運動を積み重ねて合計時間をクリアすることでも効果は得られます。まずは無理なく続けられる時間から始め、徐々に時間を延ばしていくのが良いでしょう。

筋力トレーニングについては、全身の大きな筋肉(太もも、胸、背中、お腹など)をバランスよく鍛えることを目指します。各部位につき10~15回程度を1セットとし、これを2~3セット行うのが目安です。週に2~3回の実施でも十分な効果が期待できます。毎日行う必要はなく、筋肉の回復のために休息日を設けることも重要です。

運動強度の目安としては、「少しきつい」と感じる程度が中強度とされています。具体的には、心拍数が1分あたり100~120拍程度になる運動や、「少し息が弾むが、隣の人と会話ができる程度の速さ」でウォーキングするイメージです。ボルグスケール(主観的運動強度スケール)でいうと、「ややきつい(13)」~「きつい(15)」の間の「楽である(11)」より上のレベルが中強度に相当します。

運動の種類 頻度 1回あたりの時間 強度
有酸素運動 週5回以上 20分以上
または10分以上×複数回で合計150分以上/週
中強度
筋力トレーニング 週2~3回 全身をバランスよく
(10~15回×2~3セット/部位)
少しきつい

※これらは一般的な目安であり、個々の体の状態や基礎疾患の有無によって適切な運動量や内容は異なります。必ず医師に相談して、ご自身に合った運動計画を立てましょう。

運動を行うタイミング(食前 vs 食後)

運動を行うタイミングも血糖値のコントロールに影響します。特に食後の血糖値スパイクを抑えたい場合は、食後に行うのが効果的です。

食後の血糖値を下げる運動のタイミング

食後、血液中のブドウ糖の濃度が最も高くなるのは、食事を始めてから1~2時間後と言われています。この血糖値が上昇するピークに合わせて運動を行うことで、筋肉がブドウ糖を効率よく取り込み、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。

そのため、食後の運動は、食事が終わってから15分~30分後に開始し、15分~20分程度継続するのがおすすめです。

食後すぐ(食事を終えて5分以内など)の激しい運動は、消化の妨げになる可能性があります。軽いウォーキングや体操など、負担の少ない運動を選びましょう。

食前に行う運動も、もちろん血糖値を下げる効果はありますが、特に空腹時や食後時間が経ってからの激しい運動は、低血糖のリスクを高める可能性があります。インスリン注射や血糖降下薬を使用している方は、食前の運動のタイミングや強度について、より一層注意が必要です。

血糖値コントロールという観点では、食後の軽い運動を習慣にするのが、最も手軽で効果を実感しやすい方法と言えるでしょう。

初心者でも無理なく始められる運動・体操

運動習慣が全くない方や、体力に自信がない方でも、無理なく始められる簡単な運動や体操はたくさんあります。まずは体を動かすことから始めて、徐々に慣れていくことが大切です。

5分でできる簡単体操

運動を始める前に、以下の簡単な体操を5分間行うだけでも、ウォーミングアップや血行促進につながります。

  • その場足踏み: 姿勢を正し、太ももを高く上げてその場で足踏みをします。腕を大きく振るとより効果的です。5分間続けるだけでも、血行促進や軽い有酸素運動になります。
  • かかと上げ下げ: 壁や椅子の背もたれなどに軽く手をつき、両足のかかとを上げたり下ろしたりを繰り返します。ふくらはぎのポンプ作用で血行が促進され、むくみ解消にもつながります。
  • 椅子を使った立ち座り: 椅子に座り、反動を使わずにゆっくりと立ち上がり、またゆっくりと座ります。太ももとお尻の筋肉を鍛えられます。10回程度を目標に。
  • 肩回し: 肩甲骨を意識して、大きく前回し・後ろ回しを数回ずつ行います。肩こり解消にも効果があります。
  • 足首回し: 座ったままでも寝たままでもできます。足首を大きく回し、血行を良くします。

これらの体操は、テレビを見ながら、デスクワークの合間に、料理の待ち時間などに手軽に取り入れることができます。1日合計5分でも、継続することで体の変化を感じられるはずです。

ためしてガッテンで紹介された運動・体操

NHKの情報番組「ためしてガッテン」(現在は「ガッテン!」)では、血糖値を下げる様々な方法が紹介されてきました。特に話題になったものの一つに、「食後15分〜30分後のちょい運動」というものがあります。

番組で紹介された具体的な運動内容は時期によって異なることがありますが、共通しているのは「食後15分〜30分というタイミングで、短時間(5分〜15分程度)、軽い強度で体を動かすこと」の重要性です。例えば、食後に以下のようない軽い運動を行うことが推奨されていました。

  • 食後15分〜30分後に、15分程度のウォーキング
  • 食後すぐに、その場での軽い足踏みや階段昇降
  • 食後すぐに、椅子に座ったままの簡単な体操(足上げ、手足の屈伸など)

ちょい運動」のポイントは、血糖値が上がり始める食後15分〜30分というタイミングで、筋肉を使い始めることです。これにより、食事で吸収されたブドウ糖がすぐに筋肉に利用され、血糖値の急上昇(スパイク)を抑える効果が期待できます。

これらの「ちょい運動」は、忙しい方でも日常生活に取り入れやすく、手軽に始められるため、血糖値対策の第一歩として非常に有効です。

運動の効果を高める工夫

せっかく運動をするなら、その効果を最大限に引き出したいものです。以下の工夫を取り入れることで、血糖値改善の効果を高め、運動を楽しく継続しやすくなります。

  • 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる: 前述の通り、両者には異なる効果があるため、両方を行うことが理想的です。例えば、ウォーキングの後に軽いスクワットや腹筋を取り入れる、といった形でも構いません。
  • 毎日続けられる工夫をする: 運動を習慣化することが最も重要です。「特定の曜日の〇時に筋トレ」「毎日の朝食後と夕食後に15分ウォーキング」など、具体的な目標を決めてdaily routineに組み込みましょう。家族や友人と一緒に運動する、運動記録をつけるなどもモチベーション維持に役立ちます。
  • 「ながら運動」を取り入れる: テレビを見ながら足踏み、歯磨きをしながらかかと上げ、通勤中に一駅歩くなど、他の活動と同時に行う「ながら運動」は、運動時間を確保しやすいためおすすめです。
  • 好きな運動を見つける: ウォーキングが苦手なら水泳やサイクリング、ダンスなど、自分が楽しめる運動を見つけることが継続の鍵です。
  • 目標設定: 「1ヶ月でHbA1cを0.何%下げる」「体重を〇kg減らす」「〇km続けて歩けるようになる」など、具体的な目標を設定すると、モチベーションを高く保てます。
  • 記録をつける: 運動の種類、時間、強度、その日の体調、運動前後の血糖値などを記録することで、運動の効果を視覚的に把握でき、運動内容を見直す際の参考になります。
  • 運動前の準備: 軽いストレッチやウォーミングアップで体をほぐし、怪我の予防をしましょう。
  • 運動後のクールダウン: 運動後も軽いストレッチなどを行い、体のケアをしましょう。

これらの工夫を取り入れ、運動を生活の一部として楽しむことが、血糖値コントロールへの最も効果的な道です。

運動時の注意点とリスク

血糖値を下げるために運動は非常に有効ですが、安全に行うためにはいくつかの注意点やリスクを知っておく必要があります。特に糖尿病の治療中の方や、合併症のある方は注意が必要です。

運動によって血糖値が上がる場合がある?

運動は血糖値を下げる効果が期待できますが、状況によっては一時的に血糖値が上昇したり、不安定になったりする可能性もゼロではありません。

運動後に血糖値が上がる原因と対処法

激しい運動を行った場合、運動中に血糖値が下がるだけでなく、運動後にかえって血糖値が一時的に高くなることがあります。これは、激しい運動によってアドレナリンなどのホルモンが分泌され、肝臓に貯蔵されているグリコーゲン(ブドウ糖の貯蔵形態)が分解されて血液中に放出されるためです。これは体が緊急時にエネルギーを供給するための自然な反応です。

また、運動直後に疲労回復のために糖質の多いものを摂取した場合も、当然血糖値は上昇します。

対処法としては、以下の点が挙げられます。

  • 適切な運動強度を選ぶ: 中強度の運動であれば、運動後に血糖値が大きく上がることは少ない傾向にあります。無理な高強度運動は避けましょう。
  • 運動前後の血糖値を測定する: 運動によって自分の血糖値がどのように変動するかを知ることは、運動計画を立てる上で非常に重要です。特にインスリン療法や血糖降下薬を使用している方は、医師の指導のもと、運動前後の血糖測定を行いましょう。
  • 運動後の補食に注意する: 運動後に空腹を感じても、糖質の摂りすぎは避けましょう。必要な場合は、主治医や管理栄養士に相談して、適切な補食についてアドバイスを受けてください。

筋トレで血糖値が上がる?

筋力トレーニングも、強度が非常に高い場合や、短時間で集中的に行う場合は、アドレナリンなどの影響で一時的に血糖値が上昇する可能性があります。特に筋トレの経験が少ない方や、普段あまり運動しない方が急に強い負荷をかけた場合に見られることがあります。

しかし、筋力トレーニングによる一時的な血糖値上昇は、その後のインスリン感受性の改善という長期的なメリットと比べると、それほど問題視されないことが多いです。定期的に筋トレを継続することで、安静時や食後の血糖値が安定しやすくなる効果が期待できます。

重要なのは、運動による血糖変動には個人差があるということです。ご自身の体の反応を知るために、運動前後の血糖測定は有効な手段です。心配な場合は、必ず医師に相談してください。

運動を控えるべき場合

全ての方がいつでも自由に運動して良いわけではありません。特定の状態にある場合や、合併症がある場合は、運動によって病状が悪化したり、リスクが高まったりする可能性があります。

以下の場合は、運動を始める前に必ず医師に相談し、運動の可否や適切な内容について指示を受けてください。

  • 血糖値が非常に高い場合: 血糖値が250mg/dL以上(特にケトン体が出ている場合)や、300mg/dL以上の場合は、運動によってさらに血糖値が上昇したり、昏睡などの危険な状態に陥ったりする可能性があります。まずは安静にして、血糖値を下げる治療を優先します。
  • 血糖値が非常に低い場合: 血糖値が100mg/dL未満(特に70mg/dL未満)の場合は、運動によって低血糖発作を起こすリスクがあります。運動前に糖質を補給するなど、低血糖への対策が必要です。
  • 糖尿病の急性期合併症がある場合:
    • 糖尿病性昏睡(ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群)
    • 重症感染症を合併している場合
  • 進行した慢性合併症がある場合:
    • 増殖糖尿病網膜症(運動による血圧上昇で網膜出血のリスクがあります)
    • 進行した糖尿病腎症(腎臓への負担が増す可能性があります)
    • 重度の糖尿病神経障害(足の潰瘍などがある場合、運動によって悪化するリスクがあります)
    • 虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞の既往がある場合、運動による心臓への負担に注意が必要です)
    • 重症の自律神経障害(運動中の血圧変動や不整脈に注意が必要です)
  • 足に傷や潰瘍がある場合: 運動によって傷が悪化したり、感染のリスクが高まったりします。
  • 発熱や体調が悪い場合: 病気療養中は運動を控えます。

これらの状態に当てはまるかどうかは、自己判断せず、必ず主治医に確認しましょう。医師と相談の上、安全な範囲で、可能な運動があれば指導を受けることが大切です。

安全に運動を続けるためのポイント

血糖値を下げる運動を安全に、そして効果的に続けるためには、以下の点に注意しましょう。

  • 医師に相談する: 運動を始める前に、必ず主治医に相談し、自身の体の状態に合った運動の種類、強度、時間、頻度についてアドバイスを受けましょう。特に糖尿病の治療を受けている方は必須です。
  • 運動前後の血糖測定を行う: 可能であれば、運動前と運動後に血糖値を測定し、運動による血糖変動を把握しましょう。低血糖の既往がある方や、インスリン・血糖降下薬を使用している方は特に重要です。
  • 低血糖に備える: インスリンや血糖降下薬を使用している方は、運動中に低血糖を起こす可能性があります。運動前に補食をする、ブドウ糖や砂糖を含む飴やジュースなどを携帯するなど、必ず低血糖への備えをしておきましょう。運動中にめまいや冷や汗、動悸などの低血糖症状を感じたら、すぐに運動を中止し、糖質を摂取してください。
  • 水分補給をしっかり行う: 運動中は汗をかくため、脱水状態になりやすいです。特に夏場はこまめな水分補給が重要です。水やお茶など、糖分の含まれていない飲み物を選びましょう。
  • 適切な靴と服装を選ぶ: 特にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動では、足への負担を軽減するためにクッション性のある運動靴を選びましょう。吸湿性・速乾性のある服装も快適に運動するために役立ちます。
  • 準備運動とクールダウンを行う: 運動前には軽いストレッチやウォーミングアップなどで体を温める準備運動を、運動後には整理体操やストレッチでゆっくりと体を休めるクールダウンを行いましょう。怪我の予防や疲労回復に役立ちます。
  • 無理をしない: 体調が悪い日や疲れている日は無理せず休息しましょう。痛みを感じたらすぐに運動を中止し、必要であれば医療機関を受診してください。
  • 定期的に体のチェックを受ける: 運動を継続している間も、定期的に医療機関で血糖値や血圧、合併症などのチェックを受け、運動の効果や問題点について医師と話し合いましょう。

これらの点に注意しながら、安全に楽しく運動を続けることが、血糖値コントロール成功への近道です。

運動と食事、その他の対策

血糖値を下げるためには、運動療法だけでなく、食事療法や薬物療法(必要な場合)を組み合わせることが基本です。また、運動や食事以外の生活習慣も血糖値に影響を与えます。

血糖値を下げる運動と食事療法の組み合わせ

運動療法と食事療法は、血糖コントロールの二本柱です。どちらか一方だけでなく、両方をバランス良く行うことで、相乗効果が期待できます。

食事療法では、以下の点に注意します。

  • 適切なエネルギー摂取量: 年齢、性別、活動量に応じて、医師や管理栄養士から指導された適正なカロリーを摂取します。
  • 栄養バランス: 炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを適切にします。特に炭水化物は血糖値に大きく影響するため、摂取量や種類(食物繊維の多い複雑な炭水化物を選ぶなど)に注意が必要です。
  • 食べる順番: 食物繊維の多い野菜や海藻類を先に食べ、次にタンパク質のおかず、最後に炭水化物(ごはん、パン、麺類など)を食べることで、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。
  • ゆっくり噛んで食べる: よく噛むことで満腹感を得やすく、食べすぎを防ぎます。また、血糖値の上昇も緩やかになります。
  • 規則正しい食事時間: 1日3食、できるだけ決まった時間に食べるようにし、間食は控えます。

食事療法で摂取するブドウ糖の量をコントロールし、運動療法でそのブドウ糖を効率よく消費・利用する。この組み合わせが、最も効果的に血糖値を安定させることができます。

血糖値を下げる食べ物

特定の食品を食べるだけで劇的に血糖値が下がる、ということはありませんが、血糖値の上昇を緩やかにしたり、インスリンの働きを助けたりする効果が期待できる食品はあります。これらをバランスの取れた食事に取り入れることが大切です。

  • 食物繊維が豊富な食品: 野菜(特に葉物野菜、きのこ類)、海藻類、豆類、玄米や全粒粉などの未精製穀物など。食物繊維は消化・吸収を遅らせ、食後の血糖値の上昇を緩やかにします。
  • タンパク質: 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など。タンパク質は血糖値の上昇が緩やかで、満腹感を持続させます。
  • DHA・EPAを含む魚: サバ、イワシ、サンマなど。オメガ3脂肪酸はインスリン感受性を改善する可能性が研究されています。
  • 酢やレモン汁: 食事と一緒に摂取することで、食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。
  • 特定のハーブやスパイス: シナモン、フェヌグリークなどが血糖値に良い影響を与える可能性が示唆されていますが、過剰摂取には注意が必要です。

これらの食品に偏らず、バランスの取れた食事を心がけることが最も重要です。

血糖値を下げるサプリメントについて

血糖値を下げる効果を謳うサプリメントも多く販売されています。例えば、食物繊維、クロム、α-リポ酸、サラシアなどが知られています。

サプリメントは、あくまで栄養補助食品であり、医薬品とは異なります。血糖値をコントロールする主要な手段は、食事療法と運動療法、そして必要に応じて行われる薬物療法です。

サプリメントに頼る前に、まずは基本となる食事と運動をしっかりと見直すことが最優先です。もしサプリメントの使用を検討する場合は、以下の点に注意してください。

  • 効果の科学的根拠を確認する: 特定の成分が血糖値に良い影響を与える可能性を示す研究はありますが、その効果の程度や安全性については、まだ十分なデータがないものや、個人差が大きいものもあります。
  • 医師や薬剤師に相談する: 特に糖尿病の治療薬を服用している方は、サプリメントとの飲み合わせによっては予期せぬ影響が出る可能性もあります。必ず事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
  • 過剰摂取に注意する: 良かれと思って過剰に摂取すると、健康を害する可能性もあります。用法・用量を守りましょう。
  • サプリメントはあくまで補助: サプリメントだけで血糖値が劇的に改善することはありません。基本となる治療の補助として考えるべきです。

信頼できる情報源に基づき、慎重に判断することが重要です。

監修者情報・一次情報出典

この記事は、一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。血糖値に関する具体的なアドバイスや治療については、必ず医師にご相談ください。

記事中の情報は、信頼できるとされる以下の情報源を参考に、一般的な知見に基づいて作成しています。

  • 厚生労働省の健康情報サイト
  • 日本糖尿病学会のガイドライン
  • 公的な研究機関や大学等の発表

※本記事には特定の医療従事者による監修はありません。

まとめ

血糖値を下げるために、運動は非常に効果的な方法です。運動によって筋肉がブドウ糖を効率よく利用し、インスリンの働きを改善することができます。

  • 有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)は、運動中のブドウ糖消費を促進します。
  • 筋力トレーニング(スクワット、軽い体操など)は、筋肉量を増やし、インスリン感受性を長期的に改善します。
  • 食後15~30分後の軽い運動は、食後の血糖値スパイクを抑えるのに効果的です。
  • 週に合計150分以上の中強度の有酸素運動と、週2~3回の筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。
  • 運動習慣がない方でも、その場足踏みや椅子を使った立ち座りなど、室内で手軽にできる運動から始められます。
  • 運動による効果を最大限に引き出すためには、継続が最も重要です。
  • 運動前後の血糖測定低血糖への備え適切な水分補給など、安全に運動を続けるための注意点があります。
  • 血糖値が非常に高い場合や、特定の合併症がある場合は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。
  • 運動療法は、食事療法と組み合わせて行うことで、より大きな効果が期待できます。

血糖値を下げる運動は、単に病気の予防・改善だけでなく、体力向上やストレス解消にもつながります。ご自身のペースで、無理なく楽しく続けられる運動を見つけて、健康な体づくりを目指しましょう。

【免責事項】
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスを構成するものではありません。個人の健康状態や疾患については、必ず医師または専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行ったいかなる行為に関しても、当社は一切の責任を負いません。

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