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血糖値が高いのは要注意!糖尿病との関係、基準値と改善策を解説

[2025.06.29]

糖尿病と診断された方、あるいは健康診断で血糖値が高いと指摘された方にとって、「血糖値」は最も気になる言葉の一つかもしれません。血糖値は、私たちの体の状態を映し出す重要なバロメーターであり、その適切な管理は健康な生活を送る上で欠かせません。しかし、「血糖値とは具体的に何?」「どれくらいが正常なの?」「どうすれば改善できるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、糖尿病と血糖値の関係について、基礎知識から診断基準、日々の管理方法までを分かりやすく解説します。ご自身の血糖値について正しく理解し、適切なケアを始めるための一助となれば幸いです。

糖尿病と血糖値の基礎知識

まずは、血糖値が私たちの体の中でどのような役割を果たしているのか、そして糖尿病とどのように関連しているのか、その基本的な仕組みを見ていきましょう。

血糖値とは?その役割

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度を示す値です。ブドウ糖は、私たちが食事から摂取した炭水化物が分解されてできるもので、体のあらゆる細胞にとって最も重要なエネルギー源となります。特に、脳はエネルギー源としてほとんどブドウ糖しか利用できないため、血糖値は常に一定の範囲内に保たれている必要があります。

食事をすると、消化管からブドウ糖が吸収され、血液に入って血糖値が上昇します。このブドウ糖が全身の細胞に運ばれ、エネルギーとして利用されたり、貯蔵されたりすることで、私たちは体を動かしたり、思考したりすることができます。血糖値が正常範囲から外れると、体に様々な不調や病気を引き起こす可能性があるため、血糖値のバランスを保つことは健康維持の基本と言えます。

インスリンの働きと血糖値

血糖値を一定に保つために中心的な役割を果たしているのが、インスリンというホルモンです。インスリンは、膵臓にあるランゲルハンス島β細胞から分泌されます。

食事をして血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは血液中のブドウ糖を、筋肉や脂肪細胞、肝臓といった細胞に取り込むように働きかけます。これにより、血液中のブドウ糖が減少し、血糖値が低下します。また、インスリンは肝臓や筋肉にブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵したり、脂肪細胞にブドウ糖を脂肪に変えて貯蔵したりする働きもあります。

糖尿病は、このインスリンの働きに問題が生じることで起こる病気です。インスリンが十分に分泌されなかったり(インスリン分泌不全)、インスリンは分泌されてもその効き目が悪くなったり(インスリン抵抗性)することで、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。

糖尿病の血糖値|診断基準と正常値

「血糖値が高い」と言われた場合、それがどの程度の高さで、糖尿病と診断されるのか、あるいはまだ予備群なのかは重要なポイントです。ここでは、糖尿病の診断に使われる血糖値の基準と、健康な人の正常な血糖値の範囲について詳しく見ていきましょう。

糖尿病と診断される血糖値の基準

日本糖尿病学会では、糖尿病の診断のためにいくつかの検査を行い、その結果に基づいて総合的に判断します。主に以下の基準が用いられます。

空腹時血糖値

空腹時血糖値とは、検査前日の夕食後から検査までの少なくとも10時間以上、食事を摂らない状態で測定した血糖値のことです。

  • 126mg/dL以上の場合、糖尿病の可能性が高いと判断されます。

通常は、別の日にもう一度検査を行って、空腹時血糖値が126mg/dL以上であることを確認するか、他の検査(HbA1c、OGTTなど)の結果と組み合わせて診断が確定されます。

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、空腹時に75gのブドウ糖を溶かした水を飲み、その後30分、60分、90分、120分(2時間)などのタイミングで血糖値を測定する検査です。インスリンの分泌能力や効き具合を詳しく調べることができます。

  • ブドウ糖負荷後2時間値が200mg/dL以上の場合、糖尿病型と判断されます。

随時血糖値

随時血糖値とは、食事の時間に関係なく測定した血糖値のことです。特に、糖尿病に特徴的な症状(口の渇き、多尿、体重減少など)がある場合に測定されることが多いです。

  • 200mg/dL以上の場合、糖尿病の可能性が非常に高いと判断されます。

上記の基準のうち、空腹時血糖値、OGTT2時間値、随時血糖値のいずれかが「糖尿病型」を示し、かつHbA1cが6.5%以上であれば、原則として1回の検査で糖尿病と診断されます。ただし、血糖値のみが糖尿病型でHbA1cが6.5%未満の場合や、HbA1cのみが6.5%以上で血糖値が糖尿病型でない場合など、状況に応じて再検査や他の検査が必要となる場合があります。

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは?

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1~2ヶ月の血糖値の平均的な状態を示す重要な指標です。赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質にブドウ糖が結合したものを測定します。血糖値が高い状態が長く続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が増えるため、HbA1cの値が高くなります。

HbA1cは、測定時点の血糖値だけでなく、過去の血糖コントロールの状態を反映するため、糖尿病の診断や治療効果の判定に広く用いられています。

  • HbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病型と判断されます。

HbA1cのみで診断を確定することはなく、必ず血糖値の基準と組み合わせて判断されます。

血糖値の正常範囲

健康な人の血糖値は、インスリンなどの働きによって常に一定の範囲内に保たれています。一般的に、以下の範囲が正常とされています。

空腹時血糖値の正常値

  • 100mg/dL未満が正常範囲です。

食後血糖値の正常値

  • 食事開始から2時間後の血糖値が140mg/dL未満が正常範囲です。

食事をすると一時的に血糖値は上昇しますが、インスリンの働きによって速やかに元のレベルに戻ります。健康な人であれば、食後2時間以内に140mg/dLを超えることはほとんどありません。

HbA1cの正常値

  • 6.0%未満が正常範囲(特定健診における基準値)とされています。

これらの正常値を超える場合でも、すぐに糖尿病と診断されるわけではありません。しかし、正常値よりも高い状態が続く場合は、糖尿病予備群(境界型)である可能性があり、将来的に糖尿病へ移行するリスクが高い状態と言えます。早期に生活習慣を見直し、血糖値の改善に取り組むことが重要です。

糖尿病の診断基準と正常値の比較

検査項目 正常値 糖尿病型(診断基準) 糖尿病予備群(境界型)
空腹時血糖値 100mg/dL未満 126mg/dL以上 100mg/dL ~ 125mg/dL
OGTT 2時間値 140mg/dL未満 200mg/dL以上 140mg/dL ~ 199mg/dL
随時血糖値 - 200mg/dL以上 -
HbA1c 6.0%未満 6.5%以上 6.0% ~ 6.4%
*随時血糖値は空腹時以外。HbA1cは過去1〜2ヶ月の平均。

この表は一般的な基準であり、個々の状況によって判断が異なる場合があります。必ず医師の診断を仰いでください。

血糖値が高い状態が続くリスク

血糖値が高い状態が長く続くと、自覚症状がない場合でも体の中では様々な問題が進行しています。これが、糖尿病の最も怖い点である合併症の原因となります。

高血糖が引き起こす合併症

慢性的な高血糖は、全身の血管や神経を徐々に傷つけていきます。これにより、様々な臓器に障害が現れるのが糖尿病の合併症です。特に、細い血管が障害されることによって起こる以下の三大合併症は有名です。

  • 糖尿病網膜症: 目の網膜にある細い血管が傷つき、視力低下や失明に至ることもあります。
  • 糖尿病腎症: 腎臓の血管が傷つき、老廃物を尿として排泄する機能が低下します。進行すると人工透析が必要になることもあります。
  • 糖尿病神経障害: 手足のしびれや痛み、感覚の麻痺、自律神経の障害(立ちくらみ、胃腸の不調、排尿障害、EDなど)を引き起こします。

これらの三大合併症の他にも、太い血管の動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞脳卒中といった命に関わる病気のリスクが高まります。また、足の血管や神経の障害、感染症への抵抗力の低下などが原因で足病変(潰瘍や壊疽)を起こしやすくなり、最悪の場合、足を切断することもあります。

高血糖は、これらの合併症が進行する最大の要因です。早期から血糖値を適切にコントロールすることが、合併症の発症や進行を防ぐために非常に重要です。

血糖値130mg/dLや200mg/dL超えは大丈夫?

空腹時血糖値が126mg/dL未満であっても、例えば食後血糖値が130mg/dLや140mg/dLを超える状態が続いたり、随時血糖値が常に高い傾向にあったりする場合、「まだ糖尿病ではないから大丈夫」と安心できるわけではありません。

特に、食後血糖値が一時的に急激に上昇する「血糖値スパイク」は、健康診断の空腹時血糖値では見逃されがちですが、血管に大きな負担をかけ、動脈硬化を進行させるリスクを高めることが知られています。食後血糖値が140mg/dLを超える状態が頻繁に起こっている場合は、将来的な糖尿病の発症リスクが高いだけでなく、すでに血管に影響が出始めている可能性も否定できません。

また、随時血糖値が200mg/dLを超える状態が続く場合は、すでに糖尿病である可能性が非常に高いです。放置すれば合併症が着実に進行していくため、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を開始する必要があります。

危険な高血糖と入院レベル

通常の慢性的な高血糖とは別に、急激に血糖値が異常に高くなることで、生命に関わる危険な状態になることがあります。これらは糖尿病の急性合併症と呼ばれます。

  • 糖尿病ケトアシドーシス: インスリンが極端に不足した場合に起こりやすく、体がエネルギー源として脂肪を分解しすぎることでケトン体が増え、血液が酸性になる状態です。高血糖(しばしば250mg/dL以上)、吐き気、腹痛、速くて深い呼吸、意識障害などの症状が現れます。
  • 高浸透圧高血糖状態: 高齢者や、水分が十分に摂れない状態の糖尿病患者さんに起こりやすい重篤な状態です。インスリン不足と高度な脱水により、血糖値が極めて高くなり(しばしば600mg/dL以上)、血液の浸透圧が異常に上昇します。意識障害、脱水症状、痙攣などが現れます。

これらの状態は、適切な治療を行わないと昏睡に至ったり、命を落とす可能性もある非常に危険な状態であり、緊急入院が必要となります。口の渇きがひどい、水分をたくさん摂っても尿がたくさん出る、体がだるい、意識がおかしいなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

血糖値が低い場合(低血糖)

高血糖だけでなく、血糖値が正常範囲より低くなりすぎる低血糖もまた、危険な状態です。特に糖尿病の治療薬(インスリンや一部の飲み薬)を使用している場合に起こりやすいですが、糖尿病でない人にも起こることがあります。

低血糖の症状と原因

血糖値が一般的に70mg/dL未満になった状態を低血糖と呼びます。血糖値が下がりすぎると、脳がエネルギー不足に陥り、様々な症状が現れます。

低血糖の主な症状:

  • 初期症状(自律神経症状): 冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感、顔面蒼白、不安感など。
  • 中期症状(中枢神経症状): 目のかすみ、集中力の低下、生あくび、眠気、脱力感、頭痛、ろれつが回らない、異常な行動など。
  • 重症症状: 意識がもうろうとする、昏睡、痙攣など。

これらの症状は血糖値の低下とともに段階的に現れることが多いですが、個人差があります。

低血糖の主な原因:

  • 薬の量が多い: インスリン注射やSU薬などの飲み薬の量が、体に必要な量よりも多い場合。
  • 食事量が少ない、食事時間が遅れる: 薬は通常通り使用しているのに、食事を抜いたり、食事の時間が遅れたりした場合。
  • 運動量が多すぎる: いつもより激しい運動をしたり、長時間運動したりした場合。運動によってブドウ糖の消費が増えるため。
  • 飲酒: 特に空腹時の飲酒は低血糖を招きやすいです。アルコールが肝臓でのブドウ糖生成を抑制するため。
  • シックデイ: 発熱や下痢などで食事が摂れない場合。
  • 急激な体重減少: 薬の量が体格に合わなくなるため。

低血糖の危険性

低血糖は、症状が出ている間は日常生活に支障をきたすだけでなく、重症化すると意識を失って転倒や事故につながったり、脳にダメージを与えたり、場合によっては命に関わることもあります。

特に危険なのは、無自覚性低血糖です。これは、繰り返し低血糖を経験したり、神経障害があったりすると、低血糖になっても初期の自律神経症状(冷や汗、動悸など)を感じにくくなる状態です。症状に気づかないまま血糖値がさらに低下し、いきなり重症の低血糖に陥るリスクが高まります。

また、夜間の低血糖も見過ごせません。就寝中に低血糖が起こっても気づきにくく、朝まで回復しないと寝汗をかいたり、うなされたり、朝起きられなかったりといった形で現れることがあります。深刻な場合、脳の機能に影響を及ぼしたり、不整脈を引き起こしたりする可能性も指摘されています。

低血糖が起きた場合の対処法(ブドウ糖を摂取するなど)を事前に知っておくこと、そして日頃から血糖値を適切に管理して低血糖を予防することが非常に重要です。

血糖値の測定方法

糖尿病の管理において、自分の血糖値の状態を把握することは極めて重要です。そのためには、様々な血糖値測定方法が用いられます。

自己血糖測定(SMBG)

自己血糖測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)は、患者さん自身が自宅などで血糖値を測定する方法です。指先などに専用の穿刺器具で小さな傷をつけ、出てきた血液を血糖測定器のセンサーにつけて測定します。

SMBGの目的:

  • 血糖変動の把握: 食事や運動、薬によって血糖値がどのように変化するかを知る。
  • 治療効果の確認: 食事療法や運動療法、薬物療法が効果的に行われているかを確認する。
  • 低血糖・高血糖の早期発見: 危険な血糖状態をいち早く察知し、対処する。
  • 自己管理意識の向上: 自分の行動が血糖値にどう影響するかを理解し、主体的に管理に取り組む。

SMBGを行う頻度やタイミング(食前、食後、就寝前など)は、糖尿病の種類や治療状況、主治医の方針によって異なります。測定結果は記録し、次回の診察時に医師に伝えることが重要です。

血糖値測定器の種類と選び方

自己血糖測定器には様々な種類があり、機能や使いやすさ、コストなどが異なります。自分に合った測定器を選ぶことが、測定を続ける上で大切です。

血糖値測定器を選ぶ際のポイント:

  • 操作の簡単さ: 機器の準備、血液の吸引、結果の表示など、操作が簡単で分かりやすいか。
  • 測定時間: 結果が出るまでの時間が短いか。
  • 必要な血液量: 少ない血液量で測定できるか(指への負担が少ない)。
  • 記録機能: 測定結果を機器に保存できるか、アプリなどと連携できるか。
  • コスト: 機器本体の価格だけでなく、センサー(試験紙)や穿刺針といった消耗品の価格も考慮する。
  • その他機能: 音声ガイド機能、測定部位の多様性(指以外でも測定できるか)、データのグラフ化機能など。

初めて血糖測定器を使用する場合は、医療機関や薬剤師から説明を受け、実際に操作方法を確認することをお勧めします。

連続血糖測定(CGM)

連続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitoring)は、皮下に留置した小さなセンサーを用いて、間質液中のブドウ糖濃度を数分~数十分間隔で連続的に測定し、血糖トレンドを把握するシステムです。従来のSMBGのようにその時点の「点」のデータだけでなく、血糖値がどのように変動しているかの「線」のデータをリアルタイムまたは後から確認できます。

CGMの利点:

  • 血糖トレンドの可視化: 血糖値の上昇・下降のパターンや速度、夜間の血糖変動などを詳細に把握できる。
  • 低血糖の早期発見・予防: 特に夜間や運動中の無自覚性低血糖を発見しやすく、アラート機能があるタイプでは低血糖になる前に対処できる。
  • 食後血糖値の把握: 食事内容による血糖値の変動を細かく確認できる。
  • 治療効果の評価: 薬の効き目や生活習慣改善の効果をより正確に評価できる。

CGMには、リーダーやスマートフォンにリアルタイムでデータを表示できるタイプと、専用のスキャナーなどで定期的にセンサーを読み取るタイプ(フラッシュグルコースモニタリング、FGM)などがあります。特にFGMは、SMBGの代替として広く利用されています。

CGMはSMBGに比べてより多くの情報を提供してくれますが、センサーの装着が必要であることや、SMBGに比べてコストがかかる場合があるといった点も考慮する必要があります。CGMが適しているかどうかは、個々の治療状況やライフスタイルによって異なるため、医師とよく相談して選択します。

血糖値測定器を使った自己血糖測定のイメージ画像

連続血糖測定器のセンサーやリーダーのイメージ画像

糖尿病の血糖値を改善・コントロールするには

糖尿病と診断された場合、あるいは糖尿病予備群と指摘された場合、血糖値を正常値に近づけ、合併症を防ぐための治療や生活習慣の改善が不可欠です。治療の基本は「食事療法」と「運動療法」であり、これらで不十分な場合に「薬物療法」が追加されます。

食事療法の基本

食事療法は、糖尿病治療の最も重要な柱の一つです。単に「食べてはいけないもの」を決めるのではなく、「何を」「どれだけ」「どのように」食べるかをバランス良く管理することが目標です。

食事療法の基本的な考え方:

  • 適正なエネルギー摂取量: 年齢、性別、体格、活動量などを考慮して、自分に必要な一日の総エネルギー摂取量を守ります。医師や管理栄養士に相談して、適切な量を把握しましょう。
  • 栄養バランス: 炭水化物、タンパク質、脂質をバランス良く摂ることが大切です。特に、血糖値に大きく影響する炭水化物の量と質に注意が必要です。
  • 規則正しい食事: 一日三食を規則正しく摂り、間食や夜食を控えることで、食後の急激な血糖上昇を防ぎます。

血糖値をコントロールする食事のポイント

血糖値を安定させるためには、以下の点を意識しましょう。

  • 炭水化物の質を選ぶ: 白米やパン、麺類などの精製された炭水化物よりも、玄米や全粒粉製品、そばなどの未精製のもの(GI値が比較的低いもの)を選ぶと、血糖値の急激な上昇を抑えられます。
  • 食物繊維を十分に摂る: 野菜、きのこ類、海藻類、豆類、こんにゃくなどに含まれる食物繊維は、糖の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。
  • 脂質の種類と量に注意: 動物性脂肪よりも、魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸を適量摂るように心がけましょう。揚げ物やファストフード、加工食品に含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は控えめにします。
  • タンパク質を適量摂る: 魚、肉(赤身)、大豆製品、卵などからバランス良く摂ります。
  • 減塩: 塩分の摂りすぎは高血圧を招き、糖尿病の合併症リスクを高めるため、薄味を心がけましょう。
  • アルコールは適量に: 飲酒は血糖コントロールを乱したり、低血糖を招いたりする可能性があるため、飲む量やタイミングに注意が必要です。医師の指示に従いましょう。

食べる順番やバランス

同じものを食べても、食べる順番によって食後の血糖値の上昇の仕方が変わることが知られています。

  • ベジファースト: 食事の最初に野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維を豊富に含む食品を食べることで、糖の吸収を緩やかにする効果が期待できます。
  • バランスの良い定食形式: 主食(ごはん、パンなど)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)、副菜(野菜、きのこ、海藻類など)を揃え、バランス良く食べるように心がけましょう。

運動療法の効果

運動療法もまた、糖尿病治療において食事療法と並んで非常に重要です。運動によって筋肉がブドウ糖をエネルギーとして利用しやすくなり、インスリンの働き(インスリン感受性)が改善されることで、血糖値を下げる効果が期待できます。さらに、運動は体重管理、血圧や脂質の改善、心肺機能の向上、ストレス解消など、様々な健康効果をもたらします。

血糖値を下げる運動の種類

血糖コントロールに効果的な運動は、主に以下の2種類です。

  • 有酸素運動: ウォーキング、軽いジョギング、水泳、自転車、水中ウォーキングなど、酸素を使いながら比較的軽い負荷で長時間行う運動です。ブドウ糖や脂肪をエネルギーとして消費し、インスリンの効き目を良くする効果があります。
  • 筋力トレーニング: スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など、筋肉に負荷をかける運動です。筋肉量が増えると、安静時や運動時のブドウ糖消費が増加し、基礎代謝も向上します。

これらの運動を組み合わせることで、より効果的な血糖コントロールが期待できます。一般的には、有酸素運動を中心に、週に2~3回筋力トレーニングを取り入れることが推奨されています。

運動する際の注意点

運動療法を安全かつ効果的に行うためには、いくつかの注意点があります。

  • 医師に相談する: 運動を始める前に、必ず医師に相談し、現在の体の状態や合併症の有無などを考慮して、適切な運動の種類や強度、時間などを指示してもらいましょう。
  • 運動するタイミング: 食後1~2時間後の、血糖値が上がり始める頃に行うと、血糖値を下げる効果が得られやすいと言われています。ただし、食後すぐに激しい運動をするのは避けてください。
  • 低血糖に注意: 特にインスリンやSU薬を使用している方は、運動中に低血糖を起こす可能性があります。運動前後の血糖測定、補食(ブドウ糖や炭水化物を含む食品)の準備、空腹時や体調が悪い時の運動は避けるなどの対策が必要です。
  • 無理のない範囲で継続: 最初から無理な目標を立てず、ウォーキングから始めるなど、自分が続けられるペースで取り組むことが大切です。毎日少しずつでも良いので、継続することを目標にしましょう。
  • 足のケア: 神経障害がある方は、足に傷や靴擦れができていても気づきにくいことがあります。運動前後に必ず足をチェックし、清潔な靴下と自分に合った靴を履きましょう。

薬物療法による治療

食事療法や運動療法を継続しても血糖コントロールが目標値に達しない場合、あるいは診断時の血糖値やHbA1cが非常に高い場合には、薬物療法が検討されます。糖尿病の薬には様々な種類があり、患者さんの病状や原因(インスリン分泌不全か、インスリン抵抗性かなど)に合わせて、医師が適切な薬を選択します。

糖尿病の薬の種類(代表例):

  • インスリン分泌を促進する薬:
    • SU薬(スルホニル尿素薬):膵臓に働きかけてインスリン分泌を促進します。低血糖を起こしやすい薬もあります。
    • 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬):食事の刺激に応じてインスリン分泌を促進します。食直前に服用します。
    • DPP-4阻害薬:インクレチンというホルモンの分解を抑え、血糖値が高い時にインスリン分泌を促進します。低血糖を起こしにくい比較的使いやすい薬です。
    • GLP-1受容体作動薬:インクレチンと同様の働きをしますが、DPP-4阻害薬よりも強力で、注射薬が多いです。体重減少効果も期待できます。
  • インスリン抵抗性を改善する薬:
    • ビグアナイド薬(メトホルミンなど):肝臓からの糖放出を抑えたり、筋肉などでの糖利用を促進したりすることで、インスリンの効き目を改善します。
    • チアゾリジン薬:脂肪細胞などに働きかけ、インスリンの効き目を改善します。
  • 糖の吸収や排泄に作用する薬:
    • α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI):小腸での糖の吸収を遅らせ、食後血糖値の上昇を抑えます。食直前に服用します。
    • SGLT2阻害薬:腎臓でのブドウ糖の再吸収を抑え、尿と一緒にブドウ糖を排泄させることで血糖値を下げます。体重減少や心血管疾患、腎臓病の抑制効果も期待されています。
  • インスリン注射: 膵臓からのインスリン分泌が不足している場合に、直接インスリンを補う治療法です。自己注射で daily で行うことが一般的です。様々な作用時間や特徴を持つインスリン製剤があり、患者さんの病状やライフスタイルに合わせて使い分けられます。

薬物療法は、あくまで食事療法と運動療法を補完するものです。薬を飲んでいるからといって、食事や運動がおろそかになって良いわけではありません。必ず医師の指示通りに正しく服用し、副作用や低血糖に注意しながら治療を進めることが重要です。

血糖コントロールの目標値

糖尿病治療における血糖コントロールの目標値は、日本糖尿病学会が定めた指標(HbA1c、血糖値など)に基づき、個々の患者さんの状況(年齢、罹病期間、合併症の有無、低血糖の可能性など)を考慮して、医師と患者さんが話し合って設定されます。

一般的な血糖コントロール目標(HbA1c):

  • 合併症予防のための目標:HbA1c 7.0%未満
    多くの患者さんが目指すべき目標であり、厳格な血糖コントロールによって合併症の発症や進行を抑制することが期待されます。
  • 治療強化が難しい場合の目標:HbA1c 8.0%未満
    高齢者や、重い合併症がある、低血糖を繰り返すなど、治療を厳格に行うことが難しい場合の目標です。
  • 高齢者の目標:
    認知機能や身体機能の状態、予後などを考慮し、個別に設定されます。目標は7.0%未満、8.0%未満、または8.5%未満など、ゆるやかな目標となることもあります。低血糖を避けることが特に重要視されます。

HbA1cの目標値だけでなく、空腹時血糖値や食後血糖値の目標値も設定されることがあります。例えば、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間値180mg/dL未満などを目安とすることがあります。

目標値を達成するためには、日々の血糖測定やHbA1cの定期的な測定、そして医師や医療スタッフとの連携が不可欠です。目標値に達しない場合や、低血糖などが頻繁に起こる場合は、治療法を見直す必要があります。

糖尿病の早期発見・治療の重要性

糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないことが多いため、「静かなる病気」とも呼ばれます。しかし、高血糖状態が放置されると、知らぬ間に血管や神経が傷つけられ、上記で解説した様々な合併症が進行してしまいます。合併症が一度発症してしまうと、完全に元に戻すことは難しい場合が多いです。

だからこそ、糖尿病の早期発見と、診断されたらすぐに適切な治療を開始することが非常に重要です。

健康診断や特定健診を毎年きちんと受診し、血糖値やHbA1cの項目を確認しましょう。これらの検査で異常を指摘された場合は、「要再検査」や「要精密検査」という結果を軽く考えず、必ず医療機関を受診してください。たとえまだ糖尿病と診断されなくても、糖尿病予備群(境界型)である場合は、将来糖尿病を発症するリスクが高い状態です。この段階で生活習慣の改善に取り組めば、糖尿病の発症を遅らせたり、予防したりすることが可能です。

また、糖尿病に特徴的な症状(口の渇き、水をよく飲む、尿の回数が増える、体がだるい、急に痩せたなど)がある場合は、健康診断の結果を待たずに、すぐに医療機関を受診しましょう。

糖尿病は、一度発症すると完治が難しい病気ですが、適切に管理すれば合併症の発症や進行を抑え、健康な人と同じように日常生活を送ることが可能です。日々の血糖管理をしっかり行い、医師や医療スタッフと協力しながら、ご自身の健康を守っていきましょう。


免責事項: 本記事は、糖尿病と血糖値に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個々の症状、診断、治療については、必ず専門の医師や医療スタッフにご相談ください。本記事の情報のみに基づいてご自身の判断で治療や健康管理を行わないでください。情報の正確性には万全を期しておりますが、内容の完全性、正確性、有用性について保証するものではありません。

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