血糖値が下がりすぎると危ない?低血糖の症状・原因・応急処置
血糖値が下がると、体は様々なサインを出します。これらのサインを知っておくことは、低血糖が引き起こす危険な状態を防ぐために非常に重要です。
この記事では、血糖値が下がったときに体に何が起こるのか、その症状や原因、そしていざという時の正しい対処法と日頃からの予防策について詳しく解説します。
低血糖のリスクがある方や、その周囲の方にとって役立つ情報を提供し、安心して日常生活を送れるようサポートします。
血糖値が下がると現れる症状(低血糖のサイン)
血糖値が下がると、体は危険を知らせるために様々なサインを発します。これらの症状は、血糖値の低下度合いによって段階的に現れることが多いですが、個人差やその時の体調によっても異なります。症状を早期に認識し、すぐに対処することが、低血糖による重篤な合併症を防ぐために非常に重要です。
軽度の場合:自律神経症状
血糖値が比較的軽度に下がった段階(およそ70mg/dL未満)で現れやすいのが、自律神経症状です。これは、体が血糖値を上げようとしてアドレナリンなどのホルモンを分泌することで起こる反応です。
- 冷や汗をかく: 特に手のひらや額などにじんわりと汗をかくことがあります。
- 動悸を感じる: 心臓がドキドキと速く打つのを感じます。
- 手の震え: 指先などが小刻みに震えることがあります。
- 強い空腹感: 急にお腹がすいたような感覚になります。
- 吐き気: ムカムカするような吐き気を感じることもあります。
- 顔色が悪くなる(青白くなる): 血行が悪くなり、顔色が悪くなることがあります。
これらの症状は、体が「血糖値が低い!エネルギーが足りない!」とSOSを出しているサインです。この段階で対処すれば、比較的早く回復することがほとんどです。
中等度の場合:中枢神経症状
軽度の自律神経症状に気づかず、さらに血糖値が下がると(およそ50mg/dL未満)、脳へのエネルギー供給が不足し始め、中枢神経症状が現れてきます。
- 強いだるさ・倦怠感: 体全体が非常にだるく感じます。
- 集中力の低下: 物事に集中できなくなり、頭がぼんやりします。
- 思考力の低下: いつもなら簡単にできる計算や判断ができなくなります。
- 頭痛: 締め付けられるような頭痛を感じることがあります。
- 眠気: 異常に強い眠気を感じます。
- 目の霞み・視力障害: 物が二重に見えたり、視野が狭くなったりすることがあります。
- 異常な行動: 普段とは違う言動をとったり、酔っ払っているように見えたりすることがあります。
- ふらつき: 立ち上がろうとしたり歩いたりする際にふらつくことがあります。
この段階になると、自分自身での適切な判断や行動が難しくなることがあります。周囲の人が異変に気づき、サポートすることが重要になります。
重度の場合:危険な状態
血糖値がさらに著しく低下すると(およそ30mg/dL未満)、脳機能が深刻な影響を受け、命に関わる危険な状態になります。
- 意識障害: 呼びかけに反応しない、朦朧とする、意識を失うなどの状態になります。
- 痙攣: 体がひきつけを起こすことがあります。
- 昏睡: 完全に意識がなくなり、深い眠りのような状態になります。
この状態は非常に危険であり、迅速な医療的な介入が必要です。意識がない場合は、口から物を摂取させることができないため、救急車を呼ぶなどの緊急対応が必要になります。
血糖値の数値と症状の目安
低血糖の症状が現れる血糖値には個人差がありますが、一般的な目安は以下の表の通りです。これはあくまで目安であり、ご自身の症状と血糖値の関係を把握しておくことが大切です。
血糖値の目安 (mg/dL) | 症状の段階 | 主な症状 |
---|---|---|
70未満 | 軽度 | 冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感、吐き気、顔面蒼白 |
50未満 | 中等度 | 強いだるさ、集中力・思考力低下、頭痛、眠気、目の霞み、異常行動、ふらつき |
30未満 | 重度 | 意識障害、痙攣、昏睡 |
特に糖尿病治療を受けている方は、定期的に血糖値を測定し、ご自身の血糖値と症状の関係を知っておくことが重要です。
また、「無自覚性低血糖」といって、血糖値がかなり下がっても症状を感じにくい方もいます。このような方は、より注意が必要です。
血糖値が下がる主な原因
血糖値が下がる原因は多岐にわたりますが、特に多いのは糖尿病の治療に関連するものです。しかし、糖尿病でない方にも低血糖が起こる可能性はあります。主な原因を理解することで、予防や適切な対処につなげることができます。
糖尿病治療薬によるもの
糖尿病の治療において、血糖値を下げるために使用される薬が、時に低血糖を引き起こす最も一般的な原因です。
- インスリン療法: インスリンの量が多すぎる、注射するタイミングが不適切(食前なのに食後になった、食事が遅れたなど)、運動量が想定より多い、食事量が少ない、といった場合に血糖値が下がりすぎることがあります。
- SU薬(スルホニル尿素薬): グリメピリド、グリクラジド、グリベンクラジドなど。膵臓からのインスリン分泌を促進する薬です。この薬もインスリンと同様に、服用量やタイミング、食事・運動とのバランスが崩れると低血糖を引き起こしやすいです。特に高齢の方や腎機能が低下している方では、薬が体に長く留まりやすいため注意が必要です。
- 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬): ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニドなど。食後の血糖値上昇を抑える目的で食直前に服用する薬です。食直前に服用できなかったり、食事量が少なかったりすると低血糖のリスクが高まります。
これらの薬を使用している方は、医師や薬剤師から薬の正しい使い方や低血糖への対処法について十分に指導を受けることが不可欠です。
食事や運動によるもの
糖尿病治療薬を使用していない方でも、食事や運動が原因で低血糖になることがあります。また、薬を使用している方は、これらの要因と薬の効果が合わさることで低血糖のリスクがさらに高まります。
- 食事量の不足・食事を抜く: 食事から十分な糖質を摂取できないと、血糖値が低下しやすくなります。特にインスリンやSU薬を使用している方が食事を抜いたり、量を大幅に減らしたりすると、薬の効果が強く出て低血糖になります。
- 食事時間の遅れ: 食事をとる時間が遅れると、特に薬の効果が出ているタイミングとずれてしまい、血糖値が下がる可能性があります。
- 過度な運動・いつもより激しい運動: 運動中はブドウ糖がエネルギーとして消費されるため、血糖値が低下します。特にインスリンの効果が出ている時間帯や、食前の空腹時に激しい運動をすると低血糖になりやすいです。また、運動後数時間経ってから低血糖になる「遅発性低血糖」にも注意が必要です。
- アルコールの摂取: アルコールは肝臓での糖新生(ブドウ糖を作る働き)を抑制するため、血糖値を下げる働きがあります。特に空腹時の飲酒や多量飲酒は低血糖のリスクを高めます。インスリンやSU薬を使用している方が飲酒する際は、食事をしっかり摂りながら少量にするなどの注意が必要です。
その他の原因
糖尿病治療や一般的な食事・運動以外にも、低血糖を引き起こす様々な原因があります。
- 特定の病気:
- インスリノーマ: 膵臓にできる腫瘍で、インスリンを過剰に分泌するため低血糖を繰り返します。
- 副腎機能不全: 血糖値を上げる働きのあるコルチゾールなどのホルモン分泌が低下し、低血糖を起こしやすくなります。
- 肝疾患: 肝臓は糖の貯蔵や生成に関わる重要な臓器です。重度の肝硬変などがあると、糖を十分に生成できず低血糖になることがあります。
- 腎不全: インスリンなどの薬が体外に排出されにくくなり、効果が強く出すぎることがあります。
- 胃を切除した方: 食事から摂取した糖が急激に吸収され、インスリンが過剰に分泌されることで、食後に低血糖になることがあります(ダンピング症候群)。
- 薬剤の相互作用: 一部の薬(例:特定の抗菌薬、高血圧の薬など)が、糖尿病治療薬と併用することで低血糖のリスクを高めることがあります。他の病気で薬を処方される際は、必ず医師や薬剤師に糖尿病治療薬を使用していることを伝えましょう。
- 長時間の絶食: 手術前など、医療的な理由で長時間絶食した場合も血糖値が低下する可能性があります。
- 妊娠: 特に妊娠初期には、血糖値が下がりやすくなることがあります。
血糖値が急に下がる食後性低血糖
食後性低血糖(反応性低血糖とも呼ばれます)は、食事を摂った数時間後に血糖値が下がる状態です。特に糖尿病ではない方や、糖尿病の初期段階の方に見られることがあります。
高糖質の食事を摂った後、血糖値が急激に上昇し、それに対して体がインスリンを過剰に分泌することで起こると考えられています。症状は軽度から中等度の低血糖症状に似ています。食事の内容や摂り方を見直すことで改善することが多いです。
夕方低血糖になりやすいケース
夕方に低血糖になりやすいケースはいくつか考えられます。
- 昼食後のインスリンやSU薬の効果が夕方まで持続する: 昼食時に使用した薬の効果がピークを迎える時間帯が夕方と重なる場合。
- 昼食が少なかったり、遅かったりした: 午後の活動量に対して昼食からのエネルギー供給が不足している場合。
- 午後に運動をした: 午後の運動によってブドウ糖が消費され、血糖値が低下している場合。
- 夕食までの時間が長い: 昼食から夕食までの時間が長く空くと、血糖値が低下しやすくなります。
夕方にいつも低血糖を感じる場合は、昼食の内容や時間、午後の活動量、夕食までの時間などを考慮して対策を講じる必要があります。医師に相談し、薬のタイミングや量を調整してもらうことも有効です。
低血糖になりやすい人の特徴
特定の要因を持つ人は、他の人よりも低血糖になるリスクが高い傾向があります。ご自身に当てはまる特徴がないかを確認し、必要に応じて注意や対策を行うことが重要です。
薬を使用している方
前述の通り、以下の薬を使用している方は低血糖のリスクが高まります。
- インスリン注射を使用している方: インスリンの種類、量、注射のタイミング、食事や運動とのバランスが複雑に関わるため、常に低血糖のリスクがあります。
- SU薬(スルホニル尿素薬)を服用している方: 膵臓からのインスリン分泌を促進するため、薬の効果が出ている間は常に低血糖の可能性があります。特に高齢者や腎機能障害がある方は注意が必要です。
- 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)を服用している方: 食事とのタイミングがずれると低血糖になりやすいです。
これらの薬を使用している方は、薬の作用時間や低血糖のサイン、対処法について十分に理解しておく必要があります。
食事や生活習慣の乱れがある方
規則正しくバランスの取れた食事や生活習慣が維持できていない方も、低血糖のリスクが高まります。
- 食事時間が不規則: 食事と薬のタイミングがずれることで、薬の効果が出ているにも関わらず食事からの糖質供給がない状態になりやすいです。
- 食事量が不安定: 食事量が日によって大きく異なると、必要な薬の量が変動しやすくなり、インスリンやSU薬を使用している場合は特に量の調整が難しくなります。
- 特定の栄養素の偏り: 特に糖質制限を極端に行っている場合など、必要な糖質が不足すると血糖値が低下しやすくなります。
- 過度な飲酒: 空腹時や多量の飲酒は、肝臓の糖新生を抑制し低血糖を招きやすくなります。
- 睡眠不足や疲労: 体のホルモンバランスが崩れやすくなり、血糖コントロールに影響を与えることがあります。
特定の病気がある方
糖尿病以外の特定の病気を持っている方も、低血糖のリスクが高い場合があります。
- 腎機能障害: 腎臓から薬が排出されにくくなるため、インスリンやSU薬の効果が遷延しやすくなります。
- 肝機能障害: 肝臓での糖生成能力が低下し、血糖値を維持しにくくなります。
- 副腎機能不全: 血糖値を上げるホルモンが不足するため、低血糖になりやすいです。
- 胃切除後: 食事後の血糖値の変動が大きくなり、反応性低血糖を起こすことがあります。
- 悪性腫瘍: 一部の腫瘍がインスリン様物質を分泌したり、栄養状態が悪化したりすることで低血糖を招くことがあります。
これらの病気がある方は、主治医と相談し、低血糖のリスクについて確認しておくことが重要です。
低血糖セルフチェックリスト
以下の項目に複数当てはまる方は、低血糖のリスクが高い可能性があります。日頃から注意し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
- インスリン注射を使用している
- SU薬(グリメピリド、グリクラジドなど)または速効型インスリン分泌促進薬(ナテグリニドなど)を服用している
- 食事時間が不規則になりがちである
- 食事を抜いたり、極端に量を減らしたりすることがある
- 空腹時や多量に飲酒することがある
- 予測できないような激しい運動をすることがある
- 腎臓や肝臓の機能が低下していると言われている
- 過去に一度でも低血糖の症状を経験したことがある
- 低血糖になっても症状に気づきにくい(無自覚性低血糖の傾向がある)
- 高齢である
これらの項目に当てはまる方は、低血糖予防のための知識を身につけ、万が一の事態に備えることが大切です。
血糖値が下がった時の正しい対処法
低血糖の症状が現れた場合、迅速かつ適切に対処することが非常に重要です。特に意識があるうちに正しい対応を取ることで、重篤な状態への進行を防ぐことができます。
意識がある場合
低血糖の初期症状(冷や汗、動悸、手の震えなど)や中等度の症状(だるさ、頭痛、目の霞みなど)が現れたら、すぐに血糖値を上げるための行動をとる必要があります。
摂取すべきもの(ブドウ糖や砂糖)
速やかに血糖値を上げるためには、吸収の速い糖質を摂取することが基本です。具体的には、ブドウ糖10g、または砂糖20gを目安に摂取します。
糖質の種類 | 目安量 | 注意点 |
---|---|---|
ブドウ糖 | ブドウ糖タブレット 1〜2個 (10g相当) ブドウ糖を含む清涼飲料水 150〜200ml |
最も吸収が速く効果的。薬局やコンビニなどで手に入るブドウ糖タブレットを常に携帯しておくと良い。スポーツドリンクは糖分量が少ない場合があるので成分表示を確認すること。果汁100%ジュースも良いが、食物繊維が含まれるためブドウ糖より吸収はやや遅れる。 |
砂糖 | 砂糖 20g (スティックシュガー約2本、大さじ約2杯) 砂糖を含む清涼飲料水 150〜200ml |
ブドウ糖と同様に吸収が速い。角砂糖なら2〜3個程度が目安。ジュースの場合は成分表示を確認し、砂糖や果糖ブドウ糖液糖が含まれているものを選ぶ。 |
その他 | はちみつ 大さじ1杯 あめ 2〜3個 |
ブドウ糖や砂糖に比べて吸収はやや遅れる場合があるが、手元にあれば有効。 |
摂取後の対応:
- 安静にする: 糖質を摂取したら、無理に動き回らず、座るか横になるかして安静にしましょう。
- 15分待つ: 糖質を摂取してから15分ほど待ち、症状が改善するか様子を見ます。
- 血糖値を測定する(可能な場合): 血糖測定器を持っている場合は、15分後に血糖値を測定し、70mg/dL以上に上昇しているか確認します。
- 症状が改善しない場合: 15分経っても症状が改善しない、または血糖値が70mg/dL未満の場合は、再度ブドウ糖10gまたは砂糖20gを含む食品を摂取します。
- 食事をとる: 症状が改善し、次の食事まで1時間以上時間がある場合は、軽食(おにぎり、パン、ビスケットなど)を摂って、血糖値の再低下を防ぎます。
低血糖は急に起こる可能性があるため、常にブドウ糖タブレットや砂糖を含む飴、ジュースなどを携帯しておくことが非常に重要です。
避けるべきもの(チョコレートなど)
低血糖の対処として、以下のような食品は適していません。
- チョコレート、ケーキ、アイスクリームなど脂肪分の多い食品: 脂肪分は糖質の吸収を遅らせてしまいます。速やかに血糖値を上げたい低血糖時には不向きです。
- 食物繊維の多い食品: 食物繊維も糖質の吸収を緩やかにするため、即効性が必要な対処には向きません。
これらの食品は美味しいですが、低血糖が起きたときは避けるようにしましょう。
回復しない場合の対応
ブドウ糖や砂糖を摂取し、再度摂取しても症状が改善しない場合、または症状が悪化する場合は、迷わず医療機関に連絡するか、救急車(119番)を要請してください。特に、意識が朦朧としてきたり、異常な言動が見られたりする場合は、速やかな対応が必要です。
意識がない場合
低血糖によって意識を失ってしまった場合、口から飲食物を与えることは誤嚥のリスクがあり非常に危険です。
- 周囲の人が行うこと:
- まず、安全な場所に移動させ、気道を確保します。
- 意識がない場合は、絶対に口に物を入れないでください。
- すぐに救急車(119番)を要請します。
- もし、医師からグルカゴン注射を処方されており、使用方法を知っている家族などが近くにいれば、指示通りにグルカゴンを注射します。グルカゴンは肝臓に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖に変え、血糖値を上昇させる働きがあります。
- 救急隊員が到着するまで、患者さんの呼吸状態などを観察します。
糖尿病患者さんで、低血糖によって意識を失う可能性がある場合は、家族や一緒に過ごす人がグルカゴン注射の使い方を知っておく、低血糖時の対応について事前に共有しておくことが非常に重要です。また、低血糖であることを知らせる医療IDカードや、スマートフォンの医療情報機能などを活用することも有効です。
危険な低血糖を防ぐための対策
低血糖は一度経験すると、強い不安を感じる原因となります。しかし、日頃から適切な対策を行うことで、低血糖のリスクを減らすことができます。
食事のポイント
血糖値を安定させるためには、食事の内容と摂り方が重要です。
- 規則正しい時間に食事を摂る: 特に糖尿病治療薬を使用している方は、薬の効果と食事のタイミングを合わせることが大切です。毎日決まった時間に食事を摂るように心がけましょう。
- 食事を抜かない・遅らせない: 食事を抜いたり大幅に遅らせたりすると、薬の効果が出ている時間帯とずれが生じ、低血糖を招きやすくなります。やむを得ず遅れる場合は、事前に軽食を摂るなどの対策を検討しましょう。
- バランスの取れた食事を心がける: 炭水化物、タンパク質、脂質をバランス良く摂取することで、血糖値の急激な変動を抑えることができます。特に糖質の摂りすぎや極端な制限は避けるべきです。
- ゆっくりよく噛んで食べる: 早食いは食後の血糖値の急上昇を招きやすく、その後の血糖値の低下につながる可能性があります。ゆっくり食べることで、血糖値の上昇が緩やかになります。
- 食物繊維を積極的に摂る: 野菜やきのこ、海藻類などに含まれる食物繊維は、糖質の吸収を緩やかにする働きがあります。食事の最初に野菜などを食べる「ベジタブルファースト」も効果的です。
- 分食を検討する: 1回の食事量を減らし、間食として軽食を挟む「分食」も、血糖値の大きな変動を抑えるのに役立つ場合があります。医師や栄養士に相談してみましょう。
- 寝る前の補食に注意: 寝る前に糖質の多いものを摂取すると、夜間低血糖のリスクを高める場合があります。必要な場合は、血糖値が上がりにくい食品(牛乳など)を選ぶか、医師に相談しましょう。
運動のポイント
運動は血糖コントロールに非常に有効ですが、方法によっては低血糖を招くことがあります。
- 食後に運動する: 食前や空腹時の運動は低血糖のリスクが高いです。食後1~2時間後に運動するのがおすすめです。
- 運動量を把握する: いつもより長時間や激しい運動をする場合は、事前に医師に相談し、薬の量を調整したり、運動前に補食を摂ったりするなどの対策を検討しましょう。
- 運動中・運動後の低血糖に注意: 特に長時間運動する場合は、運動中にブドウ糖タブレットやスポーツドリンクなどを携帯し、必要に応じて摂取できるようにしておきましょう。また、運動後数時間経ってから低血糖になる「遅発性低血糖」にも注意し、寝る前などに軽食を摂るなどの対策が有効な場合があります。
- 低血糖の症状を感じたら運動を中止する: 運動中に低血糖のサインを感じたら、すぐに運動を中止し、糖質を摂取して安静にしましょう。
薬物療法を受けている場合の注意点
インスリンやSU薬を使用している方は、以下の点に特に注意が必要です。
- 医師の指示通りに薬を使用する: 薬の種類、量、使用するタイミングを自己判断で変更しないでください。
- シックデイの対応: 発熱や下痢、嘔吐などで食事が十分摂れない「シックデイ」の際は、普段通りの量の薬を使うと低血糖になるリスクが高まります。シックデイの際の薬の調整方法については、事前にかかりつけ医から具体的な指示を受けておくことが非常に重要です。
- 他の病気で受診する際は薬手帳を見せる: 他の医療機関を受診したり、薬局で市販薬を購入したりする際は、必ず現在使用している糖尿病治療薬を伝えましょう。薬剤の相互作用による低血糖を防ぐために必要です。
- 新しい薬やインスリンに変更した際は特に注意: 薬の種類やインスリン製剤を変更した際は、血糖変動のパターンが変わる可能性があります。医師の指示をよく聞き、いつもより頻繁に血糖測定を行うなどして様子を見ましょう。
日頃から意識すること
低血糖はいつどこで起こるか予測が難しい場合もあります。日頃から以下の点を意識しておくことで、リスクを減らし、いざという時に冷静に対処できます。
- 低血糖の症状を認識する: 自分の体に現れる低血糖のサインを覚えておくことが大切です。症状が出たらすぐに「低血糖かもしれない」と疑い、対応できる準備をしましょう。
- 血糖測定を習慣にする: 血糖測定器を持っている場合は、低血糖の症状を感じた時だけでなく、定期的に血糖値を測定することで、自覚症状がない低血糖(無自覚性低血糖)にも気づきやすくなります。
- 常に補食(ブドウ糖や砂糖)を携帯する: 外出時はもちろん、自宅でもすぐに手が届く場所にブドウ糖タブレットや砂糖を含む飴、ジュースなどを常備しておきましょう。
- 周囲の人に低血糖について伝える: 家族や職場の同僚、友人など、身近な人に自分が糖尿病であることや、低血糖を起こす可能性があること、その際の症状と対処法について伝えておきましょう。万が一、自分で対処できなくなった場合に助けを求めることができます。
- 医療IDカードや情報を活用する: 糖尿病患者であることを示すカードや、スマートフォンの医療情報機能などに、使用している薬や低血糖時の対処法などを記載しておくと、緊急時に救助者が適切な対応を取りやすくなります。
- 体調の変化に注意する: いつもと違う体調(疲労、寝不足、ストレス、感染症など)は、血糖コントロールに影響を与えることがあります。体調が優れない時は、いつも以上に血糖値に注意しましょう。
低血糖を完全にゼロにすることは難しい場合もありますが、これらの対策を実践することで、発生頻度や重症化のリスクを大幅に減らすことができます。
血糖値が下がることに不安を感じたら医療機関へ相談を
血糖値が下がること(低血糖)は、時に生命の危険を伴うこともあります。特に糖尿病の治療を受けている方や、原因不明の低血糖症状を繰り返す方は、一人で抱え込まずに必ず医療機関に相談してください。
医療機関では、以下のようなサポートを受けることができます。
- 低血糖の原因の特定: 症状や普段の生活習慣、使用している薬などを詳しく聞き取り、低血糖が起こる原因を突き止めるための検査を行います。
- 治療法の見直し・薬の調整: 糖尿病治療薬が原因で低血糖が起こっている場合は、薬の種類や量、使用するタイミングなどを適切に見直してもらえます。低血糖を起こしにくい新しい治療薬に変更を検討することもあります。
- 低血糖への備え方の指導: 低血糖が起きた時の具体的な対処法(何をどのくらい摂取するか)、日頃の予防策(食事、運動、薬の使い方など)について、個別指導を受けることができます。補食の携帯や周囲への情報共有の重要性についても改めて学ぶことができます。
- 無自覚性低血糖への対応: 低血糖の症状を感じにくい方に対しては、より厳重な血糖管理の目標設定や、持続血糖測定器(CGM)の活用など、適切な対策を検討してもらえます。
- 他の病気の可能性の確認: 糖尿病治療とは関係なく低血糖が起こる場合は、インスリノーマや副腎機能不全など、他の病気が隠れていないかどうかの検査を受けることができます。
血糖値が下がることへの不安は、日々の生活の質にも影響を与えます。専門家である医師や看護師、管理栄養士に相談し、ご自身の状態に合った適切なアドバイスとサポートを受けることで、低血糖のリスクを管理し、安心して過ごせるようになります。
「こんな症状、もしかして低血糖?」と感じたら、自己判断せず、まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。特に夜間や休日に症状が出た場合にどうすれば良いかなど、緊急時の対応についても事前に確認しておきましょう。
免責事項
この記事は、血糖値が下がること(低血糖)に関する一般的な情報を提供することを目的としています。
個々の病状や治療状況によって、適切な対応や予防策は異なります。
この記事の内容は、医師による診断や治療に代わるものではありません。
低血糖の症状がある場合や、低血糖について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
記事に記載された情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。