糖尿病リスクは健康診断でわかる?結果の見方と早期発見のコツ
糖尿病は、初期には自覚症状がほとんど現れないため、「サイレントキラー」とも呼ばれる病気です。しかし、進行すると心臓病、脳卒中、腎臓病、失明など、様々な重篤な合併症を引き起こす可能性があります。このような糖尿病を早期に発見し、適切な対策を始めるために重要な役割を果たすのが、定期的な健康診断です。「糖尿病 健康診断」という言葉で検索されたあなたは、きっとご自身の健康やご家族の健康について関心をお持ちのことでしょう。この記事では、健康診断で糖尿病がどこまでわかるのか、どのような検査項目があるのか、そして結果の見方や異常があった場合の対応について、詳しく解説していきます。
健康診断は、生活習慣病を含む様々な病気のスクリーニング(ふるい分け)を目的として行われます。糖尿病に関しても、健康診断で実施されるいくつかの検査項目から、糖尿病である可能性が高いかどうか、あるいは糖尿病予備群(境界型糖尿病)であるかどうかを判断するための重要な手がかりを得ることができます。
健康診断で確認できる主な検査項目
一般的な健康診断や人間ドックに含まれる糖尿病関連の主な検査項目は以下の通りです。
- 空腹時血糖値: 検査前日の夜から食事を摂らずに測定する血糖値です。
- 随時血糖値: 食事時間に関係なく測定する血糖値です。
- HbA1c (ヘモグロビンA1c): 過去1〜2ヶ月の血糖値の平均的な状態を示す指標です。
- 尿糖検査: 尿の中に糖が含まれているかを調べます。
これらの検査項目は、採血や採尿といった比較的簡単な方法で測定できます。健康診断では、これらの値が基準値から外れていないかを確認することで、糖尿病の可能性を早期に発見しようとします。
血糖値やHbA1cだけで判断できないケース
健康診断の項目は糖尿病の早期発見に非常に有用ですが、これらの検査値だけで糖尿病の確定診断ができるわけではありません。特に以下のようなケースでは、健康診断の結果のみで安心したり、逆に過度に心配したりしないように注意が必要です。
- 測定時の食事や体調の影響: 随時血糖値はもちろん、空腹時血糖値も検査前の食事時間や内容、あるいは体調(風邪をひいているなど)によって一時的に変動することがあります。
- 隠れ糖尿病の可能性: 空腹時血糖値やHbA1cは正常値であっても、食後にだけ血糖値が急上昇するタイプの糖尿病(「隠れ糖尿病」とも呼ばれます)は、健康診断の検査だけでは見過ごされることがあります。
- 診断基準の複雑さ: 糖尿病の診断は、これらの検査項目を複数回測定したり、より詳しい検査(後述する75gOGTTなど)を行ったりして、総合的に判断されます。健康診断での異常値はあくまで「糖尿病の疑いがある」という段階です。
- 基準値内でもリスクがある場合: 検査値が基準値内であったとしても、家族に糖尿病の方がいたり、肥満や運動不足といった生活習慣上のリスク因子があったりする場合は、将来糖尿病になる可能性が高いと考えられます。
このように、健康診断は糖尿病スクリーニングの入り口であり、糖尿病の確定診断や詳細な病状把握のためには、さらに詳しい検査や専門医による診察が必要となる場合があります。
健康診断で確認すべき糖尿病関連の検査項目
ここでは、健康診断で行われる糖尿病関連の各検査項目について、より詳しく見ていきましょう。それぞれの検査が何を示しているのか、なぜ重要なのかを理解することで、健康診断の結果をより深く読み取ることができます。
空腹時血糖値
空腹時血糖値は、文字通り、検査を受ける10時間以上前から食事を摂っていない状態(絶食状態)で測定した血糖値です。通常、健康診断ではこの空腹時血糖値が測定されます。
なぜ絶食状態で測定するのでしょうか?それは、食事をすると血糖値は一時的に上昇するため、食事の影響を受けない、体本来の血糖調節能力を測るためです。健康な人であれば、絶食状態では血糖値は一定の範囲内に保たれています。この値が高いということは、インスリンの働きが不足している、あるいはインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)である可能性が考えられます。
ただし、厳密な絶食が守られていなかった場合や、前日の夕食時間があまりに遅かった場合、あるいは特定の薬剤(ステロイドなど)を服用している場合などは、値が影響を受けることがあります。
随時血糖値
随時血糖値は、食事を摂った時間や内容に関係なく、任意で測定した時点での血糖値です。健康診断の種類によっては、空腹時血糖値ではなく随時血糖値が測定されることもあります。
随時血糖値は、その瞬間の血糖状態を示すため、食後であれば高くなりますし、空腹時であれば低くなります。そのため、随時血糖値だけを見て糖尿病の診断をすることは難しい場合があります。しかし、極端に高い値(例えば200mg/dL以上)が出た場合は、糖尿病である可能性が強く疑われます。また、症状(多尿、多飲など)がある時に測定した随時血糖値が著しく高い場合も、診断の重要な根拠となります。
HbA1c (ヘモグロビンA1c)
HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)は、糖尿病の検査項目の中でも特に重要視されている指標です。これは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質にブドウ糖がどのくらい結合しているかを示します。ブドウ糖は血糖値が高い状態が続くとヘモグロビンと結合しやすくなり、一度結合すると赤血球の寿命が尽きるまで(約120日間)離れません。そのため、HbA1cの値は、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖コントロールの状態を反映します。
HbA1c検査の最大の利点は、検査前の食事や運動といった短時間の生活習慣の影響を受けにくいことです。空腹時血糖値が検査前日の食事や体調で変動しやすいのに対し、HbA1cは長期的な血糖の状態を知るのに適しています。
例えば、健康診断の当日に限って絶食を頑張ったり、食事に気をつけたりしても、HbA1cの値は大きく変わりません。これにより、「ごまかし」が効きにくく、普段の血糖状態を正確に把握することができます。
HbA1cの値が高い場合は、過去数ヶ月間にわたって血糖値が高い状態が続いていたことを意味し、糖尿病である可能性や、糖尿病のコントロール状態が悪いことが示唆されます。逆に、HbA1cが正常値であれば、過去1〜2ヶ月の血糖状態は安定していたと考えられます。
尿糖検査
尿糖検査は、尿の中にブドウ糖が含まれているかどうかを調べる検査です。通常、健康な状態では、血液中のブドウ糖は腎臓でろ過されてもほとんどすべてが再吸収されるため、尿中にはブドウ糖は出てきません。
しかし、血糖値が一定の基準値(およそ160〜180mg/dL以上)を超えると、腎臓での再吸収能力を超えてしまい、尿中にブドウ糖が漏れ出てきます。これを「尿糖陽性」といいます。
尿糖陽性が出た場合は、その時点で血糖値が高い状態であった可能性を示唆しますが、注意が必要です。
- 血糖値が高くなくても尿糖が出ることがある: 妊娠中の方や、腎臓の機能に問題がある方などでは、血糖値が正常範囲内でも尿糖が出ることがあります。
- 血糖値が高くても尿糖が出ないことがある: 高齢の方などでは、腎臓の機能が低下しており、血糖値がかなり高くならないと尿糖が出ないことがあります。
したがって、尿糖検査は糖尿病の「確定診断」には使われず、あくまで糖尿病の可能性を示唆するスクリーニング検査の一つと考えられます。尿糖が陽性だった場合は、必ず血液検査(血糖値やHbA1c)で詳しく調べる必要があります。
検査値の基準(正常値、境界型、糖尿病型)
健康診断で得られた血糖値やHbA1cの値が、それぞれどのような意味を持つのかを理解するために、日本糖尿病学会が定めている診断基準における検査値の基準を見てみましょう。これらの基準値は、糖尿病かそうでないかを判断するための目安となります。
検査項目 | 正常値(正常型) | 境界型(糖尿病予備群) | 糖尿病型 |
---|---|---|---|
空腹時血糖値 | 100 mg/dL 未満 | 100 mg/dL 以上 126 mg/dL 未満 | 126 mg/dL 以上 |
随時血糖値 | - | - | 200 mg/dL 以上 |
HbA1c | 6.0 % 未満 | 6.0 % 以上 6.5 % 未満 | 6.5 % 以上 |
75gOGTT 2時間値 | 140 mg/dL 未満 | 140 mg/dL 以上 200 mg/dL 未満 | 200 mg/dL 以上 |
尿糖 | 陰性 | - | (血糖値が高ければ)陽性 |
注釈:
- この表は診断基準の一部を示しています。実際の診断は、複数の検査結果や臨床症状などを総合して行われます。
- 随時血糖値は、一般的に空腹時血糖値やHbA1cと組み合わせて評価されます。
- 75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)は、健康診断ではなく、糖尿病の精密検査として行われる検査です。これについては後述します。
健康診断でこれらの値が「境界型」や「糖尿病型」の範囲に入っていた場合、糖尿病の可能性が高いと考えられ、精密検査や医療機関への受診が強く推奨されます。
健康診断の結果判定と糖尿病診断基準
健康診断の結果を受け取った際、単に個々の検査項目の数値を見るだけでなく、全体的な判定をどのように理解すれば良いのでしょうか。また、糖尿病はどのような基準で診断されるのでしょうか。
医師による総合的な判定
健康診断の結果票には、各検査項目の数値とともに、総合的な判定が記載されています。この判定は、個々の検査値だけでなく、あなたの年齢、性別、BMI(体格指数)、血圧、脂質検査の結果、既往歴、家族歴、問診の内容などを総合的に考慮して、医師が行います。
例えば、空腹時血糖値やHbA1cが基準値内であっても、BMIが高く、血圧やコレステロールも高めである場合は、「生活習慣病のリスクが高い」といった判定になることがあります。これは、今は糖尿病でなくても、将来的に糖尿病を含む生活習慣病を発症する可能性が高いことを示唆しています。
逆に、一時的に血糖値が高くても、他の項目が正常でリスク因子が少ない場合は、「経過観察」となることもあります。
健康診断の結果は、あくまで「現時点でのあなたの健康状態の成績表」です。異常が見られた場合はもちろん、異常がなくても将来的なリスクを把握するために、総合判定と医師からのコメントをしっかり確認することが大切です。疑問点があれば、遠慮なく医師や保健師に質問しましょう。
日本糖尿病学会の診断基準
健康診断で糖尿病が強く疑われた場合、医療機関を受診し、より詳しい検査を受けて「確定診断」が行われます。糖尿病の診断は、日本糖尿病学会が定めた診断基準に基づいて行われます。主な診断基準は以下の通りです。
- 以下のいずれかに該当する場合
- 空腹時血糖値が126 mg/dL 以上
- 75gOGTTで、ブドウ糖負荷後2時間値が200 mg/dL 以上
- 随時血糖値が200 mg/dL 以上
- 上記1のいずれか+HbA1c が 6.5 % 以上 の場合、「糖尿病型」と判定され、原則として一回の検査で糖尿病と診断されます。
- 上記1のいずれか に該当するが、HbA1c が 6.5 % 未満の場合、あるいは、HbA1c が 6.5 % 以上 だが、上記1のいずれかに該当しない場合は、別の日にもう一度検査を行い、再度糖尿病型(空腹時血糖値126 mg/dL以上、または75gOGTT 2時間値200 mg/dL以上、または随時血糖値200 mg/dL以上、またはHbA1c 6.5%以上)の検査結果が出た場合に糖尿病と診断されます。
- 典型的な糖尿病症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)がある場合は、随時血糖値が200 mg/dL以上かつHbA1cが6.5%以上であれば、一回の検査で糖尿病と診断されることがあります。
このように、糖尿病の診断は単一の検査値だけでなく、複数の検査項目を組み合わせて、慎重に行われます。健康診断で異常を指摘された場合は、「もしかしたら糖尿病かも」と疑いを持ち、医療機関で精密検査を受けることが非常に重要です。
境界型糖尿病(糖尿病予備群)について
健康診断の結果で、「境界型」または「糖尿病予備群」と判定されることがあります。これは、血糖値やHbA1cの値が、正常値と糖尿病型の間に位置する場合を指します。具体的には、前述の表で示したように、以下のいずれかに該当する場合です。
- 空腹時血糖値:100 mg/dL 以上 126 mg/dL 未満
- 75gOGTT 2時間値:140 mg/dL 以上 200 mg/dL 未満
- HbA1c:6.0 % 以上 6.5 % 未満
境界型糖尿病は、まだ糖尿病と診断される段階ではありませんが、将来的に糖尿病に移行するリスクが非常に高い状態です。厚生労働省のデータによると、境界型の方の約3〜4割が5年以内に糖尿病に進行するとされています。
しかし、境界型糖尿病は「糖尿病になる前」の状態であり、生活習慣を見直すことで、糖尿病への進行を予防したり、遅らせたりすることが十分に可能な段階でもあります。食事内容の改善、適度な運動、体重管理などを行うことで、血糖値を正常値に戻すことも夢ではありません。
健康診断で境界型と判定されたら、「まだ大丈夫」と油断せず、「糖尿病になるリスクが高い」というwarning sign(警告サイン)として真摯に受け止め、積極的に生活習慣の改善に取り組むことが、将来の健康を守るために非常に重要です。医療機関や保健センターなどで、専門家からのアドバイスを受けることも有効です。
健康診断で異常なしでも注意が必要なケース
健康診断の結果が異常なし」「正常」と判定されても、完全に安心はできない場合があります。特に、自覚症状がない初期の糖尿病や、健康診断では見逃されやすい「隠れ糖尿病」の存在を知っておくことが大切です。
隠れ糖尿病とは?
「隠れ糖尿病」とは、健康診断で一般的に測定される空腹時血糖値やHbA1cは正常範囲内であるにもかかわらず、実際には糖尿病である、あるいは糖尿病予備群である状態を指す俗称です。特に、食後にだけ血糖値が大きく上昇するタイプが多く、これを「食後高血糖」と呼びます。
なぜ、健康診断で見逃されるのでしょうか?一般的な健康診断では、空腹時血糖値やHbA1cが主な指標となります。空腹時血糖値は絶食後の状態を見るため、食後高血糖があっても空腹時は正常な場合があります。HbA1cも過去1〜2ヶ月の平均値なので、食後高血糖があっても、空腹時の血糖値が低めであれば、平均すると正常範囲内になってしまうことがあります。
隠れ糖尿病は、食後に高血糖状態が続くことで、血管に負担をかけ、将来的に糖尿病合併症(神経障害、網膜症、腎症など)や心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)のリスクを高めることがわかっています。健康診断で異常がなくても、以下のような方は隠れ糖尿病の可能性があります。
- 家族に糖尿病の方がいる
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)である
- 運動不足である
- 早食いやドカ食いの習慣がある
- 妊娠糖尿病になったことがある(女性の場合)
- 健康診断で境界型と指摘されたことがある
これらのリスク因子に心当たりがある方は、健康診断で異常がなくても、一度医療機関で詳しい検査を受けることを検討する価値があります。
糖尿病になりかけのサイン(初期症状)
糖尿病は、残念ながら初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。血糖値がかなり高くなって初めて症状が現れることが一般的です。しかし、血糖値が高めになり始めている「なりかけ」の段階でも、注意深く観察すると、些細な変化に気づくことがあります。
糖尿病になりかけ、あるいは初期の段階で現れる可能性のあるサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 疲れやすさ、倦怠感: 血糖値が高い状態が続くと、細胞がエネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できなくなり、体がだるく感じたり、疲れやすくなったりします。
- 空腹感が増す: 食事から摂ったブドウ糖がエネルギーとして利用されにくいため、体がエネルギー不足を感じて、頻繁に空腹を感じることがあります。
- 体重減少(意図しない): 血糖値が高すぎると、体がエネルギーとして利用できないブドウ糖を尿と一緒に体外に排出しようとします。これにより、食べても痩せていくという現象が起こることがあります。
- 喉の渇き(口渇)、水分をよく摂る(多飲): 血糖値が高いと、血液の浸透圧が高まり、体が水分を要求するようになります。そのため、異常に喉が渇き、水分を頻繁に摂るようになります。
- 尿の量が増える(多尿)、尿の回数が増える: 血糖値が高くなると、余分なブドウ糖を尿と一緒に排出しようとするため、尿の量が増え、トイレに行く回数も増えます。特に夜間のトイレ回数が増えることがあります。
- 手足のしびれ、ピリピリ感: 高血糖が続くと、末梢神経が傷つき始め、手足の指先などにしびれやピリピリした感覚が現れることがあります(糖尿病性神経障害の初期)。
- 目がかすむ: 血糖値の変動によって、目のピントを合わせる機能が一時的に低下し、物がかすんで見えたり、視力が不安定になったりすることがあります。
- 傷が治りにくい: 高血糖は免疫機能を低下させ、血行も悪くするため、傷や感染症が治りにくくなることがあります。
- 皮膚のかゆみ、乾燥: 高血糖による血行不良や神経障害が原因で、皮膚がかゆくなったり、乾燥しやすくなったりします。
これらの症状は、他の病気でも起こり得ますが、複数当てはまる場合や、以前はなかった症状が現れた場合は、血糖値が高いサインかもしれません。
症状がある場合の受診の目安
健康診断で異常を指摘された場合はもちろんですが、たとえ健康診断で「異常なし」と判定されていても、上記のような気になる症状が現れた場合は、迷わず医療機関を受診することをおすすめします。
特に、喉の渇き、多飲、多尿、体重減少といった症状がはっきり出てきた場合は、血糖値がかなり高くなっている可能性があり、速やかな受診が必要です。これらの症状を放置すると、糖尿病ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群といった危険な状態に陥る可能性があります。
症状がない場合でも、健康診断で血糖値やHbA1cが境界型の範囲だった方や、隠れ糖尿病のリスクが高い方は、一度医療機関で詳しい検査や相談をしてみるのが良いでしょう。早期に自分の状態を把握し、適切な対策を始めることが、将来の健康を守る上で何よりも大切です。
糖尿病が疑われる場合の次のステップ
健康診断の結果、あるいは自覚症状から糖尿病が疑われる場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。放置せずに、適切な次のステップを踏むことが重要です。
専門医(糖尿病内科)への受診
健康診断で糖尿病型や境界型と判定された場合、または自覚症状があり糖尿病が疑われる場合は、かかりつけ医やかかりつけの病院に相談するか、可能であれば糖尿病専門医(糖尿病内科)がいる医療機関を受診することをおすすめします。
なぜ専門医が良いのでしょうか?
- 正確な診断: 糖尿病の診断基準に基づき、必要な精密検査(後述の75gOGTTなど)を適切に行い、正確な診断を下すことができます。
- 病状の評価: 糖尿病のタイプ(1型か2型かなど)や進行度、合併症の有無などを詳しく調べ、あなたの病状を正確に評価できます。
- 個別の治療計画: あなたの病状、年齢、合併症の有無、生活習慣などを考慮して、最適な治療計画(食事療法、運動療法、薬物療法など)を立てることができます。
- 合併症の管理: 糖尿病は全身の血管や神経に影響を及ぼすため、眼科医、腎臓専門医、神経内科医など、他の専門医との連携が必要になる場合があります。糖尿病専門医は、このような多分野にわたる合併症の管理や連携を適切に行えます。
- 最新の情報提供: 糖尿病の治療法や管理に関する最新の情報を持ち、質の高い医療を提供できます。
もちろん、まずはかかりつけ医に相談し、専門医への紹介を受ける形でも構いません。大切なのは、「糖尿病かもしれない」という疑いを放置しないことです。
より詳しい検査(75gOGTTなど)
健康診断で異常を指摘されたり、隠れ糖尿病が疑われたりする場合、医療機関ではさらに詳しい検査を行います。特に重要な検査の一つに、75g経口ブドウ糖負荷試験(75g Oral Glucose Tolerance Test: 75gOGTT)があります。
75gOGTTは、空腹時に75gのブドウ糖が入った甘い飲み物を飲み、その後30分、1時間、2時間後の血糖値を測定する検査です。この検査によって、体がブドウ糖をどのように処理しているか、特に食後の血糖値の変動パターンを詳細に調べることができます。
- 隠れ糖尿病の発見: 空腹時血糖値は正常でも、ブドウ糖負荷後1時間値や2時間値が高くなる「食後高血糖」を検出するのに最も有効な検査です。
- 境界型糖尿病の分類: 境界型糖尿病の中でも、空腹時血糖値が高いタイプ(空腹時血糖異常 impaired fasting glucose: IFG)と、食後血糖値が高いタイプ(耐糖能異常 impaired glucose tolerance: IGT)に分類することができます。OGTTはIGTの診断に不可欠です。
- 診断の確定: 前述の診断基準にもあるように、OGTTの結果は糖尿病診断の重要な根拠となります。
その他にも、以下のような検査を組み合わせて行うことがあります。
- GAD抗体、IA-2抗体、インスリン自己抗体などの自己抗体検査: 1型糖尿病が疑われる場合に行われます。
- C-ペプチド測定: 膵臓からのインスリン分泌能力を評価します。
- 尿中アルブミン検査: 糖尿病性腎症の早期発見のために行われます。
- 眼底検査: 糖尿病性網膜症の有無を調べます。
- 神経伝導速度検査や振動覚検査: 糖尿病性神経障害の有無を調べます。
これらの詳しい検査によって、あなたの糖尿病の状態を正確に把握し、適切な治療方針を立てることができます。
検査費用や検査キットについて
医療機関で糖尿病の検査を受ける場合、健康保険が適用されます。初診料や再診料、血液検査、尿検査、75gOGTTなどの費用がかかりますが、自己負担割合(通常3割)に応じて支払うことになります。具体的な金額は、検査項目や医療機関によって異なりますが、極端に高額になることは少なく、数千円程度で済む場合が多いです。
また、最近では自宅で血糖値やHbA1cを測定できる市販の検査キットも販売されています。これらは、手軽に検査できるという利点がありますが、いくつか注意が必要です。
- 精度: 市販の検査キットは、医療機関で使用される検査機器に比べて精度が劣る場合があります。
- 診断はできない: あくまで「目安」を知るためのものであり、これらのキットの結果だけで糖尿病の診断はできません。異常値が出た場合は、必ず医療機関で精密検査を受ける必要があります。
- HbA1cキットの限界: 特にHbA1cを自宅で測定するキットは、採血方法や測定環境によって結果がばらつく可能性があり、医療機関での測定値と一致しないこともあります。
したがって、健康診断や医療機関での正確な検査を受けることが、糖尿病の早期発見・診断のためには最も推奨されます。市販の検査キットは、健康意識を高めるためのツールとして補助的に利用することを検討しても良いでしょう。
まとめ
「糖尿病 健康診断」というテーマで見てきましたが、健康診断は糖尿病を早期に発見するための非常に重要な機会です。空腹時血糖値、随時血糖値、HbA1c、尿糖といった項目は、あなたの血糖状態を知るための貴重な手がかりとなります。
健康診断で異常を指摘された場合は、それは「糖尿病の疑いがある」という体からの大切なサインです。決して放置せず、速やかに医療機関(特に糖尿病内科)を受診し、精密検査を受けてください。早期に発見し、適切な治療や生活習慣の改善を始めることができれば、糖尿病の進行や合併症の発症を効果的に抑えることができます。
また、健康診断の結果が「異常なし」や「正常」であったとしても、家族歴や肥満といったリスク因子がある方、あるいは食後高血糖の可能性がある「隠れ糖尿病」が気になる方は、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。自覚症状がないからこそ、定期的なチェックやリスクの評価が大切になります。
糖尿病は、適切な管理を行えば、健康な人と変わらない生活を送ることが十分に可能な病気です。健康診断をきっかけに、ご自身の血糖値に関心を持ち、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、健康的な生活を目指しましょう。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的として作成されており、病気の診断、治療、予防に関する医学的アドバイスやサービスの提供を目的とするものではありません。ご自身の健康状態についてご不安な点がある場合は、必ず医師や薬剤師等の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて読者が行った判断や行動によって生じた一切の結果について、筆者および公開者は責任を負いません。