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糖尿病インスリン注射のすべて | 種類・正しい打ち方・副作用・最新情報

[2025.06.29]

糖尿病と診断され、医師から「注射」という選択肢を提示されたとき、多くの方が驚きや不安を感じるかもしれません。「なぜ飲み薬ではダメなのか」「注射は痛いのでは?」「一度始めたら一生やめられないのだろうか」といった疑問が次々と浮かんでくることでしょう。

しかし、糖尿病の注射(インスリン治療)は、決して特別な治療法ではありません。現在の血糖値を良好にコントロールし、将来起こりうる合併症を防ぐための、非常に有効で重要な治療手段の一つです。

この記事では、糖尿病注射がどのような場合に必要になるのか、その種類や効果、副作用、そして多くの方が抱える疑問について、専門家の監修のもと、分かりやすく解説していきます。正しい知識を得ることで、前向きに治療と向き合う一助となれば幸いです。

糖尿病注射(インスリン)が必要な場合:どのような状況?

糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法ですが、それだけでは血糖コントロールが不十分な場合に薬物療法が始まります。薬物療法には経口薬(飲み薬)と注射薬(インスリンやGLP-1受容体作動薬など)がありますが、特にインスリン注射が必要となるのは、体内でインスリンを十分に作れなくなった場合です。

具体的には、以下のような状況でインスリン注射が検討されます。

  • 1型糖尿病と診断された場合
    1型糖尿病は、自己免疫などによりインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど、あるいは全く分泌されなくなる病気です。そのため、生命を維持するために体外からインスリンを補充する注射治療が不可欠となります。
  • 2型糖尿病が進行した場合
    生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病でも、長期間にわたって高血糖状態が続くと、インスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまい(膵β細胞疲弊)、必要な量のインスリンを分泌できなくなります。このような場合、飲み薬だけでは効果が不十分となり、インスリン注射が必要になります。
  • 著しい高血糖が認められる場合(高血糖毒性)
    血糖値が極めて高い状態が続くと、その高血糖自体が膵臓のインスリン分泌能力をさらに低下させる「高血糖毒性」という悪循環に陥ります。この状態を速やかに改善するために、一時的にインスリン注射を用いて血糖値を下げ、膵臓を休ませることがあります。
  • 妊娠中(妊娠糖尿病など)
    妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなります。飲み薬は胎児への影響が懸念されるため、血糖コントロールが必要な場合はインスリン注射が第一選択となります。
  • シックデイ(病気の日)
    風邪や胃腸炎など、糖尿病以外の病気にかかった(シックデイ)際には、体へのストレスから血糖値が乱れやすくなります。普段は飲み薬でコントロールできていても、一時的にインスリン注射が必要になることがあります。

血糖値がいくつなら注射が必要?目安を解説

「血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)がいくつになったら注射が始まるのか」という明確な基準は、実は一律には決まっていません。治療方針は、これらの数値だけでなく、患者さん自身の年齢、合併症の有無、ライフスタイル、低血糖のリスクなどを総合的に考慮して、医師が個別に判断します。

ただし、一般的に以下のような状況ではインスリン導入が強く推奨されることがあります。

  • HbA1cが非常に高い場合(例:8.5%や9.0%以上)
  • 空腹時血糖値や食後血糖値が著しく高い状態が続く場合
  • 急激な体重減少など、インスリン作用の不足が疑われる症状がある場合

インスリン注射は「治療の最終手段」ではなく、「膵臓を保護し、合併症を防ぐための積極的な治療」と捉えることが大切です。早期から適切にインスリンを用いることで、膵臓の機能を温存し、長期的に良好な健康状態を維持できる可能性が高まります。

経口薬とインスリン注射、どちらが良い?

「飲み薬と注射、どちらが良い・悪い」という優劣はありません。それぞれに役割と特徴があり、患者さんの病態に合わせて最適なものが選択されます。

治療法 特徴 メリット デメリット
経口薬 膵臓に働きかけてインスリン分泌を促す、インスリンの効きを良くする、糖の吸収を穏やかにするなど、多様な作用機序を持つ。 ・手軽に服用できる
・注射への抵抗感がない
・効果に限界がある場合がある
・種類によっては低血糖や体重増加のリスクがある
インスリン注射 不足しているインスリンを直接体内に補充する。 ・最も確実で強力な血糖降下作用を持つ
・どんな病態の糖尿病にも対応可能
・自己注射の手技習得が必要
・低血糖のリスク管理が重要
・外出時に持ち運びが必要な場合がある

治療の初期段階では経口薬から開始し、進行度合いに応じて薬の種類や量を調整します。それでもコントロールが難しい場合にインスリン注射へ移行したり、経口薬とインスリン注射を併用したりすることもあります。どちらの治療法も、目標は「血糖値を良好にコントロールし、健康な人と変わらない生活を送ること」であり、そのための手段です。

糖尿病注射の種類と正しい使用タイミング

インスリン注射と一言でいっても、その効果が現れる速さや持続時間によっていくつかの種類に分かれています。これらを単独で、あるいは組み合わせて使用することで、健康な人のインスリン分泌パターンに近づけ、1日を通した血糖コントロールを目指します。

いつ注射する?速効型・超速効型・持効型など

インスリン製剤は、主に以下のタイプに分類されます。注射するタイミングは種類によって異なり、医師の指示を厳守することが非常に重要です。

種類 作用 主な注射タイミング 主な役割
超速効型 注射後10~20分で効き始め、3~5時間作用する。 毎食直前 食後の血糖値の急上昇を抑える(追加分泌の補充)
速効型 注射後30分~1時間で効き始め、5~8時間作用する。 毎食30分前 食後の血糖値の急上昇を抑える(追加分泌の補充)
中間型 注射後1~3時間で効き始め、約24時間作用する。 1日1~2回(朝食前や就寝前など) 1日を通して血糖値をある程度安定させる(基礎分泌の補充)
持効型溶解 注射後1~2時間で効き始め、ピークがなく約24時間ほぼ一定に作用する。 1日1回(毎日決まった時間) 1日を通して血糖値を安定させる(基礎分泌の補充)
混合型 超速効型/速効型と中間型を、あらかじめ決まった割合で混合したもの。 1日1~2回(主に朝・夕の食前) 基礎分泌と追加分泌を同時に補充する

どの種類のインスリンを、いつ、どれくらいの量で注射するかは、患者さん一人ひとりの血糖値の動きやライフスタイルに合わせて処方されます。自己判断で時間や量を変更することは、高血糖や危険な低血糖を招く原因となるため、絶対におやめください。

糖尿病注射による副作用と対処法

インスリン注射で最も注意すべき副作用は「低血糖」です。しかし、正しい知識を持ち、適切に対処すれば過度に恐れる必要はありません。

主な副作用(低血糖など)と症状

低血糖
インスリンが効きすぎて血糖値が下がりすぎる状態です(一般的に70mg/dL以下)。原因としては、インスリンの量が多すぎた、食事の量が少なかった、食事の時間が遅れた、空腹時に激しい運動をした、などが考えられます。

<低血糖の主な症状>

  • 初期症状: 強い空腹感、冷や汗、動悸、手足の震え、不安感
  • 進行した場合: 目のかすみ、眠気、集中力の低下、頭痛
  • 重症の場合: 意識が朦朧とする、痙攣(けいれん)、昏睡

<低血糖の対処法>
症状を感じたら、すぐにブドウ糖(5~10g)またはブドウ糖を含むジュース(150~200ml程度)、砂糖(10~20g)などを摂取します。 15分ほど安静にし、症状が改善しない場合は再度同じ量を摂取してください。
α-グルコシダーゼ阻害薬という種類の経口薬を併用している場合は、砂糖では効果が不十分なため、必ずブドウ糖を携帯・摂取するようにしましょう。

万が一に備え、外出時には必ずブドウ糖や補食、そして「糖尿病患者用IDカード」を携帯することが大切です。

その他の副作用

  • 体重増加: インスリンは体内でブドウ糖の利用を促進するホルモンです。血糖コントロールが改善すると、今まで尿中に排泄されていた糖が体内に留まるため、体重が増加することがあります。食事療法や運動療法を並行して行うことが重要です。
  • 注射部位の反応: 注射した部位が赤くなったり、かゆくなったり、硬くなったりすることがあります。

長期注射する場合の副作用は?

インスリン注射を長期間続けることによって、内臓などに重大な副作用が起こることはありません。むしろ、適切に注射を続けることで高血糖による合併症(網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞など)を予防できるメリットの方がはるかに大きいと言えます。

ただし、注意したいのが「リポハイパートロフィー(脂肪織硬結)」です。これは、毎回同じ場所に注射を打ち続けることで、その部分の皮下脂肪が硬い「こぶ」のようになってしまう状態です。

この硬い部分に注射をしてもインスリンの吸収が悪くなり、血糖コントロールが不安定になる原因となります。これを防ぐためには、毎回注射する場所を2~3cmずつずらすことが非常に重要です。腹部、太もも、腕、お尻など、注射できる部位をローテーションしながら打ちましょう。

糖尿病注射に関するよくある疑問

Q. 注射は一生続けなければならない?

A. 必ずしも「一生」とは限りません。

  • 1型糖尿病の場合: 現状では、体内でインスリンを作ることができないため、生涯にわたるインスリン補充が必要です。
  • 2型糖尿病の場合: インスリン注射を始めた後でも、食事療法や運動療法をしっかり行い、体重が減少するなどしてインスリンの効きが良くなった(インスリン抵抗性が改善した)場合や、疲弊していた膵臓の機能が回復した場合には、注射の量を減らしたり、飲み薬だけの治療に戻したり、場合によっては薬物療法そのものが不要になったりするケースもあります。

ただし、これは自己判断で行うものではありません。血糖値が安定してきたからといって勝手に注射をやめてしまうと、再び高血糖状態に陥り危険です。治療方針の変更は、必ず主治医と相談の上で行いましょう。

Q. 注射器(インスリン注射針)の種類と選び方

A. 現在は簡便で痛みの少ないペン型の注射器が主流です。

インスリンの注射器は、カートリッジ式の製剤をセットして使うタイプと、製剤が一体となった使い捨てタイプ(ディスポーザブル)があります。いずれもダイヤルを回して単位を合わせ、ボタンを押すだけで簡単に注射できる「ペン型」が一般的です。

注射針も非常に細く短いものが開発されており、採血の時のような強い痛みを感じることはほとんどありません。針の太さ(G:ゲージ)や長さは複数あり、患者さんの体型や痛みの感じ方に合わせて医師や薬剤師が適切なものを選択します。

【重要】注射針は毎回必ず新しいものに交換してください。
針を再利用すると、先端が曲がったりコーティングが剥がれたりして痛みが強くなるだけでなく、感染症のリスクや、針が詰まって正しい量のインスリンが注入できなくなる危険性があります。

Q. インスリン抵抗性と注射の関係について

A. インスリン抵抗性が高いと、より多くのインスリンが必要になります。

「インスリン抵抗性」とは、肥満や運動不足などが原因で、分泌されたインスリンが効きにくくなっている状態を指します。主に2型糖尿病の大きな原因の一つです。

インスリン抵抗性が高い状態では、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが必要になります。そのため、インスリン注射を行っている場合でも、注射の量が多くなりがちです。

逆に言えば、食事療法や運動療法によって体重を減らし、インスリン抵抗性を改善することができれば、インスリンの効きが良くなり、注射の量を減らせる可能性があります。 インスリン注射を始めたからといって生活習慣の改善をやめるのではなく、むしろ両輪で治療を進めていくことが重要です。

糖尿病注射に関する専門家からのアドバイス

糖尿病治療におけるインスリン注射は、ネガティブなイメージを持たれがちですが、血糖値をコントロールし、網膜症や腎症、心筋梗塞といった深刻な合併症からご自身の体を守るための、非常に頼もしいパートナーです。

注射の手技は、入院または外来で医療スタッフが丁寧に指導しますので、どなたでも安全に行うことができます。痛みも少なく、現在の注射器は操作も簡単です。

大切なのは、治療を自己判断で中断・変更しないこと。そして、不安や疑問に思うことがあれば、どんな些細なことでも遠慮なく主治医や看護師、薬剤師に相談することです。医療者は、あなたが前向きに、そして安心して治療を続けられるよう、全力でサポートします。

インスリン注射を正しく理解し、治療の味方につけて、健康で豊かな毎日を送っていきましょう。


免責事項:
本記事は情報提供を目的とするものであり、医学的な診断や治療を代替するものではありません。糖尿病の治療に関しては、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。

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