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糖尿病の診断基準とは?症状・検査方法をわかりやすく解説

[2025.06.29]

糖尿病かもしれない、と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。 糖尿病は早期に発見し、適切に管理することで、将来起こりうる様々な合併症を防ぐことができる病気です。 しかし、「どうやって診断されるの?」「どんな検査をするの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、糖尿病がどのように診断されるのか、診断の基準となる数値、主な検査方法、そして健康診断の結果の見方について、分かりやすく解説します。 ご自身の健康状態を把握し、早期発見・早期治療につなげるために、ぜひ参考にしてください。

糖尿病の診断基準

糖尿病の診断は、主に血液検査によって行われます。 特に重要なのは、血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という2つの指標です。 これらの数値を組み合わせて総合的に判断し、糖尿病であるか、あるいは糖尿病予備群(境界型)であるかを診断します。

主な診断指標(HbA1cと血糖値)

糖尿病の診断において中心となるのが、血糖値とHbA1cです。

  • 血糖値: 血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示す値です。食事や運動などによって一時的に変動しやすい特徴があります。測定するタイミングによって、「空腹時血糖値」「随時血糖値」「食後血糖値」などがあります。
  • HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー): 赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質に、ブドウ糖が結合したものです。HbA1cは、過去1~2ヶ月間の平均的な血糖コントロール状態を反映します。血糖値のように一時的な変動に左右されにくいため、長期的な血糖状態の把握に非常に役立ちます。国際的な標準値としてNGSP値が用いられており、日本のほとんどの検査機関でこの値が使用されています。

これらの指標は、単独だけでなく組み合わせて評価することで、より正確な診断につながります。

診断が確定する基準値

日本糖尿病学会が定める糖尿病の診断基準は、これらの血糖値とHbA1cの数値に基づいています。 以下のいずれかに該当する場合、原則として糖尿病と診断されます。 ただし、1回の検査だけではなく、複数回の検査結果や、糖尿病に典型的な症状(多尿、多飲、体重減少など)があるかどうかを考慮して総合的に判断されます。

項目 基準値
空腹時血糖値 126mg/dL 以上
75gOGTT2時間値 200mg/dL 以上
随時血糖値 200mg/dL 以上
HbA1c (NGSP値) 6.5% 以上

診断基準の組み合わせ:

  • (1) 典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)がある場合:
    空腹時血糖値 126mg/dL 以上
    随時血糖値 200mg/dL 以上
    75gOGTT2時間値 200mg/dL 以上
    上記のいずれか一つに加え、HbA1c 6.5% 以上 で糖尿病と診断されます。
  • (2) 典型的な症状がない場合:
    1回目の検査で、空腹時血糖値 126mg/dL 以上、または 75gOGTT2時間値 200mg/dL 以上、または随時血糖値 200mg/dL 以上 のいずれか一つが基準値以上を示す。
    後日再検査を行い、
    空腹時血糖値 126mg/dL 以上
    75gOGTT2時間値 200mg/dL 以上
    随時血糖値 200mg/dL 以上
    HbA1c 6.5% 以上
    上記のいずれか一つが基準値以上であれば、糖尿病と診断されます。
    あるいは、1回目の検査で血糖値のいずれかが基準値以上、かつ HbA1c 6.5% 以上 であれば、1回の検査でも糖尿病と診断される場合があります。

このように、診断には複数の指標や再検査が必要となることがあります。 自己判断せず、必ず医師の診断を受けることが重要です。

境界型(糖尿病予備群)とは

診断基準を満たさないものの、正常型よりも血糖値が高い状態を「境界型」と呼びます。 これは、糖尿病の一歩手前の状態、あるいは糖尿病予備群とも言われます。

項目 基準値
空腹時血糖値 110 mg/dL 以上 126 mg/dL 未満
75gOGTT2時間値 140 mg/dL 以上 200 mg/dL 未満
HbA1c (NGSP値) 6.0% 以上 6.5% 未満

境界型の判定:

  • 空腹時血糖値が 110 mg/dL 以上 126 mg/dL 未満、かつ 75gOGTT2時間値が 140 mg/dL 未満
  • 空腹時血糖値が 110 mg/dL 未満、かつ 75gOGTT2時間値が 140 mg/dL 以上 200 mg/dL 未満
  • 空腹時血糖値が 110 mg/dL 以上 126 mg/dL 未満、かつ 75gOGTT2時間値が 140 mg/dL 以上 200 mg/dL 未満
  • HbA1cが 6.0% 以上 6.5% 未満 (ただし、血糖値が正常型の場合)

境界型の方は、将来的に糖尿病へ進行するリスクが高いだけでなく、既に動脈硬化が進行している可能性も指摘されています。 この段階で生活習慣を見直すことで、糖尿病の発症を予防したり遅らせたりすることが可能です。 境界型と判定された場合は、「まだ糖尿病ではないから大丈夫」と安心せず、医師や管理栄養士の指導のもと、食事や運動などの改善に取り組むことが非常に大切です。

糖尿病の主な検査方法

糖尿病の診断や管理には、様々な検査が行われます。 ここでは、主な検査方法について詳しく見ていきましょう。

血液検査(HbA1c、空腹時血糖値など)

糖尿病の診断に最も広く用いられるのが血液検査です。 採血によって、以下のような項目を測定します。

  • 空腹時血糖値: 10時間以上絶食した状態で測定した血糖値です。食後の血糖変動の影響を受けにくいため、正確な血糖状態を把握するのに重要です。診断基準の重要な要素となります。
  • 随時血糖値: 食事時間とは関係なく、随時測定した血糖値です。典型的な糖尿病症状がある場合の診断に用いられます。
  • HbA1c: 前述の通り、過去1~2ヶ月の血糖状態を反映します。日常的な血糖コントロールの指標として、診断後も定期的に測定されます。目標値は患者さんの年齢や合併症の有無によって異なりますが、一般的には7.0%未満を目指すことが多いです。
  • グリコアルブミン: 過去約2週間の平均血糖値を反映します。HbA1cよりも短い期間の血糖変動を把握したい場合や、貧血などでHbA1cが正確に測れない場合に用いられることがあります。
  • フルクトサミン: グリコアルブミンと同様に、過去1~2週間の平均血糖値を反映します。
  • インスリン分泌能: 血糖値を下げるホルモンであるインスリンが、膵臓からどれだけ分泌されているかを調べます。空腹時Cペプチド、負荷後Cペプチドなどの項目があり、糖尿病の病型分類(1型か2型かなど)や治療方針の決定に役立ちます。
  • 脂質検査: 糖尿病患者さんは脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセライド血症など)を合併しやすい傾向があります。動脈硬化予防のため、コレステロール(LDL-C, HDL-C)、トリグリセライド(中性脂肪)なども定期的に測定します。
  • 肝機能・腎機能検査: 糖尿病は肝臓や腎臓にも影響を与えることがあります。AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの肝機能項目や、クレアチニン、eGFRなどの腎機能項目も検査します。

尿検査

尿検査も糖尿病の診断・管理に重要な情報を提供します。

  • 尿糖: 血糖値が一定の値(腎臓の閾値、通常160~180mg/dL程度)を超えると、尿中に糖が排出されます。尿糖が陽性の場合は、血糖値が高い状態を示唆しますが、尿糖だけでは糖尿病の確定診断はできません。一時的な高血糖や腎臓の状態によっても左右されます。
  • 尿蛋白: 糖尿病の三大合併症の一つに糖尿病性腎症があります。腎症が進行すると、本来は尿に出ないはずのタンパク質が尿中に漏れ出てくるようになります。特に微量アルブミン尿は、早期の腎症を発見する重要な指標です。定期的な尿蛋白(特に微量アルブミン)のチェックは、合併症の早期発見・早期治療のために不可欠です。
  • 尿ケトン体: インスリン作用が極端に不足し、ブドウ糖をエネルギーとして利用できない場合に、脂肪を分解してケトン体が作られます。ケトン体が多量に生成されると、糖尿病性ケトアシドーシスという急性合併症を引き起こす危険があります。体調が悪い時や血糖値が著しく高い時に検査することがあります。

75gブドウ糖負荷試験(OGTT)

75gブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test; OGTT)は、食後の血糖値の上昇とインスリン分泌の状態を詳しく調べるための検査です。 特に、空腹時血糖値は正常でも、食後に血糖値が異常に高くなる「隠れ糖尿病」や、境界型を正確に診断するために非常に有用です。

検査の流れ:

  1. 検査前日の夜から絶食します(通常10時間以上)。水以外の飲食物は控えます。
  2. 当日の朝、空腹の状態で採血し、空腹時血糖値を測定します。
  3. ブドウ糖75gが含まれた甘い飲み物を飲みます。
  4. ブドウ糖液を飲んだ後、30分、60分、120分(2時間)後に採血し、それぞれの時点での血糖値を測定します。多くの場合は、同時にインスリンの分泌量(IRIやC-ペプチド)も測定します。
  5. 検査中は安静にした状態で過ごします。

診断基準(75gOGTT):

  • 正常型: 空腹時血糖値 110mg/dL 未満、かつ 2時間値 140mg/dL 未満
  • 境界型: 空腹時血糖値 110~126mg/dL 未満、かつ 2時間値 140mg/dL 未満
    または
    空腹時血糖値 110mg/dL 未満、かつ 2時間値 140~200mg/dL 未満
    または
    空腹時血糖値 110~126mg/dL 未満、かつ 2時間値 140~200mg/dL 未満
  • 糖尿病型: 空腹時血糖値 126mg/dL 以上
    または
    2時間値 200mg/dL 以上

OGTTによって、空腹時血糖値だけでは見逃される食後の高血糖(耐糖能異常)を検出できます。 この食後高血糖は、動脈硬化のリスクを高めることが知られており、早期に発見し介入することが重要です。

その他の検査(抗体検査など)

糖尿病にはいくつかの病型があり、診断や治療法が異なります。 特に1型糖尿病を疑う場合には、自己抗体を調べる検査が行われます。

自己抗体検査: 1型糖尿病は、自己免疫によって膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)が破壊されることで起こります。 この自己免疫反応の指標となるのが自己抗体です。 GAD抗体、IA-2抗体、Insulin抗体(IAA)、ZnT8抗体などがあり、これらの抗体が陽性である場合は、1型糖尿病である可能性が高まります。 2型糖尿病と診断されても、これらの抗体が陽性であれば「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」として分類されることもあります。

これらの検査は、糖尿病の病型を正確に診断し、適切な治療法を選択するために重要です。

健康診断だけでは不十分な場合も

多くの方が年に一度、職場の健康診断や地域の健康診断を受けているかと思います。 健康診断で血糖値やHbA1cを測定する項目が含まれていることも多いですが、残念ながら健康診断の結果が正常値だからといって、必ずしも糖尿病ではないと言い切れるわけではありません。

なぜ健康診断で見逃されることがあるのか

健康診断だけで糖尿病が見逃されてしまう可能性がある理由はいくつかあります。

  • 測定項目の限界: 健康診断で測定されるのは、空腹時血糖値とHbA1cのみである場合が多いです。特に空腹時血糖値は正常でも、食後に著しく血糖値が上昇する「隠れ糖尿病」(境界型の一部や糖尿病予備群)は見逃される可能性があります。OGTTのような詳細な検査を行わないと、食後高血糖は検出されにくいのです。
  • 随時血糖値の測定: 空腹時でないタイミングで採血する「随時血糖値」で糖尿病を疑う場合もありますが、健康診断では採血のタイミングがまちまちであるため、正確な診断には結びつきにくいことがあります。
  • 検査結果の一時的な変動: ストレスや体調不良、前日の食事内容などによって、一時的に血糖値が変動することがあります。たまたま検査日の血糖値が正常範囲内だったために、異常が見逃されてしまうこともあり得ます。
  • HbA1cの限界: HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映しますが、ごく最近の急激な血糖変動や、食後の高血糖を敏感に反映しにくい側面もあります。また、貧血などでHbA1cが低めに出てしまうケースもあります。

追加検査の必要性

健康診断で「正常」と判定されたとしても、以下のような場合は追加検査を検討する必要があります。

  • 健康診断の結果が境界領域だった場合: 空腹時血糖値が少し高め(100〜109mg/dL)、HbA1cが少し高め(5.6%~6.4%)など、診断基準には満たないが正常値よりも高めの数値が出た場合。これは糖尿病予備群(境界型)の可能性があり、放置すると糖尿病に進行するリスクが高いため、詳しい検査が必要です。
  • 典型的な糖尿病の症状がある場合: 多飲、多尿、体重減少、倦怠感、疲れやすさなどの症状があるにも関わらず、健康診断の結果が正常だった場合。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師に相談してください。
  • 糖尿病の危険因子を多く持っている場合: 家族に糖尿病の方がいる、肥満、高血圧、脂質異常症、妊娠糖尿病の経験があるなど、糖尿病になりやすい体質や生活習慣の因子を多く持っている場合。定期的な健康診断だけでなく、より踏み込んだ検査や専門医への相談を検討しましょう。
  • 以前の健康診断から期間が空いている場合: 糖尿病はゆっくりと進行することが多い病気です。数年ごとにしか健康診断を受けていない場合、その間に病状が進行している可能性も考えられます。

健康診断は糖尿病スクリーニングの一環として非常に重要ですが、これだけで安心せず、ご自身の体調やリスク因子を考慮して、必要に応じて医療機関での精密検査を受けることが大切です。

自宅でできる糖尿病チェック・検査キット

医療機関での検査が最も正確な診断につながりますが、日頃から自身の体の状態に意識を向けたり、手軽なチェック方法を活用したりすることも、早期発見のきっかけになります。

セルフチェックリスト

以下の項目に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。 複数当てはまる場合は、糖尿病の可能性やリスクが高いかもしれません。

  • 家族に糖尿病の人がいる
  • 肥満気味である(特に内臓脂肪型肥満)
  • 最近、急に体重が減った(食事制限をしていないのに)
  • のどが異常に渇きやすい
  • トイレに行く回数が多い、尿の量が多い
  • 体がだるい、疲れやすい
  • 食後、非常に眠くなる
  • 目がかすむ、視力が落ちた気がする
  • 手足がしびれる、感覚が鈍い
  • 足がむくむ、冷たい
  • 傷やができものが治りにくい
  • 歯周病になりやすい、歯ぐきから血が出る
  • 健康診断で血糖値やHbA1cが高めだったことがある
  • 高血圧や脂質異常症がある
  • 喫煙習慣がある
  • 運動不足である
  • 日常的にストレスを感じている
  • 妊娠中に糖尿病(妊娠糖尿病)になったことがある

これらのチェックリストはあくまで参考です。 当てはまる項目があっても、必ずしも糖尿病とは限りません。 しかし、早期発見のきっかけとなる可能性があるため、気になる点があれば医療機関で相談することをお勧めします。

検査キットの活用と注意点

最近では、自宅で採血または採尿し、検査機関に郵送して血糖値やHbA1cなどを調べる検査キットも利用できるようになりました。

検査キットの利点:

  • 医療機関に行く時間がない場合でも手軽に検査できる。
  • 匿名で検査できる場合がある。
  • 健康診断よりも詳しい項目(例:OGTTに準じた食後血糖値の変化など)を調べられるキットもある。

検査キットの注意点:

  • 確定診断はできない: 検査キットの結果は、あくまで自身の状態を把握するための一つの目安です。これらの結果だけで糖尿病の確定診断や治療方針の決定はできません。
  • 自己判断は危険: 結果が悪かった場合でも、自己判断で対策したり放置したりせず、必ずその結果を持って医療機関を受診し、医師の診断を仰いでください。
  • 検査方法の正確性: キットによって採血や採尿の方法、測定精度に違いがある可能性があります。信頼できるメーカーのキットを選びましょう。
  • タイミングの影響: 検査キットの種類によっては、食事や運動のタイミングによって結果が大きく左右されることがあります。キットの説明書をよく読み、正確なタイミングで検査を行う必要があります。

検査キットは、医療機関受診のハードルが高い方や、日頃からご自身の状態をチェックしたい方にとって有用なツールとなり得ます。 しかし、その限界を理解し、最終的な診断と治療は医療機関で行うことが大原則です。

糖尿病の初期症状・なりかけのサイン

糖尿病は、血糖値がかなり高くなるまで自覚症状が現れにくい病気です。「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれるゆえんです。 しかし、注意深く観察すると、体の変化に気づくことができる場合があります。

気づきにくい初期症状

糖尿病が軽度~中等度の段階では、以下のような気づきにくい初期症状が現れることがあります。

  • 軽い倦怠感、疲れやすさ: 体のエネルギー源であるブドウ糖がうまく細胞に取り込まれないため、エネルギー不足となり、疲れやすさを感じることがあります。
  • 集中力の低下: 脳へのブドウ糖供給が不安定になることで、集中力が続かないことがあります。
  • 手足の冷え、しびれ: 血糖コントロール不良が続くと、神経障害の初期症状として手足の感覚異常が現れることがあります。軽いしびれやピリピリ感として感じられることがあります。
  • 傷ができやすい、治りにくい: 高血糖状態は免疫機能を低下させ、感染しやすくなったり、傷の治りが遅くなったりすることがあります。
  • 皮膚のかゆみ: 高血糖によって皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみを伴うことがあります。

これらの症状は、糖尿病以外の原因でも起こりうるため、「年のせいかな」「疲れているだけかな」と見過ごされがちです。 しかし、複数の症状が続いたり、以前は感じなかった変化があった場合は、注意が必要です。

要注意のサイン

血糖値がかなり高くなると、よりはっきりとした症状が現れるようになります。 これらのサインに気づいたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。

  • 多尿: 血糖値が高い状態が続くと、体は余分なブドウ糖を尿と一緒に排出しようとします。そのため、尿の量が増え、トイレに行く回数が多くなります。夜間に何度もトイレに起きるようになることもあります。
  • 多飲: 尿がたくさん出るため、体内の水分が失われ、強い喉の渇きを感じるようになります。水分をたくさん摂取するようになります(ペットボトル症候群と呼ばれるケースも含む)。
  • 体重減少: 十分なエネルギー源であるブドウ糖が細胞に取り込めず、代わりに筋肉や脂肪が分解されることで、体重が減少することがあります。食事量が変わらない、あるいは増えているのに痩せる場合は特に注意が必要です。
  • 倦怠感が強い: エネルギー不足がさらに進むと、強い疲労感や全身の倦怠感を感じるようになります。
  • 目がかすむ、視力低下: 血糖値の急激な変動によって、目のピント調整機能が一時的に障害されたり、糖尿病網膜症が進行したりすることで、目がかすんだり見えにくくなったりします。
  • 手足のしびれが強い、感覚が麻痺する: 神経障害が進行し、しびれが強くなったり、痛みを感じにくくなったりします。
  • こむら返り: 足の筋肉がけいれんしやすくなることがあります。
  • 性機能障害: 男性の場合、勃起不全(ED)が見られることがあります。

これらの症状は、糖尿病がかなり進行しているサインである可能性があります。 これらの症状に気づいたら、放置せずに速やかに医療機関(内科、糖尿病内科など)を受診し、検査を受けてください。 早期に対応することで、より深刻な合併症を防ぐことにつながります。

糖尿病診断後の流れ

もし糖尿病と診断された場合、「これからどうなるんだろう…」と不安になるかもしれません。 しかし、糖尿病は適切に管理すれば、健康な人と変わらない生活を送ることができる病気です。 診断後の一般的な流れと、最初にするべきことについて説明します。

診断されたらまずすること

  1. 冷静に病気について理解する: まずは診断結果を受け止め、糖尿病とはどのような病気なのか、なぜ治療が必要なのかを医師からしっかりと説明を受けましょう。疑問に思ったことは遠慮なく質問することが大切です。
  2. 今後の検査や治療計画を確認する: 現在の体の状態(血糖値、HbA1c、合併症の有無など)に基づき、今後の検査計画や基本的な治療方針について医師と話し合います。
  3. 生活習慣の見直しを始める: 糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法です。診断を機に、食生活や運動習慣を見直す具体的な目標を設定し、できることから始めてみましょう。医師や管理栄養士のサポートを受けることが重要です。
  4. 信頼できる医療機関と医師を見つける: 糖尿病は一生付き合っていく可能性のある病気です。信頼できる医師を見つけ、定期的に受診し、二人三脚で治療を進めていくことが大切です。糖尿病専門医がいる医療機関を選ぶと、より専門的なアドバイスや治療を受けられます。
  5. 家族や周囲に相談する: 必要に応じて、家族に病状を説明し、理解と協力を求めることも有効です。食事や運動のサポート、精神的な支えが得られることがあります。

治療の基本方針

糖尿病の治療の目標は、血糖値を良好にコントロールし、糖尿病合併症の発症や進行を防ぎ、健康な人と変わらない生活の質(QOL)を維持し、健康寿命を全うすることです。 治療は主に以下の3本柱で行われます。

  • 食事療法: 摂取するエネルギー量や栄養バランスを適切に管理することで、血糖値の上昇を抑えます。管理栄養士から個別の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けることが推奨されます。
  • 運動療法: 適度な運動は、血糖値を下げる効果やインスリンの働きを良くする効果があります。ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、無理のない範囲で継続することが重要です。
  • 薬物療法: 食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールが不十分な場合に、飲み薬(血糖降下薬)や注射薬(インスリン注射、GLP-1受容体作動薬など)が用いられます。薬の種類や使い方は、糖尿病の病型、重症度、合併症の有無などを考慮して医師が判断します。

これらの治療法は、患者さんの年齢、体の状態、合併症の有無、生活習慣などを総合的に考慮して、個別に計画されます。

専門医への受診を推奨

糖尿病と診断されたら、できるだけ糖尿病を専門とする医師(糖尿病専門医)がいる医療機関を受診することをお勧めします。

専門医を受診するメリット:

  • 正確な診断と病型分類: 糖尿病には1型、2型、その他の特定の原因によるものなど様々なタイプがあり、それぞれ治療法が異なります。専門医は正確な病型診断を行い、最適な治療方針を立てることができます。
  • きめ細やかな血糖コントロール: 血糖値の目標設定や、薬物療法が必要な場合の薬剤選択・調整は、専門的な知識と経験が必要です。
  • 合併症の評価と管理: 糖尿病合併症(神経障害、網膜症、腎症、心血管疾患など)の早期発見のための検査や、それぞれの合併症に応じた専門的な治療・管理を受けることができます。眼科医、腎臓内科医、循環器内科医などの他の専門医との連携もスムーズに行われます。
  • 最新の治療情報の提供: 糖尿病治療は日々進歩しています。専門医は最新の治療法や薬剤に関する情報を持っており、患者さんにとって最善の選択肢を提案できます。
  • 療養指導: 糖尿病療養指導士(看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士など)と連携し、食事、運動、薬の使い方、シックデイの対応など、糖尿病との付き合い方に関する実践的な指導を受けることができます。

かかりつけ医の先生から専門医を紹介してもらう、日本糖尿病学会のウェブサイトで専門医や教育施設を検索するなどして、積極的に専門的な医療を受けましょう。

糖尿病の早期診断が重要な理由

「症状がないから大丈夫」「まだ軽いだろう」と糖尿病の診断や治療を先延ばしにすることは、非常に危険です。 なぜなら、糖尿病の一番の問題は、気づかないうちに進行し、様々な合併症を引き起こすことにあるからです。

合併症を防ぐために

高血糖の状態が長く続くと、全身の血管や神経がゆっくりと障害されていきます。 これが糖尿病の慢性合併症です。 特に怖いのは、症状がないまま進行し、ある日突然重篤な状態を引き起こすことです。

糖尿病の主な合併症:

  • 糖尿病性神経障害: 手足のしびれ、痛み、感覚麻痺、立ちくらみ、便秘、下痢、勃起不全など。末梢神経だけでなく、自律神経も障害されることがあります。重症化すると、足の潰瘍や壊疽(えそ)につながり、最悪の場合、切断に至ることもあります。
  • 糖尿病性網膜症: 目の網膜の血管が障害され、出血やむくみを起こします。初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると視力低下をきたし、最終的には失明に至ることもあります。糖尿病患者さんの失明原因の上位を占めます。
  • 糖尿病性腎症: 腎臓の機能が低下し、体内の老廃物をうまく排出できなくなります。初期には自覚症状がなく、尿に微量のタンパク質が出始めることで気づかれます。進行するとむくみや貧血が現れ、最終的には透析療法が必要になることがあります。日本の透析導入原因の第1位です。
  • 動脈硬化: 糖尿病があると、心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患のリスクが数倍に高まります。これらは生命に関わる重篤な病気であり、たとえ血糖値がそれほど高くない「境界型」の段階でも、既に動脈硬化が進行していることがあります。
  • その他の合併症: 歯周病、認知症、骨粗しょう症、感染症にかかりやすくなる、癌のリスク上昇なども関連が指摘されています。

これらの合併症は、高血糖の状態が長く続くほど発症・進行のリスクが高まります。 しかし、糖尿病と診断された早い段階から適切な血糖コントロールを開始し、血圧や脂質などの他のリスク因子も同時に管理することで、合併症の発症を予防したり、進行を遅らせたりすることが可能です。

早期診断、そして診断後の早期からの適切な管理こそが、健康な生活を長く維持し、合併症による体の不自由や生命の危険を避けるための最良の方法なのです。

まとめ

糖尿病の診断は、主に血液検査で測定される血糖値(空腹時血糖値、随時血糖値、75gOGTT2時間値)とHbA1cの数値に基づいて行われます。 これらの数値が日本糖尿病学会の定める基準値を超えている場合に、医師によって総合的に判断され診断が確定します。 診断基準に満たないものの、正常型よりは高い「境界型(糖尿病予備群)」も、将来の糖尿病発症リスクが高いため注意が必要です。

診断のための主な検査には、HbA1cや空腹時血糖値を調べる血液検査、尿糖や尿蛋白を調べる尿検査、そして隠れ糖尿病の発見に重要な75gブドウ糖負荷試験(OGTT)などがあります。 健康診断だけでは見逃されてしまう可能性もあるため、健康診断の結果が境界域だった場合や、多飲多尿、体重減少などの気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、詳しい検査を受けることが大切です。

手足のしびれや疲れやすさといった気づきにくい初期症状から、多飲多尿などのより顕著なサインまで、体の変化に日頃から意識を向け、セルフチェックや検査キットなども活用しつつ、少しでも不安があれば医療機関に相談しましょう。

もし糖尿病と診断されても、落ち込む必要はありません。 診断されたら、まずは病気について正しく理解し、医師とともに適切な治療計画を立てることが重要です。 治療の基本は食事療法と運動療法ですが、必要に応じて薬物療法も行われます。 特に糖尿病専門医のいる医療機関での継続的な管理は、良好な血糖コントロールを維持し、糖尿病性神経障害、網膜症、腎症といった重篤な合併症の発症・進行を防ぐために非常に有効です。

糖尿病は早期に診断し、適切な管理を開始することで、健康な人と変わらない生活を送り、合併症を防ぐことができる病気です。 ご自身の体のサインを見逃さず、気になる場合は早めに医療機関に相談し、専門医の診断を受けることを強くお勧めします。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の健康状態に関するご質問や、診断・治療に関しては、必ず医療機関の専門医にご相談ください。

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