糖尿病とは?症状・原因・種類・合併症を分かりやすく解説
糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が慢性的に高くなる疾患です。本来、血糖値はインスリンというホルモンの働きによって適切にコントロールされていますが、糖尿病になるとこの働きがうまくいかなくなり、全身の血管や神経にさまざまな悪影響を及ぼします。日本国内でも患者数が増加傾向にあり、健康寿命を脅かす大きな要因となっています。この記事では、糖尿病の病因から症状、診断、治療、予防、そして合併症まで、包括的に解説します。糖尿病について正しく理解し、適切な対策をとるための手助けとなれば幸いです。
糖尿病になる原因
糖尿病にはいくつかの種類があり、それぞれ原因が異なりますが、最も一般的なのは「2型糖尿病」です。
1型糖尿病の原因
1型糖尿病は、自己免疫疾患によって膵臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)が破壊され、インスリンがほとんど、あるいは全く分泌されなくなることで起こります。これは、本来は細菌やウイルスから体を守る免疫システムが、なぜか自分の体の細胞を攻撃してしまうことで発生します。遺伝的な要因が関係していると考えられていますが、ウイルス感染などが引き金となる可能性も指摘されています。発症は子どもや若い人に多い傾向がありますが、どの年齢でも起こり得ます。
2型糖尿病の原因
2型糖尿病は、インスリンの分泌量が不足したり、インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)ことによって起こります。日本人を含むアジア人には、インスリンの分泌能力が比較的低い人が多いという遺伝的な体質があると言われています。
この遺伝的な体質に加え、以下のような生活習慣が大きく関わってきます。
- 過食: 特に脂っこいものや糖分の多い食事を摂りすぎる
- 運動不足: 体を動かさないことによるカロリー消費の低下
- 肥満: 特に内臓脂肪が増えることによってインスリン抵抗性が高まる
- ストレス: 血糖値を上げるホルモンの分泌を促す
- 喫煙: インスリン抵抗性を高める
- 過剰な飲酒: 血糖コントロールを乱す
これらの要因が複合的に作用し、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなっていきます。加齢もインスリンの分泌能力や感受性を低下させる要因の一つです。2型糖尿病は、中高年に多いですが、近年では生活習慣の変化に伴い、若い人にも増えています。
その他の原因
糖尿病の中には、膵臓の病気やホルモンの病気、特定の薬剤の使用などが原因で起こるものや、妊娠中に一時的に血糖値が高くなる妊娠糖尿病などもあります。
糖尿病の主な症状
糖尿病は、血糖値がかなり高くなるまで自覚症状が現れにくい病気ですが、血糖値が一定のレベルを超えると、特徴的な症状が現れることがあります。
血糖が高いことによる代表的な症状
血糖値が特に高くなると、腎臓が余分なブドウ糖を尿として排出しようとします。このとき、ブドウ糖は水分を引きつける性質があるため、体から多くの水分が失われます。これに伴い、以下のような症状が現れます。
- 多尿(トイレが近くなる、尿の量が増える): 体から水分が大量に排出されるため、尿の回数や量が増えます。特に夜間にトイレに起きることが多くなる場合があります。
- 多飲(喉が異常に渇く): 多尿によって体が脱水状態になるため、水分を補おうとして喉が異常に渇き、たくさんの水を飲むようになります。
- 多食(食欲が増す): 血液中にブドウ糖がたくさんあっても、細胞にうまく取り込めないため、体はエネルギー不足だと感じ、空腹感を覚えて食事の量が増えることがあります。しかし、これは必ずしも現れる症状ではありません。
- 体重減少: エネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できず、体が脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとするため、食事を摂っているにも関わらず体重が減少することがあります。これは特に1型糖尿病で急激に現れることがあります。
その他の症状
上記以外にも、高血糖が続くとさまざまな症状が出ることがあります。
- 疲労感、だるさ: エネルギーがうまく使えないため、疲れやすく、体がだるく感じることがあります。
- 皮膚のかゆみ: 高血糖によって皮膚が乾燥しやすくなったり、感染症を起こしやすくなったりするため、かゆみが生じることがあります。
- 視力のかすみ: 血糖値の変動によって目のピント調節機能が一時的に低下したり、目のレンズ(水晶体)に含まれる水分量が変化したりすることで、視界がぼやけたりかすんだりすることがあります。
- 手足のしびれや感覚の異常: 神経障害の初期症状として、手足の指先がピリピリしたり、ジンジンしたりする感覚、あるいは逆に感覚が鈍くなることがあります。
- 感染症にかかりやすい、治りにくい: 血糖が高い状態だと、細菌やウイルスが繁殖しやすくなり、感染症にかかりやすくなります。また、傷が治りにくくなることもあります。
- 性機能の低下: 男性の場合、勃起障害(ED)が見られることがあります。
血糖値が高いだけでは無症状の場合も?
重要な点として、糖尿病、特に2型糖尿病の初期段階では、血糖値が多少高くても上記のような自覚症状がほとんど現れないことが多いです。症状が現れるのは、血糖値がかなり高い状態が長く続いた場合がほとんどです。そのため、「喉の渇きがないから大丈夫」「体重が減っていないから心配ない」と自己判断せず、定期的な健康診断で血糖値をチェックすることが、早期発見のために極めて重要です。
糖尿病のタイプ
糖尿病は、その原因や特徴によっていくつかのタイプに分類されます。主なものは1型糖尿病と2型糖尿病ですが、その他にも特定の原因による糖尿病や妊娠糖尿病があります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が自己免疫の異常によって破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなるタイプの糖尿病です。全体の糖尿病患者の約5%程度を占めると言われています。
- 発症年齢: 小児期や思春期に多く見られますが、成人になってから発症することもあります(劇症1型糖尿病や緩徐進行1型糖尿病など)。
- 原因: 自己免疫の異常によるβ細胞の破壊が主因です。遺伝的素因に加えて、ウイルス感染や環境要因が関与していると考えられています。
- 病状: インスリン分泌が著しく低下、または欠乏しているため、血糖コントロールのためにはインスリン注射が必須となります。急激に発症することが多く、ケトアシドーシス(インスリン不足により体が脂肪を分解してエネルギーを得ようとする際に発生する有害物質が増える状態)といった重篤な合併症で発見されることもあります。
- 治療: 生涯にわたりインスリン注射が必要となります。インスリン療法に加え、食事療法、運動療法を組み合わせながら血糖値を管理します。
2型糖尿病
2型糖尿病は、遺伝的なインスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性といった体質に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が加わって発症するタイプの糖尿病です。糖尿病患者全体の約90%以上を占める最も一般的なタイプです。
- 発症年齢: 40歳以上の中高年に多いですが、近年は食生活やライフスタイルの変化により、若い世代や子供にも増えています。
- 原因: 遺伝的要因に加え、生活習慣が強く関与します。特に、肥満、運動不足、不適切な食生活などがインスリンの働きを妨げたり、膵臓を疲弊させたりします。
- 病状: インスリン分泌が完全に失われるわけではなく、分泌量が不足したり、インスリンが効きにくかったりします。比較的ゆっくりと進行することが多いですが、放置すると合併症のリスクが高まります。
- 治療: まずは食事療法と運動療法による生活習慣の改善が基本となります。これだけで血糖値が正常化することもあります。効果が不十分な場合は、血糖降下薬による薬物療法が追加されます。病状が進行し、インスリン分泌がさらに低下した場合には、インスリン療法が必要となることもあります。
その他の種類の糖尿病
- 妊娠糖尿病: 妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病で、妊娠前から糖尿病と診断されていた場合は含みません。妊娠中のホルモンの影響などによりインスリン抵抗性が高まることで起こります。多くの場合、出産後に血糖値は正常に戻りますが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。
- 特定の原因による糖尿病: 膵臓の病気(膵炎、膵臓がんなど)や内分泌疾患(先端巨大症、クッシング症候群など)、遺伝子異常、薬剤(ステロイドなど)などが原因で起こる糖尿病です。
1型と2型糖尿病の違い
1型糖尿病と2型糖尿病の主な違いを表にまとめました。
| 特徴 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 自己免疫によるβ細胞破壊(インスリン欠乏) | インスリン分泌不足+インスリン抵抗性(生活習慣・遺伝) |
| 発症の仕方 | 急激 | 比較的ゆっくり |
| 発症年齢 | 小児〜思春期に多い(あらゆる年齢で起こりうる) | 中高年に多い(若年層にも増加) |
| 体型 | やせ型が多い | 肥満型が多い(やせ型の人もいる) |
| インスリン療法 | 必須 | 必要に応じて(初期は不要なことが多い) |
| 患者さんの割合 | 約5% | 約90%以上 |
| ケトアシドーシス | 起こりやすい | 起こりにくい(特別な状況下で起こる可能性あり) |
この表は一般的な傾向であり、個々のケースには当てはまらない場合もあります。
糖尿病の診断
糖尿病の診断は、主に血液検査によって行われます。血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)という検査値が重要になります。これらの値が診断基準を満たすかどうかで判断されます。
診断の基準となる検査
- 血糖値: 血液中のブドウ糖の濃度を測定します。測定するタイミングによって値の基準が異なります。
- 空腹時血糖値: 10時間以上何も食べたり飲んだりしていない状態で測定した血糖値。
- 随時血糖値: 食事とは無関係に、任意の時間に測定した血糖値。
- 食後血糖値: 食事を始めてから一定時間(通常2時間)経過した後の血糖値。
- HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー): 赤血球の中にあるヘモグロビンにブドウ糖が結合したもので、過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標です。検査前の食事時間に関係なく測定できます。
- 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT: Oral Glucose Tolerance Test): 75gのブドウ糖が含まれた検査用の液体を飲み、その後の血糖値の変化を時間を追って測定する検査です。空腹時、30分後、60分後、120分後などに採血し、血糖値とインスリン分泌能を詳しく調べます。糖尿病の診断を確定したり、糖尿病予備群の状態を把握したりするために行われます。
- 尿糖検査: 尿中にブドウ糖が出ているかを調べます。血糖値が非常に高い場合に尿糖が出ますが、尿糖が出ていることだけでは糖尿病の確定診断にはなりません。
- その他の検査: 膵臓のインスリン分泌能力を調べる検査(CPRなど)や、自己免疫の異常を調べる検査(GAD抗体など)は、1型糖尿病や特定の種類の糖尿病を診断する際に用いられます。
血糖値の正常範囲と診断基準
日本糖尿病学会が定めている診断基準に基づくと、以下の場合に糖尿病型と判定されます。
- 空腹時血糖値が 126mg/dL以上
- 随時血糖値が 200mg/dL以上
- 75gOGTTで2時間値が 200mg/dL以上
これらの基準のいずれかを満たした場合に「糖尿病型」と判定されます。
一方、HbA1cの値が 6.5%以上の場合も「糖尿病型」と判定されます。
糖尿病と診断されるのは、「糖尿病型」の判定が別の日に再度確認された場合、または「糖尿病型」の判定とHbA1c 6.5%以上の両方を満たす場合です。
| 検査項目 | 正常値 | 糖尿病型 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖値 | 100mg/dL未満 | 126mg/dL以上 |
| 随時血糖値 | 100mg/dL未満 | 200mg/dL以上 |
| 75gOGTT 2時間値 | 140mg/dL未満 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.0%未満 | 6.5%以上 |
| (参考)境界型 | 空腹時血糖値 100〜125mg/dL または 75gOGTT 2時間値 140〜199mg/dL |
「血糖指数6.3正常嗎?」(血糖値6.3mg/dLは正常か?)という疑問についてですが、血糖値は通常「mg/dL」という単位で表されます。提示されている「6.3」という数値がどの単位での値か不明確ですが、もしHbA1cの値が6.3%であれば、これは境界型に該当し、糖尿病予備群の状態と考えられます(HbA1c 6.0%以上 6.5%未満)。もし血糖値そのものを指している場合、6.3mg/dLは医学的な血糖値の数値としてはありえませんので、単位の確認が必要です。一般的に、空腹時血糖値の正常範囲は100mg/dL未満です。
「血糖高是糖尿病嗎?」(血糖高は糖尿病か?)という疑問に対しては、血糖値が高い状態が診断基準を満たし、それが確認されれば糖尿病と診断されます。ただし、一度血糖値が高かっただけで直ちに糖尿病と診断されるわけではなく、別の日の検査で再び基準を超えるか、HbA1cが高いかなどの総合的な判断が必要です。また、ストレスや一時的な体調不良で血糖値が一時的に高くなることもあります。重要なのは、医療機関で正確な診断を受けることです。
糖尿病どう治療する?
糖尿病の治療の目的は、血糖値を良好にコントロールし、糖尿病に特有の合併症(網膜症、腎症、神経障害など)や、動脈硬化によって起こる心筋梗塞や脳卒中などの病気を予防し、健康な人と変わらない生活の質(QOL)を維持し、健康寿命を全うすることです。
治療方法の概要
糖尿病の治療は、主に以下の3つの柱を中心に、患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせて行われます。
1. 食事療法: 食事の内容や量を適切に管理し、血糖値の急激な上昇を抑えます。
2. 運動療法: 運動によってブドウ糖や脂肪の利用を促進し、インスリンの効果を高めます。
3. 薬物療法: 食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが難しい場合に、血糖降下薬やインスリン注射を使用します。
これらの治療は、単独で行われるのではなく、組み合わせて行われることがほとんどです。特に2型糖尿病の場合、まず食事療法と運動療法から開始し、効果が不十分であれば薬物療法を導入するというステップが一般的です。1型糖尿病の場合は、最初からインスリン療法が必須となります。
薬物治療
食事療法や運動療法だけでは目標血糖値に達しない場合、薬物療法が開始されます。糖尿病の薬には様々な種類があり、病状や合併症の有無などを考慮して医師が最適な薬を選択します。
飲み薬(血糖降下薬)2型糖尿病の治療に用いられることが多く、その作用機序によって多くの種類があります。
- DPP-4阻害薬: インスリン分泌を促進するホルモン(インクレチン)を分解する酵素の働きを阻害し、血糖値に応じてインスリン分泌を促します。低血糖を起こしにくいのが特徴です。
- SGLT2阻害薬: 腎臓での糖の再吸収を抑え、尿中に糖を排出することで血糖値を下げます。体重減少や血圧降下、心血管・腎保護作用も期待されます。
- ビグアナイド薬: 肝臓からの糖放出を抑え、インスリン抵抗性を改善します。古くから使われており、体重増加を抑える効果もあります。下痢などの消化器症状が出ることがあります。
- SU薬(スルホニル尿素薬): 膵臓からのインスリン分泌を強力に促進します。低血糖を起こしやすい薬として知られています。
- 速効型インスリン分泌促進薬: 食事の際に一時的にインスリン分泌を促します。食後の高血糖改善に効果的ですが、食事を摂らないと低血糖を起こす可能性があります。
- チアゾリジン薬: 筋肉や脂肪組織におけるインスリン抵抗性を改善します。効果が出るまでに時間がかかり、むくみなどの副作用に注意が必要です。
- α-グルコシダーゼ阻害薬: 炭水化物の消化・吸収を遅らせることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑えます。お腹の張りやガスが多くなるなどの副作用が出ることがあります。
- GLP-1受容体作動薬: DPP-4阻害薬と同様にインクレチンの働きを強め、血糖値に応じてインスリン分泌を促進します。食欲を抑えたり、胃の内容物の排出を遅らせたりする作用もあり、体重減少効果も期待されます。週に1回など注射頻度が少ないタイプもあります。
- インスリン注射: インスリンが不足している場合に、外部からインスリンを補う治療法です。1型糖尿病では必須ですが、2型糖尿病でも飲み薬で血糖コントロールが難しい場合や、膵臓の機能が著しく低下した場合などに用いられます。インスリンの種類(超速効型、速効型、中間型、混合型、持効型など)によって作用する時間やピークが異なり、患者さんの状態に合わせて使い分けられます。自己注射で行うため、正しい手技の習得が必要です。
薬の種類や組み合わせは、患者さんの血糖値、HbA1c、年齢、合併症の有無、腎機能、肝機能、ライフスタイルなどを考慮して医師が決定します。薬物療法を開始した後も、定期的な診察で効果や副作用を確認し、必要に応じて薬の種類や量を調整していきます。
食事治療
糖尿病の治療において、食事療法は最も基本的な、そして非常に重要な柱です。適切な食事管理は、血糖値を安定させ、肥満を改善し、合併症の予防に大きく貢献します。
食事療法の基本食事療法の基本的な考え方は、「適正なエネルギー量の中で、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂る」ことです。
- 適正なエネルギー量: 年齢、性別、体格、身体活動量などから、その人に必要な一日あたりの摂取カロリーを算出します。過剰なカロリー摂取は血糖値上昇や肥満の原因となります。
- 栄養バランス: 炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランス良く摂ることが重要です。特定の栄養素を極端に制限するのではなく、それぞれの役割を理解して適切に摂取します。
- 規則正しい食事: 毎日決まった時間に3食を摂ることが推奨されます。特に朝食を抜くと昼食後の血糖値が急激に上昇しやすくなるため、朝食を摂る習慣をつけましょう。また、だらだらと間食を続けるのも血糖コントロールには良くありません。
- 糖質の摂り方: 血糖値を最も大きく左右するのは糖質です。ご飯、パン、麺類、イモ類、果物、砂糖など。これらを極端に制限する必要はありませんが、量と質に注意が必要です。
- 量を測る: 主食(ご飯、パンなど)は適切な量を測って食べましょう。
- GI値の低い食品を選ぶ: GI値(グリセミックインデックス)とは、食品に含まれる糖質が血糖値をどれだけ早く上昇させるかを示す指標です。GI値の低い食品(例:玄米、全粒粉パン、そば、多くの野菜、きのこ、海藻類)は血糖値の上昇が緩やかになります。
- 食物繊維を多く摂る: 野菜、きのこ、海藻、こんにゃく、豆類、きのこ類、全粒穀物などに豊富に含まれる食物繊維は、糖の吸収を遅らせて食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。また、満腹感を得やすく、コレステロールを下げる効果も期待されます。毎食、野菜から食べ始める(ベジタブルファースト)と、食物繊維を先に摂ることができ、食後の血糖値上昇を抑える効果があります。
- 脂質を控えめにする: 脂質、特に動物性の脂肪(飽和脂肪酸)は、カロリーが高く、摂りすぎると肥満や動脈硬化の原因になります。肉の脂身や皮、バター、生クリームなどは控えめにし、魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸を適量摂るように心がけましょう。
- たんぱく質を適切に摂る: 肉、魚、卵、大豆製品などから、良質なたんぱく質を毎日欠かさず摂りましょう。筋肉量を維持するためにも重要です。
- 塩分を控えめにする: 塩分の摂りすぎは血圧を上昇させ、腎臓病などの合併症を悪化させるリスクを高めます。薄味を心がけ、だしや香辛料などを活用すると満足感が得やすくなります。
- アルコールは控えめに: アルコールは少量であれば問題ない場合もありますが、飲みすぎると血糖コントロールを乱し、低血糖や高血糖を引き起こす可能性があります。また、カロリーも高いため、飲む量や頻度を医師や管理栄養士に相談しましょう。
具体的な献立や、食品ごとの具体的な量については、医師や管理栄養士から個別指導を受けることが重要です。
運動治療
運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療の重要な柱です。運動によってブドウ糖がエネルギーとして利用され、血糖値が下がります。また、体の組織(特に筋肉)がインスリンに対する感受性を高め、インスリンが効きやすくなる(インスリン抵抗性の改善)効果もあります。さらに、運動は体重管理、血圧や脂質の改善、心肺機能の向上、ストレス解消など、糖尿病だけでなく全身の健康にも良い影響をもたらします。
運動療法の種類糖尿病の運動療法としては、主に以下の2種類の運動が推奨されます。
- 有酸素運動: 血糖値を下げる効果が高い運動です。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリング、ラジオ体操など、比較的軽い負荷で長時間続けられる運動です。インスリンの働きを良くし、ブドウ糖や脂肪を効率よく燃焼させます。
- レジスタンス運動(筋力トレーニング): 筋肉量を維持・増加させる運動です。スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など、筋肉に負荷をかける運動です。筋肉が増えると、ブドウ糖の消費量が増え、基礎代謝も向上します。有酸素運動と組み合わせて行うとより効果的です。
- 頻度: 毎日行うことが理想的ですが、少なくとも週に3〜5日は行いましょう。血糖値を下げる効果は運動後も持続しますが、その効果は数日で薄れてしまうため、定期的に行うことが重要です。
- 時間: 1回の運動時間は20分以上、できれば合計で週に150分以上行うことが推奨されています。一度に時間が取れない場合は、10分程度の運動を何回かに分けて行っても効果があります。
- タイミング: 食後1〜2時間後の、血糖値が上昇している時間帯に行うのが最も効果的です。
- 医師に相談する: 運動療法を開始する前に、必ず医師に相談し、運動の種類や強度、量についてアドバイスを受けましょう。特に、心臓病や腎臓病、神経障害などの合併症がある場合は、運動によって病状が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
- 無理をしない: 自分の体力や体調に合わせて、無理のない範囲で行いましょう。痛みや体調不良を感じた場合は、すぐに中止してください。
- 低血糖に注意: 運動によって血糖値が下がりすぎる(低血糖)ことがあります。特に、血糖降下薬やインスリンを使用している場合は注意が必要です。運動前には血糖値を測定し、必要に応じて補食を摂りましょう。運動中にも、ブドウ糖を含む飴やジュースなどを携帯しておくと安心です。
- 水分補給: 運動中は水分が失われるため、こまめに水分補給を行いましょう。
- 適切な靴を選ぶ: 特にウォーキングなどでは、足に合った靴を選び、靴擦れやけがを防ぎましょう。糖尿病神経障害がある場合は、足の感覚が鈍くなっていることがあるため、特に注意が必要です。
糖尿病の食事管理
糖尿病の食事管理は、単に特定の食品を制限することだけではなく、何を、どれだけ、いつ食べるかを意識し、血糖値の変動を緩やかにするための工夫が重要です。ここでは、具体的な食事のポイントと、おすすめ・注意すべき食品について詳しく見ていきましょう。
血糖値をコントロールするための食事のポイント
- 食べる順番を意識する(ベジタブルファースト): 食事の最初に野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維が豊富な食品を摂ることで、糖の吸収が緩やかになり、食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。次に肉や魚などのたんぱく質、最後に炭水化物(ご飯、パン、麺類)を食べるようにしましょう。
- ゆっくりよく噛んで食べる: 早食いは血糖値の急上昇を招きやすいです。一口あたり30回程度を目安に、よく噛んでゆっくり食べることで、満腹感を得やすくなり、食べすぎ防止にもつながります。
- 間食やだらだら食いを避ける: 食事と食事の間に長時間だらだらと何かを食べ続けていると、血糖値が高い状態が維持されてしまい、膵臓に負担がかかります。間食をする場合は、時間と量を決めて、血糖値への影響が少ないもの(例:無糖ヨーグルト、ナッツ少量、チーズなど)を選びましょう。
- 飲み物にも注意: 砂糖が多く含まれる清涼飲料水やジュース、加糖コーヒーなどは、血糖値を急激に上昇させます。飲み物は、水、お茶、無糖のコーヒーや紅茶などを選びましょう。
- 調理法を工夫する: 揚げる、炒めるなどの油を多く使う調理法よりも、蒸す、茹でる、焼く、煮るなどの方法を選びましょう。また、味付けは薄味を心がけ、だしや香辛料などを活用すると満足感が得やすくなります。
- 食品交換表を活用する: 医療機関で食事指導を受ける際に、「食品交換表」を活用することがあります。これは、食品を栄養素ごとにいくつかのグループに分類し、それぞれのグループ内で一定量であればカロリーや栄養素がほぼ同じになるように設定されたものです。これにより、様々な食品を組み合わせて飽きずにバランスの良い食事を摂ることができます。
糖尿病におすすめの食品(食べても良い食物)
血糖値のコントロールに役立つ、積極的に摂りたい食品や、摂り方によって血糖値への影響を抑えられる食品です。
- 野菜全般: 食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富で、低カロリーです。特に葉物野菜、きのこ類、海藻類は積極的に摂りましょう。ただし、イモ類やかぼちゃ、とうもろこしなどは糖質が多めなので量に注意が必要です。
- きのこ類: 低カロリーで食物繊維が豊富。血糖値の上昇を抑える効果があります。
- 海藻類: 低カロリーでミネラル、食物繊維が豊富。水溶性食物繊維が糖の吸収を遅らせます。
- 魚類: 良質なたんぱく質と、血液をサラサラにするDHA・EPAなどのn-3系脂肪酸が豊富です。焼き魚や煮魚などで摂りましょう。
- 肉類: 良質なたんぱく質源ですが、脂身の少ない赤身を選び、鶏肉は皮を取り除くようにしましょう。加工肉(ソーセージ、ベーコンなど)は控えめに。
- 大豆製品: 豆腐、納豆、おから、無調整豆乳など。良質なたんぱく質と食物繊維、イソフラボンなどが豊富です。
- 卵: 良質なたんぱく質を含み、栄養価が高いです。
- 乳製品: 無糖ヨーグルト、低脂肪牛乳、チーズなど。カルシウムやたんぱく質を摂取できます。
- 全粒穀物: 玄米、全粒粉パン、そば、ライ麦パン、オートミールなど。白米や白いパンに比べて食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富で、血糖値の上昇が緩やかです。
- ナッツ類(無塩・素焼き): 適量であれば、不飽和脂肪酸、食物繊維、ミネラルなどを摂取できます。食べすぎはカロリー過多になるため注意。
という疑問に対して、これらの食品は血糖値を直接「下げる」わけではありませんが、血糖値の上昇を緩やかにしたり、全体的な血糖コントロールを助けたりする効果が期待できます。
糖尿病の食事禁忌表(避けるべき食物)
血糖値を急激に上昇させたり、肥満や動脈硬化の原因になりやすい食品です。完全に「食べてはいけない」ということではありませんが、量や頻度に注意が必要です。
| 分類 | 避けるべき食品・注意すべき食品の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 砂糖・甘味料 | 砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、黒糖など、ブドウ糖果糖液糖などが含まれるもの | 血糖値を急激に上昇させる |
| 清涼飲料水 | ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンク、加糖コーヒー・紅茶など | 液体のため糖の吸収が非常に早く、血糖値が急激に上昇する。大量の砂糖を含むものが多い。 |
| 菓子類 | ケーキ、クッキー、ビスケット、和菓子(大福、団子など)、チョコレート、キャンディー、アイスクリームなど | 砂糖、脂質、精製された炭水化物が多く、血糖値を上昇させやすい。 |
| 果物 | 果物そのものはビタミンや食物繊維が豊富で健康に良いが、果糖を含むため量に注意。ジュースや缶詰は避ける。 | 過剰な摂取は血糖値上昇につながる。特にジュースは食物繊維が少なく糖が吸収されやすい。 |
| 精製された炭水化物 | 白米(大盛り)、白いパン、うどん、パスタ、餅、コーンフレークなど | 食物繊維が少なく、糖が速やかに吸収されやすい。量に注意し、全粒穀物やそばなどを選ぶのが望ましい。 |
| 脂質の多い食品 | 肉の脂身、鶏皮、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、バター、生クリーム、マーガリン、インスタントラーメン | カロリーが高く、肥満や動脈硬化の原因となる。 |
| 揚げ物 | フライドチキン、とんかつ、天ぷらなど | 脂質とカロリーが高く、血糖コントロールを乱しやすい。衣に糖質も含まれる。 |
| アルコール | 特に糖分の多いカクテルや果実酒など。ビールや日本酒なども糖質を含む。 | 飲みすぎは血糖コントロールを乱す。低血糖や高血糖のリスクを高める。 |
| ファストフード | ハンバーガー、フライドポテト、ピザなど | 糖質、脂質、塩分が多く、高カロリー。栄養バランスも偏りやすい。 |
| ドライフルーツ | 水分が飛んでいる分、同じ量でも生の果物より糖分が凝縮されているため、少量にする。 | 糖分濃度が高い |
これらの食品を完全に避けるのが難しい場合でも、量を減らしたり、食べる頻度を減らしたりするだけでも効果があります。大切なのは、我慢しすぎず、長く続けられる方法を見つけることです。
どうすれば糖尿病を予防できる?
2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて生活習慣が大きく関わるため、多くの場合、日々の生活習慣を見直すことで予防または発症を遅らせることが可能です。糖尿病予備群と診断された方や、家族に糖尿病の人がいるなどリスクが高い方は、特に予防を意識した生活を送りましょう。
予防措置と提案
- 適正体重を維持する: 特に肥満、中でも内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を高める大きな原因となります。BMI(体格指数)をチェックし、適正体重を目指しましょう。(BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m))。日本人の場合、BMI 22が標準体重とされ、BMI 25以上が肥満と判定されます。たとえ体重が標準範囲内でも、お腹周りに脂肪が多い場合は注意が必要です。5%の体重減少でも、インスリン抵抗性が改善し、糖尿病発症リスクを大幅に減らせることが研究で示されています。
- バランスの取れた食事を心がける: 前述の食事管理のポイントを参考に、高カロリー、高脂肪、高糖質の食事を避け、野菜、きのこ、海藻、魚、大豆製品、全粒穀物などを積極的に摂りましょう。規則正しく3食を摂り、早食いを避け、腹八分目を心がけることが重要です。特に、ジュースや菓子類などの砂糖が多く含まれる食品や飲料の摂りすぎには注意が必要です。
- 定期的に運動する: 適度な運動は、血糖値やインスリンの働きを改善し、体重管理にも役立ちます。ウォーキングなどの有酸素運動を毎日または週に数回、合計で週150分以上行うことを目標にしましょう。日常生活の中で、階段を使う、一駅分歩くなど、体を動かす機会を増やすことも有効です。筋力トレーニングも、筋肉量を維持・増加させ、ブドウ糖の消費を増やす効果があります。
- 禁煙する: 喫煙はインスリン抵抗性を高め、糖尿病の発症リスクを上昇させます。また、糖尿病の合併症(特に血管系の合併症)を悪化させる大きな要因です。禁煙することで、糖尿病だけでなく心血管疾患やがんなど、様々な病気のリスクを減らすことができます。
- 質の良い睡眠をとる: 睡眠不足や不規則な睡眠は、血糖コントロールを乱すことが知られています。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。
- ストレスを管理する: 慢性的なストレスは、血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促し、血糖コントロールに悪影響を及ぼします。自分に合ったストレス解消法(趣味、運動、瞑想など)を見つけ、上手に気分転換を図りましょう。
- 定期的に健康診断を受ける: 糖尿病は初期には自覚症状がないことが多いため、定期的な健康診断で血糖値やHbA1cをチェックすることが早期発見・早期対策のために非常に重要です。特に40歳を過ぎたら、年に一度は必ず健康診断を受けましょう。
これらの生活習慣の改善は、糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病全般の予防にもつながります。できることから一つずつ取り組んでいきましょう。
糖尿病の合併症
高血糖の状態が長期間続くと、全身の血管や神経が徐々に傷つき、さまざまな合併症が起こります。糖尿病の合併症は、大きく分けて細い血管の障害によるもの(細小血管合併症)と、太い血管の障害によるもの(大血管合併症)があります。特に重要な細小血管合併症は、「しめじ」や「えのき」と語呂合わせで覚えられることがあります。
細小血管合併症:「しめじ」「えのき」
- し:神経障害(糖尿病神経障害): 手足のしびれ、痛み、感覚の鈍さなどが起こります。進行すると、足の感覚がほとんどなくなり、傷ややけどに気づきにくくなることがあります。また、自律神経にも影響し、立ちくらみ、便秘や下痢、排尿障害、勃起障害(ED)など、様々な症状が出ることがあります。
- め:網膜症(糖尿病網膜症): 目の奥にある光を感じる組織である網膜の血管が傷つき、出血したり、むくんだり、新しい血管ができたりします。初期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行すると視力低下や飛蚊症(視界に黒い点や糸くずのようなものが見える)、最終的には失明に至る可能性もある、糖尿病の三大合併症の一つです。定期的な眼科受診による検査が非常に重要です。
- じ:腎症(糖尿病腎症): 腎臓にある細い血管(糸球体)が傷つき、腎臓の働きが悪くなる病気です。初期には尿の中に微量のたんぱく質が出る(微量アルブミン尿)程度で自覚症状はありませんが、進行するとむくみや高血圧が現れ、さらに悪化すると腎臓の機能が著しく低下し、人工透析が必要になることもあります。これも糖尿病の三大合併症の一つであり、透析導入の原因として最も多い病気です。定期的な尿検査や血液検査で早期発見・早期治療に努めることが重要です。
大血管合併症
高血糖やその他の危険因子(高血圧、脂質異常症、喫煙など)が重なることで、比較的太い血管の動脈硬化が進行しやすくなります。
- 心筋梗塞: 心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠動脈の動脈硬化が進み、血管が詰まることで心筋が壊死する病気です。突然の激しい胸の痛みなどが典型的な症状ですが、糖尿病神経障害によって痛みの感覚が鈍くなり、痛みを伴わない心筋梗塞を起こすこともあります(無痛性心筋梗塞)。
- 脳卒中: 脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れる脳出血などです。手足の麻痺、言語障害、意識障害などの症状が現れます。糖尿病患者さんは、脳卒中を起こすリスクが高いことが知られています。
- 末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症): 足の血管の動脈硬化が進み、血流が悪くなる病気です。歩いていると足が痛くなり休むと回復する(間欠性跛行)、足が冷たい、傷が治りにくい、足の指先が黒くなるなどの症状が出ることがあります。重症化すると、足の指や足そのものが壊死し、切断が必要になることもあります(糖尿病足病変)。
その他の合併症
- 糖尿病足病変: 神経障害、血行障害、感染が重なって起こる、足の傷や潰瘍、壊疽などの病変です。感覚が鈍いため傷に気づきにくく、血行が悪いため傷が治りにくく、免疫力が低下しているため感染しやすいため、重症化しやすいのが特徴です。日頃からのフットケア(足をよく見て、清潔に保つこと)が非常に重要です。
- 感染症: 糖尿病患者さんは免疫力が低下しているため、様々な感染症にかかりやすく、また治りにくい傾向があります。特に、肺炎、尿路感染症、皮膚の感染症、歯周病などにかかりやすいです。
- 歯周病: 糖尿病があると歯周病にかかりやすく、また重症化しやすいことが知られています。歯周病が悪化すると、さらに血糖コントロールが悪くなるという悪循環に陥ることもあります。定期的な歯科受診と適切な口腔ケアが必要です。
- 認知症: 糖尿病がある人は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症になるリスクが高いことが報告されています。
これらの合併症は、高血糖の状態が続くほど起こりやすく、また進行しやすいです。しかし、日頃から血糖値、血圧、脂質をしっかりコントロールすることで、合併症の発症を予防したり、進行を遅らせたりすることができます。
糖尿病についてよくある質問
ED治療薬・漢方・精力剤の違いは?
質問はED治療薬・漢方・精力剤の違いについてですが、これは「シアリス 効果すごい」の記事からの引用部分であり、糖尿病に関する直接的な質問ではありません。しかし、糖尿病の合併症として勃起障害(ED)があることに触れたので、関連情報として説明を加えることは可能です。
ED治療薬、漢方薬、精力剤は、それぞれ目的や作用機序が異なります。
- ED治療薬: 勃起障害(ED)の治療薬です。血管拡張作用などにより、性的刺激があった際に勃起を助ける薬です。シルデナフィル(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)、バルデナフィル(レビトラ)などがあり、医師の処方箋が必要です。糖尿病によるEDに対しても有効な場合がありますが、必ず医師に相談して処方を受けてください。
- 漢方薬: 東洋医学の考えに基づき、複数の生薬を組み合わせて作られた薬です。体のバランスを整え、根本的な体質改善を目指すものが多いです。糖尿病の症状や合併症に対して用いられる漢方薬もありますが、効果には個人差があり、即効性は期待できないことが多いです。
- 精力剤: 疲労回復や一時的な活力を高めることを目的とした、医薬品ではないことが多いです。成分は様々で、効果や安全性は製品によって大きく異なります。勃起障害そのものを治療するものではありません。
糖尿病患者さんがEDに悩む場合、その原因が糖尿病による神経障害や血管障害である可能性が高いため、安易に市販の精力剤などに頼らず、必ず医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
1日2回飲んでもいい?(糖尿病治療薬について)
糖尿病の治療薬の種類によって、服用方法や回数は異なります。一般的に、医師から指示された用法・用量を守ることが最も重要です。
例えば、多くの血糖降下薬は1日1回または2回の服用ですが、中には食直前に服用するもの、食事に関係なく服用するものなど様々です。また、インスリン注射も、製剤の種類によって1日に1回、2回、あるいは毎食前など、注射するタイミングや回数が異なります。
医師から指示された量以上に自己判断で服用回数を増やしたり、量を増やしたりすることは絶対にやめてください。効果が増すどころか、低血糖といった重篤な副作用を引き起こすリスクが高まります。もし薬の飲み方や効果について疑問がある場合は、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
飲んでも血糖値が下がらない原因は?(糖尿病治療薬について)
糖尿病治療薬を服用したり、インスリン注射を使用したりしても、目標とする血糖値に達しない、あるいは血糖値が高い状態が続く場合、いくつかの原因が考えられます。
- 薬の量が合っていない: 病状の進行に対して薬の量が不十分な場合があります。
- 薬の種類が合っていない: 患者さんの病態(インスリン分泌能、インスリン抵抗性の程度など)に対して、薬の作用機序が合っていない可能性があります。
- 用法・用量を守っていない: 医師から指示された通りに薬を飲んでいなかったり、注射を打っていなかったりする場合です。
- 食事療法や運動療法が不十分: 薬物療法は、食事療法や運動療法を補うものです。これらがおろそかになっていると、薬の効果が十分に現れないことがあります。
- ストレスや睡眠不足: 精神的なストレスや睡眠不足は、血糖値を上昇させる要因となります。
- 他の病気や薬剤の影響: 糖尿病以外の病気を合併している場合や、他の病気の治療のために服用している薬が、血糖値を上昇させている可能性があります(例: ステロイド)。
- 病状の進行: 糖尿病が進行し、膵臓のインスリン分泌能力がさらに低下している可能性があります。
薬を飲んでも血糖値が目標値にならない場合は、自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。医師は、血糖値の変動パターンや生活習慣などを詳しく聞き取り、必要に応じて薬の種類や量を見直したり、他の原因がないか検査したりして、最適な治療法を検討してくれます。
糖尿病は心臓に負担をかける?
はい、糖尿病は心臓に大きな負担をかけ、心血管疾患(心臓病や脳卒中など)のリスクを大幅に高めます。
高血糖の状態が続くと、血管の内壁が傷つき、動脈硬化が進みやすくなります。動脈硬化によって心臓の血管(冠動脈)が狭くなったり詰まったりすると、心筋梗塞や狭心症を引き起こします。糖尿病患者さんは、非糖尿病者に比べて心筋梗塞を発症するリスクが数倍高いことが知られています。
また、糖尿病患者さんは高血圧や脂質異常症を合併していることも多く、これらの病気も動脈硬化を進行させる要因となります。高血糖、高血圧、脂質異常症、喫煙などが重なると、さらに心血管疾患のリスクが高まります。
血糖値を良好にコントロールし、血圧や脂質も目標値に保つこと、禁煙すること、適度な運動を行うことは、心臓への負担を軽減し、心血管疾患を予防するために非常に重要です。
筋肉増強効果が期待できる?(糖尿病治療との関連)
糖尿病の治療薬自体に直接的な筋肉増強効果を謳ったものはありません。ただし、糖尿病の治療である運動療法、特に筋力トレーニングは筋肉量を増やす効果があります。
また、インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、同時に筋肉や他の組織にブドウ糖やアミノ酸を取り込ませる作用があり、ある種の同化作用(組織を合成する作用)も持っています。そのため、インスリンの働きが改善されることによって、栄養素が効率よく筋肉に取り込まれやすくなり、運動による筋肉量の増加が促進される可能性は考えられます。
さらに、最近登場したSGLT2阻害薬という種類の糖尿病治療薬は、筋肉の質や機能の維持に良い影響を与える可能性を示唆する研究結果も一部ありますが、これは直接的な筋肉増強効果とは異なります。
結論として、糖尿病治療の主眼は血糖コントロールと合併症予防であり、筋肉増強効果を期待して治療を行うものではありません。筋肉量を増やしたい場合は、適切な食事管理と運動療法、特に筋力トレーニングを医師や専門家の指導のもとで行うことが重要です。
まとめ:糖尿病を知り、健康な未来へ
糖尿病は、放置すると全身に深刻な合併症を引き起こす可能性のある病気です。しかし、適切に管理すれば、健康な人と変わらない生活を送ることも十分に可能です。
この記事では、糖尿病の基本的な情報から、病因、主な症状、種類、診断方法、治療法(食事、運動、薬物)、予防策、そして避けたい合併症について解説しました。
- 糖尿病は、インスリンの作用不足により高血糖が続く病気です。
- 主なタイプは1型(インスリン分泌欠乏)と2型(インスリン分泌不足+抵抗性)があり、特に2型は生活習慣が大きく関わります。
- 多飲、多尿、体重減少などが典型的な症状ですが、初期には無症状であることが多いです。
- 診断は血糖値とHbA1cの検査で行われます。定期的な健康診断が重要です。
- 治療の基本は食事療法と運動療法であり、必要に応じて薬物療法が行われます。
- 食事管理では、適正エネルギー量、栄養バランス、食べる順番、ゆっくり噛むことが大切です。
- 予防には、適正体重の維持、バランスの取れた食事、定期的な運動、禁煙、ストレス管理などが有効です。
- 高血糖が続くと、網膜症、腎症、神経障害といった細小血管合併症や、心筋梗塞、脳卒中などの大血管合併症のリスクが高まります。
いつ医療機関を受診すべきか
以下のような場合は、速やかに医療機関(内科、糖尿病専門医など)を受診しましょう。
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと指摘された
- 多飲、多尿、体重減少など、糖尿病が疑われる症状がある
- 家族に糖尿病の人がいるなど、糖尿病の発症リスクが高いと感じている
- すでに糖尿病と診断されているが、血糖コントロールがうまくいかない、あるいは新しい症状が出た
早期発見、早期治療が、糖尿病の管理と合併症予防において極めて重要です。気になることがあれば、一人で抱え込まず、医療の専門家に相談することをお勧めします。
この情報が、糖尿病への理解を深め、ご自身の健康管理にお役立ていただければ幸いです。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、病気の診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や治療については、必ず医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報によって生じたいかなる結果についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。