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ビグアナイド薬とは?作用・効果・副作用【糖尿病治療薬】

[2025.06.29]

2型糖尿病の治療において、ビグアナイド薬は世界中で広く使われている薬剤です。特にメトホルミンは、その有効性、安全性、そして比較的安価であることから、多くの場合、最初の治療薬として選択されます。しかし、その効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、作用の仕組みや起こりうる副作用、そして特定の状況下での休薬の必要性など、正確な知識を持つことが重要です。この記事では、ビグアナイド薬について、専門家の視点から分かりやすく解説します。ご自身の糖尿病治療への理解を深める一助となれば幸いです。

ビグアナイド薬とは?作用機序と特徴

ビグアナイド薬の定義

ビグアナイド薬は、主に2型糖尿病の治療に用いられる経口血糖降下薬の一種です。この薬の大きな特徴は、膵臓からのインスリン分泌を直接的に促進するのではなく、体内のインスリンの働きを助けたり、肝臓での糖の生成を抑えたりすることで血糖値を下げる点にあります。これにより、食事療法や運動療法だけでは十分に血糖コントロールができない患者さんに対して、血糖値を正常範囲に近づける効果が期待できます。現在、日本国内で承認されているビグアナイド薬の有効成分は「メトホルミン塩酸塩」のみです。

作用機序:インスリン抵抗性改善、糖産生抑制

ビグアナイド薬、特にメトホルミンの主要な作用機序は、以下の2つが挙げられます。

  1. 肝臓からの糖放出の抑制(糖新生抑制):
    肝臓は血糖値を維持するために、ブドウ糖を作り出して血液中に放出しています。2型糖尿病では、この肝臓からのブドウ糖の放出が過剰になっていることが多いです。メトホルミンは、肝臓の細胞内にある特定の酵素(AMPKなど)を活性化させることで、肝臓がブドウ糖を新しく作り出す働き(糖新生)を抑制します。これにより、空腹時の血糖値が高くなるのを抑える効果があります。

  2. 末梢組織(筋肉など)におけるインスリン感受性の改善(インスリン抵抗性改善):
    2型糖尿病の多くの患者さんでは、インスリンが十分に分泌されていても、体の組織(筋肉や脂肪細胞など)がインスリンの指示通りにブドウ糖を取り込めない状態(インスリン抵抗性)になっています。メトホルミンは、筋肉などの細胞が血液中のブドウ糖を効率良く取り込めるように、インスリンに対する感受性を高めます。これにより、食後の血糖値の上昇を抑える効果や、インスリン自体の働きを高める効果が期待できます。

これらの作用に加え、メトホルミンは腸管からのブドウ糖吸収をわずかに遅らせる作用や、食欲を抑える作用なども報告されています。これらの複合的な作用によって、ビグアナイド薬は血糖値を効果的に低下させます。

ビグアナイド薬の薬効分類

ビグアナイド薬は、その作用機序から「血糖降下薬」に分類されます。特に、インスリン分泌を直接促すのではなく、インスリンの働きをサポートするインスリン抵抗性改善薬としての側面が強い薬剤です。血糖降下薬には他にも様々な種類がありますが、ビグアナイド薬は世界的に見ても2型糖尿病治療の第一選択薬として推奨されることが多い薬剤です。

ビグアナイド薬のメリット・デメリット

ビグアナイド薬(メトホルミン)には、多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。

メリット:

  • 強力な血糖降下作用: 特に初期治療において、食事・運動療法と併用することで血糖値を効果的に下げることができます。
  • 低血糖を起こしにくい: インスリン分泌を直接促進する薬剤ではないため、単独で使用している場合は低血糖のリスクが非常に低いのが特徴です。
  • 体重増加を招きにくい(むしろ減量効果も): 他の一部の糖尿病治療薬のように体重が増加する傾向がなく、食欲抑制作用などにより体重がわずかに減少する効果も報告されています。
  • 心血管イベントのリスク低下: 臨床研究により、メトホルミンが心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクを低下させる可能性が示唆されています。
  • 比較的安価: ジェネリック医薬品も多数存在するため、経済的な負担が少ない薬剤です。
  • 古くから使われている: 臨床での使用経験が豊富であり、その安全性や有効性に関するデータが蓄積されています。

デメリット:

  • 消化器症状: 服用初期に下痢、吐き気、腹痛、食欲不振などの消化器症状が出やすいという特徴があります。多くの場合、服用を続けるうちに軽減されますが、症状が強い場合は医師への相談が必要です。
  • 乳酸アシドーシスのリスク: 非常に稀ですが、重篤な副作用として乳酸アシドーシスを起こす可能性があります。特に腎機能障害がある場合や脱水時などにリスクが高まります。
  • ビタミンB12欠乏: 長期服用によりビタミンB12の吸収が阻害され、欠乏症(貧血や神経障害)を起こす可能性があります。
  • 一部の患者には使用できない: 腎機能障害、肝機能障害、心不全などの病態がある患者さんには禁忌となります。

これらのメリット・デメリットを理解し、個々の患者さんの状態に合わせて適切に処方・管理されることが重要です。

ビグアナイド薬の種類:一般名と商品名

一般名「メトホルミン塩酸塩」について

現在、日本国内で糖尿病治療薬として承認されているビグアナイド薬の有効成分は、メトホルミン塩酸塩のみです。メトホルミンは、1950年代から使用されている歴史の長い薬剤であり、その後の多くの研究で有効性や安全性が確認されています。インスリン分泌を介さずに血糖を下げる独自の作用機序を持つため、様々な病態の2型糖尿病患者さんに適用されます。

主なビグアナイド薬の商品名一覧

メトホルミン塩酸塩を有効成分とする薬剤は、製造販売している製薬会社によって様々な商品名で販売されています。また、成分の放出速度を調整した徐放錠も存在します。代表的な商品名としては以下のようなものがあります(これらは一部であり、全ての製品を網羅しているわけではありません)。

  • メトグルコ錠 (大日本住友製薬)
  • グリコラン錠 (日本新薬)
  • メトホルミン塩酸塩錠 [〇〇] (「〇〇」には様々なメーカー名が入ります。例:メトホルミン塩酸塩錠MT「アメル」、メトホルミン塩酸塩錠500mg「トーワ」など)

これらの商品名が異なっていても、有効成分が「メトホルミン塩酸塩」であれば、基本的に同じ効果が期待できます。ただし、剤形(普通の錠剤か徐放錠かなど)や添加物が異なる場合があるため、医師や薬剤師の指示に従うことが大切です。徐放錠は、薬の成分がゆっくりと体内に放出されるように設計されており、1日1回の服用で済む場合や、消化器症状が軽減されることが期待できる場合があります。

ビグアナイド薬の服用方法と用法用量

ビグアナイド薬は、医師の指示に基づき、決められた用法用量を守って服用することが非常に重要です。自己判断で服用量を変えたり、服用を中止したりすることは避けてください。

服用タイミングと注意点

メトホルミンは、一般的に食事中または食直後に服用することが推奨されています。その理由は、服用初期に現れやすい下痢や吐き気などの消化器症状を軽減するためです。食事と一緒に服用することで、胃腸への刺激を和らげることが期待できます。

特定の徐放錠タイプのメトホルミンでは、1日1回の服用で良い場合もありますが、通常の錠剤の場合は1日2回または3回に分けて服用することが多いです。服用回数やタイミングについては、必ず医師や薬剤師の指示を確認してください。

また、水分と一緒に服用することが一般的です。多量のアルコール摂取は、乳酸アシドーシスのリスクを高める可能性があるため、メトホルミンの服用中は避けるようにしましょう。

推奨される用量と調整

メトホルミンの服用量は、患者さんの血糖値、年齢、腎機能、合併症、そして他の治療薬との併用状況などを考慮して、医師が個別に決定します。

  • 開始用量: 消化器症状を避けるために、一般的に少量(例: 1日250mgまたは500mg)から開始することが多いです。
  • 増量: 数日~1週間ごとに、患者さんの忍容性(副作用の出やすさ)や血糖値の推移を見ながら、徐々に用量を増やしていくのが標準的な方法です。
  • 維持用量: 多くの患者さんで効果が期待できる維持用量は、1日500mg~1500mg程度です。
  • 最大用量: 日本におけるメトホルミンの承認最大用量は1日2250mgです。ただし、患者さんの状態によっては最大用量まで増量しない場合もあります。

用量が多いほど血糖降下作用は強くなりますが、同時に副作用のリスクも高まります。特に高齢者や腎機能が低下している患者さんでは、少量から開始し、より慎重に用量を調整する必要があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。

ビグアナイド薬の主な副作用と注意点

ビグアナイド薬は比較的安全性の高い薬剤ですが、いくつかの副作用が知られています。特に注意すべきは、消化器症状と、稀ではあるものの重篤な乳酸アシドーシスです。

消化器症状(下痢、吐き気)

最も頻繁にみられる副作用は、下痢、吐き気、腹痛、嘔吐、食欲不振、金属のような味覚などの消化器症状です。これらの症状は、メトホルミンを初めて服用した時や、急に用量を増やした時に起こりやすい傾向があります。

特徴: 多くの場合、軽度で一過性であり、服用を続けるうちに体が慣れて症状が軽減することが多いです。

対処法: 消化器症状が気になる場合は、以下の方法で症状を和らげられる可能性があります。

  • 少量から開始し、徐々に増量する: 体を薬に慣らすために、最初の用量を少なく設定し、数日~1週間ごとに少しずつ増やしていくことで、症状が出にくくなります。
  • 食事中または食直後に服用する: 薬が胃腸に留まる時間を短くし、刺激を和らげる効果が期待できます。
  • 徐放錠を試す: 薬の成分がゆっくり放出される徐放錠は、通常の錠剤よりも消化器症状が出にくいと言われています。
  • 医師に相談する: 症状が強い場合や続く場合は、漫然と服用せず、医師に相談してください。用量の減量や他の薬剤への変更が検討されることがあります。

重篤な副作用「乳酸アシドーシス」とは

乳酸アシドーシスは、メトホルミンの最も注意すべき重篤な副作用です。発生頻度は非常に稀(年間10万人あたり数人程度)ですが、発症すると致命的になる可能性があるため、リスク因子のある患者さんでは特に注意が必要です。

概要: 乳酸アシドーシスは、体内の乳酸が異常に蓄積し、血液が酸性に傾く病態です。メトホルミンは肝臓での乳酸の代謝を妨げる作用があり、特定の条件下では乳酸が処理しきれずに蓄積してしまうことがあります。

症状: 初期症状は非特異的で分かりにくいことが多いですが、吐き気、嘔吐、激しい腹痛、筋肉痛、倦怠感、過呼吸(息が速くなる)、意識障害などが挙げられます。これらの症状が急に現れた場合は、すぐに救急医療機関を受診する必要があります。

リスク因子: 乳酸アシドーシスを起こしやすい主なリスク因子は以下の通りです。

  • 腎機能障害: 乳酸やメトホルミンが体外に排泄されにくくなるため、最も重要なリスク因子です。eGFR(推算糸球体濾過量)が低下している患者さんでは、メトホルミンは禁忌または慎重投与となります。
  • 肝機能障害: 乳酸の代謝が障害されるためリスクが高まります。
  • 脱水: 体液量が減少し、腎血流量が低下するためリスクが高まります。
  • 心不全、呼吸不全: 組織が酸素不足(低酸素状態)になりやすく、乳酸が蓄積しやすくなります。
  • アルコール過剰摂取: アルコールも乳酸代謝に影響するためリスクが高まります。
  • 重症感染症、ショック状態: 体がストレスを受けて乳酸が産生されやすくなります。

これらのリスク因子がある患者さんでは、メトホルミンは禁忌となるか、厳重な経過観察のもとで慎重に投与されます。

その他の副作用について

消化器症状や乳酸アシドーシス以外にも、以下のような副作用が報告されています。

  • ビタミンB12欠乏: 長期にわたってメトホルミンを服用すると、腸管でのビタミンB12の吸収が低下し、欠乏症(巨赤芽球性貧血や末梢神経障害など)を引き起こす可能性があります。定期的な血液検査でビタミンB12の値を確認することが推奨される場合があります。
  • 味覚異常: 口の中に金属のような味がすると訴える患者さんもいます。
  • 皮膚症状: 稀に発疹やかゆみなどの皮膚症状が現れることがあります。
  • 低血糖: メトホルミン単独での使用では低血糖はほとんど起こりませんが、インスリンやSU薬(スルホニル尿素薬)など、他の血糖降下作用の強い薬剤と併用する場合には、低血糖のリスクが増加します。

副作用が疑われる症状が現れた場合は、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。

ビグアナイド薬の休薬が必要なケース【禁忌】

メトホルミンは、特定の病態や医療処置の前に一時的に服用を中止(休薬)する必要がある場合があります。これは、主に重篤な副作用である乳酸アシドーシスの発症リスクを高める状況を避けるためです。以下のケースでは、メトホルミンが禁忌となるか、休薬が強く推奨されます。

腎機能障害や肝機能障害

腎臓はメトホルミンや乳酸を体外に排泄する重要な臓器です。腎機能が低下していると、メトホルミンや乳酸が体内に蓄積しやすくなり、乳酸アシドーシスのリスクが著しく高まります。日本の添付文書では、腎機能障害(eGFRが30mL/min/1.73m²未満)のある患者さんにはメトホルミンは禁忌とされています。また、eGFRが30以上60未満の場合も、慎重投与または用量調整が必要です。肝機能障害がある場合も、乳酸の代謝能力が低下するため、メトホルミンは禁忌となります。

ヨード造影剤検査・手術時の休薬理由

特定の医療処置の前にメトホルミンの休薬が推奨される主な理由は、これらの処置が一時的に腎機能に影響を与えたり、脱水状態を引き起こしたりする可能性があるためです。

  • ヨード造影剤を使用する検査(CTやカテーテル検査など): ヨード造影剤は腎臓から排泄されますが、腎臓に負担をかける可能性があり、一時的に腎機能が低下することがあります。この状態でメトホルミンを服用していると、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。そのため、検査前48時間以内にメトホルミンを服用した場合は検査を延期するか、検査前に休薬することが推奨されます。また、検査後も腎機能が回復したことを確認してから(通常は48時間後以降)、メトホルミンの服用を再開します。
  • 外科手術(特に大きな手術): 手術中は飲食が制限されたり、麻酔や輸液の影響、出血などにより脱水状態になったり、腎血流量が低下したりするリスクがあります。また、手術による体のストレス(侵襲)によって乳酸が産生されやすくなることもあります。これらの要因が重なると、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。そのため、手術の種類や患者さんの状態にもよりますが、手術の数日前からメトホルミンを休薬し、術後に飲食が可能になり、全身状態や腎機能が安定してから再開することが一般的です。

これらの状況下での休薬の期間や再開のタイミングについては、必ず担当の医師の指示に従ってください。自己判断での休薬や再開は危険です。

その他の禁忌事項

上記以外にも、メトホルミンは以下の病態や状況にある患者さんには禁忌とされています。

  • メトホルミン塩酸塩に対して過去にアレルギー反応を起こしたことがある方
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の方(インスリン分泌がないため効果が期待できない)
  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷など、インスリン治療が必要な病態の方
  • 心不全(ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類Ⅲ度、Ⅳ度)や呼吸不全、心筋梗塞直後、脳梗塞などの心血管系、肺機能に重篤な障害のある方
  • 脱水症、胃腸障害など、脱水状態になりやすい方
  • アルコール中毒の方
  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳婦

これらの禁忌事項に該当するかどうかは、医師が診断の上で判断します。ご自身の病歴や現在の状態、服用中の薬剤について、正確に医師に伝えることが重要です。

他の糖尿病治療薬との比較

ビグアナイド薬(メトホルミン)は、多くの2型糖尿病患者さんにおいて第一選択薬となりますが、他の様々な作用機序を持つ血糖降下薬も存在します。それぞれの薬には特徴があり、患者さんの病態や目標血糖値、合併症などを考慮して、単独で、あるいは他の薬剤と組み合わせて使用されます。ここでは、代表的な他の糖尿病治療薬とビグアナイド薬を比較します。

スルホニル尿素薬(SU薬)との違い

SU薬は、膵臓のβ細胞に直接作用してインスリン分泌を強力に促進する薬剤です。グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなどが含まれます。

薬剤分類 主な作用機序 低血糖リスク 体重への影響 主な副作用 特徴・補足
ビグアナイド薬 肝臓での糖新生抑制、インスリン抵抗性改善 ほぼなし 減量効果も 消化器症状、乳酸アシドーシス(稀) 2型糖尿病の第一選択薬、安価
スルホニル尿素薬(SU薬) 膵臓からのインスリン分泌促進 高い 増加傾向 低血糖、体重増加 インスリン分泌能がある程度保たれている人に

SU薬はインスリン分泌能が比較的保たれている患者さんで効果を発揮しやすい一方、インスリンを強制的に分泌させるため、低血糖を起こしやすいという大きなデメリットがあります。また、体重増加を招きやすい傾向もあります。ビグアナイド薬は、インスリン分泌能に関わらず効果を発揮し、低血糖のリスクが低い点がSU薬との決定的な違いです。多くの場合、まずビグアナイド薬が使われ、効果不十分な場合にSU薬などが追加されるという流れがとられます。

DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬など併用について

ビグアナイド薬で血糖コントロールが不十分な場合、異なる作用機序を持つ他の糖尿病治療薬が追加されることがあります。代表的なものとして、DPP4阻害薬やSGLT2阻害薬があります。

  • DPP4阻害薬: インクレチンというホルモンの分解を抑えることで、血糖値に応じてインスリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制します。シタグリプチン、ビルダグリプチン、テネリグリプチンなどが含まれます。
    • ビグアナイド薬との併用: 互いに異なる作用機序のため、併用効果が期待できます。DPP4阻害薬は単独では低血糖を起こしにくく、体重への影響も少ないため、ビグアナイド薬と安全に併用しやすい薬剤です。
  • SGLT2阻害薬: 腎臓の尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制し、余分な糖を尿として体外に排出することで血糖値を下げます。イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなどが含まれます。
    • ビグアナイド薬との併用: SGLT2阻害薬もインスリン分泌とは独立して血糖を下げるため、ビグアナイド薬との併用で相乗効果が期待できます。体重減少効果や心血管・腎保護効果も報告されており、これらの合併症を持つ患者さんでは特に併用が考慮されます。

これらの薬剤以外にも、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬など、様々な作用機序を持つ糖尿病治療薬があり、ビグアナイド薬と組み合わせて使用されることがあります。どの薬剤を選択し、どのように組み合わせるかは、患者さんの個々の状態や目標、ライフスタイルなどを総合的に判断して医師が決定します。

薬剤分類 主な作用機序 低血糖リスク 体重への影響 主な副作用 特徴・補足
ビグアナイド薬 肝臓での糖新生抑制、インスリン抵抗性改善 ほぼなし 減量効果も 消化器症状、乳酸アシドーシス(稀) 2型糖尿病の第一選択薬、安価
DPP4阻害薬 インクレチン分解抑制(血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制) ほぼなし 変化なし 便秘、鼻咽頭炎、関節痛など 副作用が比較的少ない、併用しやすい
SGLT2阻害薬 腎臓での糖再吸収抑制(尿中糖排泄促進) ほぼなし 減少傾向 尿路・性器感染症、脱水、ケトアシドーシス(稀) 心血管・腎保護効果も期待、血圧低下効果
α-GI 消化管からの糖吸収遅延 ほぼなし 変化なし 腹部膨満感、放屁 食後の高血糖改善に有効
チアゾリジン薬 骨格筋や脂肪組織などでのインスリン感受性改善 ほぼなし 増加傾向 むくみ、心不全、骨折リスク増加(女性) インスリン抵抗性が強い人に有効
GLP-1受容体作動薬 インクレチン受容体を刺激(血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃内容排出遅延、食欲抑制) ほぼなし 減少傾向 吐き気、嘔吐、便秘、急性膵炎(稀) 注射薬が多い(一部経口薬あり)、体重減少効果

※ 上記は一般的な傾向であり、個々の薬剤や患者さんの状態によって異なります。

ビグアナイド薬に関するよくある質問(FAQ)

ビグアナイド薬について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

ビグアナイド薬はどんな薬ですか?

ビグアナイド薬は、主に2型糖尿病の治療に使われる飲み薬です。膵臓からインスリンを出す働きを直接促すのではなく、主に肝臓からのブドウ糖の放出を抑えたり、体(筋肉など)がインスリンの働きに反応しやすくなるように助けたりすることで、血糖値を下げます。このため、単独で使用している場合は低血糖を起こしにくいという特徴があります。世界中で最も広く使われている糖尿病治療薬の一つであり、多くのガイドラインで最初の治療薬として推奨されています。

ビグアナイドの一般名は?

日本国内で糖尿病治療薬として使用されているビグアナイド薬の有効成分の一般名(成分の名前)は、「メトホルミン塩酸塩(Metformin hydrochloride)」です。様々な製薬会社から、このメトホルミン塩酸塩を成分とする薬が、異なる商品名で販売されています。

ビグアナイド 休薬 なぜ必要ですか?

ビグアナイド薬(メトホルミン)の休薬が必要になる主な理由は、非常に稀ではありますが重篤な副作用である「乳酸アシドーシス」の発症リスクを避けるためです。乳酸アシドーシスは、体内に乳酸が異常に蓄積して血液が酸性になる危険な状態です。

特に、腎機能が低下している場合や、ヨード造影剤を使った検査や手術のように、一時的に腎臓に負担がかかったり、脱水状態になったり、体に強いストレスがかかったりする可能性がある状況では、乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。そのため、これらのリスクが高い状況になる前に、一時的にメトホルミンの服用を中止する必要があるのです。休薬の具体的なタイミングや期間については、必ず担当の医師の指示に従ってください。

メトホルミンとビグアナイドの違いは何ですか?

「ビグアナイド」は薬剤の分類名(薬効分類)であり、「メトホルミン」はビグアナイド薬の有効成分の名前(一般名)です。

例えるなら、「果物」という分類の中に、「りんご」や「みかん」といった具体的な種類があるような関係です。ビグアナイド薬という分類の中に、有効成分としてメトホルミン塩酸塩を含む薬があります。現在、日本国内ではメトホルミン塩酸塩のみが承認されているビグアナイド薬の成分なので、「ビグアナイド薬=メトホルミン塩酸塩の薬」と考えてほぼ間違いありません。つまり、メトホルミンはビグアナイド薬の一種です。

まとめ:ビグアナイド薬について正しく理解を

ビグアナイド薬、特にメトホルミンは、2型糖尿病治療において非常に重要な役割を担う薬剤です。その主な作用機序は、肝臓からの過剰な糖放出を抑えることと、体(筋肉など)のインスリンに対する反応性を高める(インスリン抵抗性を改善する)ことです。これにより、低血糖を起こしにくい、体重増加を招きにくいといったメリットがあり、多くの患者さんにとって効果的かつ安全に使用できる薬剤です。

しかし、どの薬剤にも言えることですが、注意すべき副作用も存在します。服用初期にみられる消化器症状は一般的ですが、多くは一過性です。それよりも、頻度は稀ですが重篤化する可能性がある乳酸アシドーシスについては、そのリスク因子や症状を理解しておくことが大切です。特に、腎機能障害がある場合や、ヨード造影剤を用いた検査、手術などを受ける際には、乳酸アシドーシスを防ぐために一時的な休薬が必要となります。

糖尿病治療は、食事療法や運動療法が基本であり、それに加えて薬物療法が必要に応じて行われます。ビグアナイド薬は単独で用いられることも多いですが、他の作用機序を持つ薬剤(DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬など)と組み合わせて使用されることもあります。どの薬剤を、どの量で、どのようなタイミングで服用するかは、患者さん一人ひとりの病状、体質、合併症、ライフスタイルなどを総合的に考慮して、医師が個別に判断します。

本記事では、ビグアナイド薬について一般的な情報を提供しましたが、これはあくまで理解を深めるためのものであり、個々の患者さんの病状や治療法に関する具体的なアドバイスに代わるものではありません。ご自身の糖尿病治療について疑問や不安がある場合は、必ず担当の医師や薬剤師に相談し、指示に従ってください。薬を正しく理解し、医療専門家と連携しながら治療を進めることが、良好な血糖コントロールと健康維持につながります。

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