糖尿病 病院に行くタイミングはいつ?見逃せない初期症状と受診の目安
健康診断の結果を見て、血糖値の項目に印がついていたり、最近なんだか喉が渇きやすかったり、疲れが取れなかったり…。「もしかして糖尿病かも?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
糖尿病は自覚症状が現れにくい病気ですが、放置すると深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、適切なタイミングで病院に行き、早期に発見・治療を開始することが何よりも重要です。
この記事では、糖尿病が疑われる際に病院に行くべきタイミングについて、具体的な症状や健康診断の数値、受診すべき診療科などを詳しく解説します。少しでも気になるサインがあれば、ご自身の体と向き合うきっかけにしてください。
どんな症状があれば病院に行くべきか?
糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がないことが多いですが、血糖値が高い状態が続くと、体に様々なサインが現れ始めます。以下のような症状に心当たりがないか、チェックしてみましょう。
糖尿病の主な初期症状チェックリスト
- □ 異常に喉が渇き、水分をたくさん飲むようになった
- □ 尿の回数が増え、量も多い(特に夜間)
- □ 食べているのに体重が急に減ってきた
- □ 全身がだるく、疲れやすい
- □ 空腹感が強い
- □ 手足がしびれたり、ジンジンしたりする
- □ 皮膚が乾燥したり、かゆみが出たりする
- □ 傷や火傷が治りにくい
- □ 目がかすむ、視力が落ちてきた
- □ 集中力が続かない
- □ 立ちくらみがする
これらの症状が複数当てはまる場合は、血糖値が高くなっているサインかもしれません。早めに医療機関を受診することをおすすめします。
見過ごしやすい体のサインに注意
上記の典型的な症状以外にも、見過ごされがちな糖尿病のサインがあります。例えば、歯周病が悪化したり、足の感覚が鈍くなったり、感染症にかかりやすくなったりすることも、高血糖が影響している可能性があります。
「歳のせいかな?」「最近疲れているだけかな?」と自己判断せず、いつもと違う体の変化に気づいたら、一度専門家に相談することが大切です。
健康診断で異常を指摘されたら?
自覚症状がなくても、健康診断で血糖値の異常を指摘されるケースは非常に多く、これが病院を受診する最も重要なタイミングの一つです。
血糖値やHbA1cの基準値とは
健康診断で特に注目すべき項目は「空腹時血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」です。HbA1cは過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均を反映する指標で、糖尿病の診断において非常に重要です。
項目 | 正常型 | 境界型(糖尿病予備群) | 糖尿病型 |
---|---|---|---|
空腹時血糖値 | 110mg/dL未満 | 110~125mg/dL | 126mg/dL以上 |
HbA1c | 5.5%以下 | 5.6~6.4% | 6.5%以上 |
※上記は一般的な基準値であり、医療機関や検査方法によって多少異なる場合があります。
要再検査・要精密検査の場合の判断基準
健康診断の結果で「要再検査」や「要精密検査」と記載されていた場合は、必ず指示に従い、医療機関を受診してください。「境界型」と判定された場合も、「まだ糖尿病ではないから大丈夫」と安心はできません。これは糖尿病予備群であり、生活習慣を見直さなければ将来的に糖尿病に移行するリスクが高い状態です。
結果に不安を感じたら、自己判断せずに医師の診断を仰ぎましょう。
すぐに病院へ行くべき危険な状態
以下のような症状が現れた場合は、急激に血糖コントロールが悪化している可能性があり、緊急を要します。夜間や休日であっても、救急外来を受診することを強く推奨します。
糖尿病性昏睡など、急激な悪化を示すサイン
- 激しい喉の渇き、多飲、多尿
- 吐き気、嘔吐、激しい腹痛
- 深く大きい呼吸(過呼吸)、息が果物のような甘酸っぱい匂いがする
- 意識がもうろうとする、意識が遠のく
これらは「糖尿病ケトアシドーシス」や「高浸透圧高血糖症候群」といった、命に関わる急性合併症のサインです。ためらわずに救急車を呼ぶことも検討してください。
合併症の可能性を疑う症状
- 急激に視力が低下した、物が二重に見える
- 足の感覚がほとんどない、小さな傷に気づかない
- 足に潰瘍(かいよう)ができて治らない
- ひどいむくみ、尿の泡立ちが消えない
これらの症状は、網膜症や神経障害、腎症といった合併症が進行しているサインかもしれません。すぐに専門医の診察が必要です。
糖尿病が疑われる場合、何科を受診すべき?
「糖尿病かもしれない」と思ったら、どの病院の何科に行けば良いのでしょうか。
内科・糖尿病内科の専門医
最も適切なのは「糖尿病内科」「内分泌・代謝内科」といった専門の診療科です。専門医は糖尿病に関する知識や経験が豊富で、より詳しい検査や最新の治療を受けることができます。近くに専門のクリニックや病院があれば、そちらを受診するのが良いでしょう。もし専門科が分からない場合は、まず「内科」を受診すれば問題ありません。
まずはかかりつけ医に相談
特定の専門医を探すのが難しい場合は、いつも診てもらっているかかりつけ医に相談するのも一つの方法です。かかりつけ医が初期診断を行い、必要に応じて適切な専門医を紹介してくれます。まずは身近な医師に相談することで、受診へのハードルも下がるでしょう。
病院での診察・検査の流れ
病院に行くのが初めてで不安な方のために、一般的な診察・検査の流れをご紹介します。
1. 問診で症状や既往歴を確認
まず、医師から以下のようなことを質問されます。
- いつから、どのような症状があるか
- 食生活や運動習慣について
- ご家族に糖尿病の方がいるか(家族歴)
- 過去の病気や現在治療中の病気について
- 健康診断の結果
事前に気になる症状などをメモしておくと、スムーズに伝えられます。
2. 糖尿病診断のための主要検査
問診の後、診断のためにいくつかの検査を行います。
- 血液検査: 血糖値やHbA1cなどを測定します。食事の影響を避けるため、朝食を抜いて受診するよう指示されることがあります。
- 尿検査: 尿中の糖やケトン体、タンパク質の有無を調べます。
- 経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT): 診断を確定するため、ブドウ糖液を飲んだ後の血糖値の変動を詳しく調べる検査です。
これらの結果を総合的に判断し、医師が糖尿病かどうかを診断します。
糖尿病を放置するリスクとは?
「まだ症状が軽いから大丈夫」と受診を先延ばしにすると、気づかないうちに病状が進行し、全身に様々な悪影響を及ぼします。特に怖いのが「合併症」です。
重篤な合併症(神経障害・網膜症・腎症)
糖尿病の三大合併症と呼ばれ、生活の質を著しく低下させる可能性があります。
- 神経障害: 手足のしびれや痛みから始まり、進行すると感覚が麻痺して怪我ややけどに気づかなくなり、足の壊疽(えそ)から切断に至ることもあります。
- 網膜症: 目の網膜の血管が傷つき、視力低下を引き起こします。進行すると失明に至る可能性があり、日本における成人の失明原因の上位を占めています。
- 腎症: 腎臓の機能が低下し、体内の老廃物をろ過できなくなります。進行すると人工透析が必要になり、生涯にわたって治療を続けなければなりません。
その他の全身への影響
高血糖は全身の血管を傷つけるため、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気のリスクも高めます。その他にも、歯周病、認知症、足病変、感染症など、様々な病気との関連が指摘されています。
早期発見・早期治療の重要性
糖尿病を放置するリスクは非常に大きいですが、逆に言えば、早く見つけて早く治療を始めれば、これらの合併症の多くは防ぐことができます。
初期の段階であれば、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善だけで血糖値を良好にコントロールできるケースも少なくありません。薬物療法が必要になった場合でも、早期から適切に治療を行うことで、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることが可能です。
まとめ|気になる症状があれば迷わず受診を
糖尿病の治療は、いかに早くスタートを切れるかが鍵となります。病院に行くべきタイミングをまとめると、以下のようになります。
- 喉の渇き、頻尿、体重減少などの自覚症状がある時
- 健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された時
- 意識障害や激しい嘔吐など、危険なサインが現れた時(この場合は救急へ)
「もしかして?」と感じたら、決して自己判断で放置しないでください。ご自身の未来の健康を守るため、まずは勇気を出して医療機関のドアを叩きましょう。かかりつけ医や内科、糖尿病内科の医師が、あなたの不安に寄り添い、最適なサポートをしてくれるはずです。
本記事は医学的な診断や治療を推奨するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。