塩分の多い食べ物と減塩に向けた食事のコツ
塩分の多い食べ物は、生活習慣病のリスクを高めます。普段特に塩分の多い食事をしているつもりがなくても、実は塩分過多なケースは多いものです。
※この記事では、塩分の多い食べ物や減塩に向けた食事のコツを紹介していきます。なお、ここで紹介する塩分量の数値は目安であり、メーカーや商品によって異なる点にはご留意ください。
目次
4.食塩摂取量の目標値は、男性7.5g未満・女性6.5g未満
塩分の多い食べ物とは?
塩分の多い食べ物としては、ラーメンやうどん、焼きそば、丼ものなどがあげられます。塩分の多い食べ物として代表的なものと、含まれる塩分量は次の通りです。
食べ物 |
塩分 |
ラーメン |
5.5~8.0g |
カップそば |
5.7〜 6.6g |
うどん |
4.1〜6.6g |
牛丼 |
5.3g |
カップ焼きそば |
4.9g |
パスタ |
3.6〜4.8g |
カツ丼 |
3.6~4.2g |
寿司(10貫) |
3.7g |
袋タイプの焼きそば |
3.5g |
カレーライス |
3.3g |
即席味噌汁 |
2.0g |
梅干し |
1.8g |
塩鮭、あじの開き(80g) |
1.4g |
高菜の漬物、きゅうりの漬物 |
1.2g |
辛子明太子 |
1.1g |
たくあん(2切れ) |
0.9g |
2020年版日本人の食事摂取基準によると、健康のための食塩摂取量の目標値は男性7.5g未満・女性6.5g未満です。また、高血圧や慢性腎臓病の場合は、重症化を予防するため男女問わず6.0g未満が望ましいとされています。
いずれにしても、1日の塩分摂取量の目標値は、ラーメン1食で超えてしまうこともあるほど少ないのです。
身体に優しいイメージをもつうどんですが、スープだけでなく麺にも食塩が練りこまれています。きつねうどんの揚げなど具にも塩分が入っていることがあるため、塩分量に注意して食べるべきといえるでしょう。
袋タイプのソフト麺については、麺自体の塩分は0.5gと少ないですが、付属のソースに3.0gと塩分が多く含まれています。
漬物類や焼き魚、味噌汁は上記表の中では塩分量が低い方ですが、1食の中で合わせて食べることも多いため、総合すると塩分量が多くなります。健康的な印象の強い自炊であっても塩分量が1日の目標摂取量を超えることは十分にあり、油断はできません。
意外に多い塩分の多い食べ物
あまり塩分の多いイメージがない食べ物でも、実は多くの塩分が含まれていたり、相性の良い食べ物と組み合わせることで塩分が多くなったりすることがあります。
例えば食パンには約0.8gの塩分が練りこまれています。朝食で塩や醤油をかけた目玉焼き、ベーコンなどと合わせて食べると、朝食だけでも塩分摂取量が多くなります。
白米には塩分は含まれていませんが、鮭おにぎりには約1.4g、梅おにぎりだと約1gの塩分量となります。味付き海苔を巻いたり即席味噌汁を合わせたりすれば、1日の食塩摂取量の目標値の約半分に達してしまいます。
ワインのお供として多く食べてしまいがちなチーズも、塩分が多い食品です。とくにハードタイプは熟成期間が長く水分が抜けている分、フレッシュタイプよりも塩分濃度が高くなっています。
加工食品も、食べ過ぎには要注意です。ウインナーには1本あたり約0.3g、ハムやベーコンには1枚あたり約0.5gほどの塩分が含まれています。ちくわやさつま揚げ、焼き豚などの塩分量は、0.6〜0.7g程度です。
こうして考えると、とくに塩分の多い食事をしているつもりがなくても、1日の塩分摂取量は簡単に目標値を超えてしまうことがわかるでしょう。
塩分を取り過ぎるとどうなる?
塩分を摂り過ぎると、次のような健康上のリスクが生じます。
- 高血圧
- 胃がん
- 腎結石
- 骨粗鬆症
高血圧は、塩分の摂り過ぎで血液中のナトリウムが増えることで生じやすくなります。ナトリウムの濃度を一定にするために血管内に周囲の水分が引きこまれ、血液の量が増えることで、血管壁に圧力がかかって血圧が上がってしまうのです。
さらに、高血圧により血管が傷つきやすくなると、動脈硬化が進みます。その結果、狭心症や心筋梗塞といった心疾患、脳出血や脳梗塞といった脳血管疾患を引き起こす恐れもあります。
20歳以上の高血圧症有病者の割合は、男性で57.4%、女性で42.1%です。日本人の半数が既にリスクが高いといっても過言ではないため、日頃からの注意が必要です。
また、塩分の摂り過ぎは胃がんにもつながることがわかっています。胃の中で塩分濃度が高まると、胃の粘膜が傷つきます。胃の粘膜が傷つくと胃炎が起こりやすくなり、発がん物質の影響を受けやすくなるのです。
心疾患や脳血管疾患は突然死を引き起こすこともありますし、胃がんも命に関わる重大な病気なので、日頃から塩分摂取量に気を配ることが重要です。
腎結石は、塩分の過剰摂取により尿中のカルシウム排泄量が増加し、尿酸ナトリウム塩ができやすくなることが一因と言われています。また、塩分を取り過ぎると、結石ができるのを防ぐ尿中クエン酸排泄量も減ってしまうのです。
骨粗鬆症は、過剰に摂取した塩分がカルシウムと結合して身体の外に出てしまうことから生じやすくなります。意識的にカルシウムを摂取していても、塩分過多では効果が薄れてしまうでしょう。
食塩摂取量の目標値は、男性7.5g未満・女性6.5g未満
先述の通り、2020年版日本人の食事摂取基準によると、健康のための食塩摂取量の目標値は、男性7.5g未満・女性6.5g未満とされています。
しかし、実際に日本人が1日に摂取している塩分量の平均は、男性で11.0g、女性で9.3gといずれも目標値の約1.4倍多く、約3.0~4.0g超過しています(平成30年国民健康・栄養調査結果より)。
地域別に見ると、日本人の平均塩分摂取量を超えているエリアは次の通りです。(厚生労働省 『平成28年 国民健康・栄養調査』)
- 男性
- 東北:11.5g
- 北九州:11.2g
- 北陸:11.1
- 女性
- 東北:9.7g
- 関東:9.4g
- 北陸:9.3g
男女ともに、東北・北陸の摂取量が多いことがわかります。男女ともに塩分摂取量が最も低かったのは近畿地方で、男性10.3g、女性8.7gです。しかし、それでも1日あたりの塩分摂取量の目標値を超えていますし、東北や北陸とそれほど大きな差があるわけでありません。
減塩に取り組むには、まず商品ごとの塩分量を計算する必要があります。商品の包装に栄養成分表示があれば、塩分量を計算できます。なお、ナトリウムの量がそのまま食塩の量と思っている人も多いですが、これは誤りです。
「食塩(g)=ナトリウム×2.54」として計算しましょう。
塩分の少ない調味料を知ろう
減塩のためにはまず、塩分の少ない調味料を知りましょう。調味料大さじ1杯あたりの塩分量は次の通りです。
食塩 |
17.8g |
濃口しょうゆ |
2.6g |
米味噌 |
2.2g |
豆味噌 |
2.0g |
めんつゆ(3倍濃縮) |
1.7g |
ウスターソース |
1.5g |
ポン酢 |
1.0g |
ケチャップ |
0.5g |
マヨネーズ |
0.3g |
例えばおひたしは醤油よりもめんつゆやポン酢で味付けする、魚は塩焼きではなく味噌煮にするなどの工夫ができます。
塩分の多い調味料を使った料理が1つあるなら、他の料理では塩分を控えるのもポイントです。煮物なら、昆布やかつお節でだしをとったり、干ししいたけやトマト、豚肉などうまみの強い食品を使ったりすると、塩分控えめでもしっかり味のする料理になります。
スパイスや酸味、薬味を使用する
塩の代わりにスパイスや酸味、薬味を用いることも、減塩のコツです。わさびや生姜、胡椒や唐辛子、山椒、カレー粉などの薬味や香辛料を用いると、味にメリハリがつくので塩分を減らすことによる物足りなさを解消できます。
減塩により味に締まりがないように感じる場合は、スパイスやレモン、ゆず、酢などで酸味を効かせても良いでしょう。ほかにもしそやみょうが、生姜、ねぎなどの香味野菜も独特の風味が味のアクセントになり、減塩による薄味感をカモフラージュできます。
このように、スパイスや酸味、薬味も塩分の代わりに活用すれば、料理のおいしさはそのままに、ストレスなく減塩に取り組めるでしょう。
スープを飲み干さない
スープ類を飲み干さないということも、減塩のために重要です。たとえば麺料理は、麺とスープの両方に塩分が含まれています。塩分量が6.3gのラーメンを食べても、スープを全部残せば塩分量は2.3gほどになり、半分残せば塩分量は4.2gほどに抑えられるのです。
味噌汁についても、インスタント味噌汁の中には塩分量が2g近いものがあり、家庭で作る味噌汁の塩分量1.5gよりも多くなっています。定食屋などで出てくる味噌汁はさらに味が濃く塩分量が多いこともあるので要注意です。家で味噌汁を飲む場合はできるだけインスタントを避け、外食先では可能であれば味噌汁を断るなどすると、減塩につながるでしょう。
家で味噌汁を作る場合は、さまざまな具を入れることでそれぞれの食材のうまみが溶け出すため、塩分を含む味噌や顆粒だしなどを減らしてもおいしくなります。具が多いと汁が少なく済むので、そうした意味でも減塩になるでしょう。
塩蔵品を控える
塩蔵品とは、漬物や練り物、ハム・ソーセージ類などのことです。これらにはもともと塩分が多く含まれているので、食べ過ぎに注意することで塩分摂取量を減らしましょう。
加工肉を味付けする際は調味料を控えたり胡椒などのスパイスのみを使ったりして、塩分を加え過ぎないようにすることも重要です。なお、ハムやベーコンは下茹ですると塩分や脂を落とせるので健康的です。
漬物類については、とくにカレーライスに添える福神漬けやらっきょう、親子丼に添える紅生姜に注意しましょう。カレーライスや親子丼には既に塩分が含まれているので、減塩を思うなら添えない方が望ましいです。健康目的で毎日食べることもある梅干しも塩分量が多いため、減塩タイプを選んだり食べるペースを落としたりしましょう。
腹八分目を心掛ける
腹八分目を心掛けることも、減塩のコツです。塩分控えめの食事を作っても、食べ過ぎると結果的に塩分の摂取量が多くなる可能性があります。また、食べ過ぎは高血圧の一因である肥満につながるリスクもあります。朝食のパンを小さいものにする、おかずのおかわりを控えるなどして、常に腹八分目を意識しましょう。
お酒も控えめに
減塩のためにはお酒も控えめにしましょう。お酒のおつまみは味が濃いことが多いため、お酒が進んでおつまみを多く食べれば塩分過多になってしまいます。摂取する総カロリーが増えることで肥満につながるおそれもあります。酔いが回ると満腹を感じにくくなり食べ過ぎてしまいがちなので、お酒も控えめにしましょう。
具体的には、1日あたり1gの減塩により血圧が1mmHg下がると言われています。例えば1日の塩分摂取量が12g前後の方が6gまで減塩すると、血圧は7mmHg下がるのです。定期的に血圧を測れば効果が目に見えるため、前向きに減塩できるでしょう。
塩分の多い食べ物を控えることに加え、降圧効果のある野菜、フルーツ、豆・大豆加工品、ヨーグルト、ナッツを食べるとさらに効果的です。バランスの良い食事で健康を目指していきましょう。