実は身近な病気!?統合失調症の症状・治療について解説
統合失調症は幻聴や妄想などの症状が現れるこころの病気です。脳の神経伝達物質の分泌のバランスが乱れることで発症するとされてはいますが、その原因はまだわかっていません。
100人に1人ほどに発症し比較的頻度が高く、妄想や幻覚、幻聴などの陽性症状と、意欲低下や睡眠障害などの陰性症状がみられます。早期に発見し適切な治療を行うことが、病気のコントロールと病状の回復には欠かせません。
そこで、本記事では統合失調症の症状、治療方法について解説します。
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統合失調症とは?
統合失調症とは、脳の神経伝達物質の分泌のバランスが乱れることで、妄想や幻聴・幻覚、思考のまとまらなさなどさまざまな症状が現れる病気です。100人に1人程度の割合で発症する可能性がある病気で、国内では約80万人の患者がいると推計されています。
「約80万人」は2022年の日本の出生数とほぼ同じ人数なので、意外と身近な病気ということがお分かりいただけるかと思います。統合失調症の約80%が思春期から40歳くらいまでの若い年代に発症します。そのため学校生活や仕事などの社会生活に大きな支障が出るケースが少なくありません。
統合失調症の原因
統合失調症の原因は、まだ確実には解明されていません。現時点では遺伝や環境的な要因、ドーパミンなど脳の神経伝達物質のバランスが崩れた影響など、いくつかの要因が関係しあって発症するのではないかと考えられています。
統合失調症の症状
統合失調症の症状には個人差があり、発症初期はうつ病や発達障害と見分けがつきにくいです。
しかし病状が進行すると、聞こえないはずの声が聞こえる“幻聴”や見えないはずの人や物が見える”幻覚”などの特徴的な症状が現れます。
統合失調症は、その症状から次の3つのタイプにわけられます。
妄想型 | 幻覚・幻聴、妄想が現れる |
解体型 | 考えがまとまらず感情や意欲が乏しくなる |
緊張型 | 興奮したり混乱したりする |
また、統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」の2つにわけられます。
陽性症状 | 幻覚・幻聴、妄想、行動や会話にまとまりがなくなる、興奮して叫ぶ |
陰性症状 | 意欲が低下する、集中できない、周囲に無関心になる、ひきこもる |
統合失調症の経過
病気の進行に応じて、前兆期→急性期→回復期→安定・慢性期とわけられます。病気の初期段階である前兆期は、不安や不眠などの症状が現れやすい特徴があります。これらの症状は、うつ病やそのほかの精神疾患でもみられるため、他の病気と区別がしにくいです。
急性期には、幻覚・幻聴、妄想などの陽性症状や引きこもり・うつなどの陰性症状が目立ちます。この時期に統合失調症と診断される人が多いです。
なかには急性期と回復期の間に消耗期(休息期)とよばれる、時期がくるケースもあります。休息期は長いと数か月の時間を要するので、焦らず無理のない生活をして、心と体をしっかりと休めることも必要です。
回復期になると、少しずつですが幻覚や妄想、幻聴などの陽性症状が現れにくくなります。反対に陰性症状は残りやすいといわれていますが、以前よりも症状は落ち着いてくる人がほとんどです。治療の効果が現れ、より症状が落ち着いてくる時期を安定・慢性期といいますが、なかには陰性症状が残る人もいます。
統合失調症の診断・検査
統合失調症は、陽性症状・陰性症状などの症状や経過から総合的に判断されます。脳や甲状腺などの病気が隠れていないかを確認するために、採血やCT・MRIなどの画像診断をおこなうケースもあります。
統合失調症とほかの精神疾患の違い
統合失調症とうつ病や躁うつ病、気分障害などの精神疾患は、共通する症状が少なくありません。たとえば、気分の落ち込みや意欲の低下、引きこもりなどは統合失調症の陰性症状にもうつ病にもみられる症状です。
幻覚・幻聴、妄想などの陽性症状は、ほかの精神疾患にはあまりみられない傾向があります。
さらに躁病・うつ病・躁うつ病などでは、躁やうつが落ち着くと比較的正常な精神状態に戻ります。
しかし統合失調症の場合には、陰性症状と陽性症状の間に正常な精神状態がないのも、ほかの精神疾患との大きな違いです。
統合失調症になりやすい人の傾向や特徴
統合失調症になりやすい人の傾向や特徴は、まだはっきりとはわかっていません。
しかし、身体的・性的虐待を受けた人、過度なストレスや緊張を強いられている人、家族問題を抱えている人が統合失調症を発症するリスクが高いといわれています。
血縁関係による発症リスク
統合失調症の発症リスクは、性別や国籍による差はありませんが、遺伝と関係しているとされ、次のような差がしめされています。
- 血縁者に統合失調症の人がいない場合:100人に1人
- 両親のどちらかが統合失調症を発症している場合:10人に1人
- 異なる遺伝子を持つ二卵性双生児の場合: 8人に1人
- 同じ遺伝子を持つ一卵性双生児で一人が統合失調症の場合:半分の確立でもう一人も統合失調症を発症
統合失調症の治療と経過
以前は統合失調症を発症すると、精神科などの閉鎖病棟で長期間に渡る入院治療が必要とされていました。しかしながら、最近では新薬の開発が進み、統合失調症を抱える人へのサポート体制が充実してきています。その結果、必要に応じて精神科病棟で入院治療をおこない、回復期や維時期には通院治療をする患者さんが増えています。
統合失調症の治療
統合失調症の治療は大きく以下の2つにわけられます。
- 薬物療法
- 精神科リハビリテーション
薬物療法
抗精神病薬など、脳の神経伝達物質の分泌のバランスを整える薬を服用します。
そのほかに、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬を併用して緊張や興奮・抑うつをやわらげ、陽性症状や陰性症状の改善を目指します。
勝手に薬をやめると症状が強く現れたり、治りにくくなったりしてしまうので、自分で薬をやめたりしてはいけません。
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精神科リハビリテーション
デイケアや作業療法・生活技能訓練などを通して、自己効力感や達成感を得たり、社会生活への順応を目指したりします。
これらの治療は、規則正しい生活リズムを取り戻したり、体力を回復させたり、人間関係を築いたりするのにも役立ち、社会復帰にも繋がるとても重要なものです。
心理療法ではカウンセリングを受けたりするだけでなく、自分の病気を受け止め、統合失調症の陽性症状や陰性症状や薬との付き合い方などを学び、再発を防ぐスキルを身につけます。
統合失調症はよくなる?
残念なことですが、統合失調症の患者さんの全員が完治するわけではなく、再発しやすい病気です。
イギリスの大学は5人の統合失調症の患者さんがいた場合、次のような経過を辿るとまとめています。
- 1人ははじめに症状が現れてから、5年以内に統合失調症から回復します
- 3人は統合失調症から回復しますが、統合失調症を再発する可能性があります
- 残りの1人は、統合失調症が治りにくく、症状も続きます
しかし、適切な治療を受ければ症状は落ち着き、社会復帰が見込めます。
できるだけ早期に適切な治療を受けることをおすすめします。
統合失調症の治療を受けないとどうなる?
統合失調症の初期の段階で適切な治療を受ける人と、そうでない人とを比べて次のような違いが出ることがわかっています。
- 入院の必要性が減る
- 万が一入院しても、入院期間が短くなる
- 社会復帰できる可能性が高くなる
- 自殺率が下がる
また、重症化したり慢性化して治りにくくなったり、仕事や生活がうまくいかなかったりするリスクも高くなってしまいます。
まとめ
統合失調症は誰でも発症する可能性がある病気です。原因もはっきりと解明されておらず、再発する人や治療が長期に渡る人も少なくありません。
また、うつ病や発達障害などと区別が付きにくく、学校や仕事・日常生活に影響に支障をきたすようになってからやっと病院にたどり着く人も多いです。
眠れない・やる気がおこらないだけでなく、知らない人の声が聞こえたり、姿が見えたり、誰かに指示されたりするような経験をしているケースは、統合失調症の可能性があるかもしれません。
統合失調症は早期の診断・治療が、重症化予防と再発防止には欠かせません。もし気になる症状がある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
参考資料
厚生労働省 e‐ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/inf
ormation/dictionary/heart/yk-071.html
Schizophrenia Royal College of Psychiatrists
https://www.rcpsych.ac.uk/mental-health/translations/japanese/schizophrenia
統合失調症とは 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
https://www.hosp.ncgm.go.jp/aboutus/medicalnote/s013/001/index.html
統合失調症薬物治療ガイドライン
https://www.jsnp-org.jp/csrinfo/img/togo_guideline2022.pdf