小学生でも水疱瘡にかかることはある?症状や受診時の注意点などを解説
子どもの頃にかかることが多い感染症の一つである水疱瘡。小学生の子どもをお持ちの親御さんにとって「小学生でも水疱瘡に罹ることはあるのだろうか」と気になっている方もいるかと思います。
小学生でも水疱瘡にかかることがあり、症状は軽めの方もいますが、400人に1人の割合で重症化することがあり「水疱瘡かもしれない」と思ったら、早めに受診をするのが大切です。
そこで、今回は小学生の水疱瘡について初期症状や完治するまでの日数、学校は欠席扱いとなるのか、受診の目安などを解説していきます。
水疱瘡は小学生でもかかることはある?
水疱瘡は、10歳までに9割の方がかかる感染症です。2014年に水疱瘡のワクチンが定期接種になったため、生後12ヶ月〜15ヶ月の間に2回ワクチンを接種しますが、予防接種を受けていない子どもやまだ水疱瘡にかかったことのない子どもは小学生で水疱瘡にかかることがあります。
以前は乳幼児の子どもが中心でしたが、2015年以降は小学生でかかる方が多くなっているため、水疱瘡の知識を持っておくと安心です。
はじめに、小学生が水疱瘡にかかったときに治るまで何日ぐらいかかるのか、登校再開はいつからできるのかなどを見ていきましょう。
感染した場合は出席停止
水疱瘡に感染した場合は、インフルエンザやおたふくかぜと同様に学校に登校することができない出席停止となります。出席停止とは生徒が学校へ登校するのを停止することで、欠席扱いにはならないのが特徴です。
学校保健安全法において集団生活を営む学校は感染症が広がりやすいため、拡大防止のために出席停止になる旨が定められています。
出席停止となる感染症は第1種から第3種に分けられており、水疱瘡は第2種の感染症に分類されています。そのため、水疱瘡にかかった場合は、出席停止となり休まなければならないのです。
治るまでの日数は何日?登校再開は完治してから
水疱瘡が治るまでの日数は7日前後ですが一人ひとり異なるため、10日以上かかる方もいます。
水疱瘡は水ぶくれを伴う発疹が出るため、全ての発疹がかさぶたになったときが完治の目安です。登校再開のためには完治したことを証明する治癒証明証や、登校ができることを証明する登校許可証が必要となる学校もあります。
これらの証明書を発行してもらうためには医師による診察が必要となるため、全ての発疹がかさぶたになった頃に医師の診察を受けるようにしましょう。証明証が発行されたら登校が再開できるようになります。
同じクラスの子が水疱瘡になったときの対処法
集団生活を送っていると、同じクラスの子が水疱瘡にかかることもあり得ますね。水疱瘡にかかったことがわかったときの対処法として、接触してから72時間以内に水痘ワクチンを緊急接種する方法があります。
発症を食い止めたり、発症しても症状を軽くしたりできる可能性があるため、接触してから早めにワクチン接種をするのもおすすめです。
水疱瘡とはどんな病気?
水疱瘡とは、ヘルペスウイルスの1つである「水痘帯状発疹ウイルス」によって、発症する感染症の1つです。感染力があり、家庭内で接触すると約90%の発症率と言われています。
国立感染症研究所の発表によると、2014年に水痘ワクチンの予防接種が定期化してからはかかる方が少なくなっており、コロナウイルス感染症が流行してからはさらに少なくなりました。
しかし、年代別に見ると5歳〜9歳までの小学生低学年で発症する割合が高いため、水疱瘡について知識を身につけておくことが大切です。そこで、水疱瘡の症状や感染経路について詳しく解説します。
水疱瘡の感染経路は空気・接触・飛沫の3つ
水疱瘡は、空気感染・接触感染・飛沫感染の3つの経路で感染をします。空気感染は、空気中のウイルスを吸い込むことで発症する経路のことを指します。水疱瘡にかかっている方の唾液や鼻水、痰や便にはウイルスが存在しています。
咳やくしゃみをすると、唾液や鼻水と一緒にウイルスが体外に排出されるのです。ウイルスの周りに水分の膜があり、排出されたウイルスは水分に守られています。水分は重さがあるため、体外に排出されても一度は机や床などに付着します。
時間が経つとウイルスの周りの水分が蒸発し、重さが軽くなるため、空気中を漂うようになります。このウイルスを吸い込むことで発症するのが空気感染です。
接触感染は、咳やくしゃみをしたときに勢いで唾液や鼻水が水しぶきとなって飛びます。この水しぶきを吸い込むのが飛沫感染となっています。
接触感染は、ウイルスが含まれている唾液などを間接的に触ることで体内にウイルスが入り込む経路のことです。
ウイルスを保有している方が、咳やくしゃみを手で受け止めたあと、その手でドアノブなど他の場所を触るとその部分にウイルスが付着し、別の方がそのドアノブなどを触ることでウイルスと間接的に接触します。
ウイルスが付着した手で、食べ物を食べたり口や鼻を触ったりすることにより、体の中にウイルスが入り感染するため、消毒や手洗いが重要です。
流行する時期と潜伏期間
水疱瘡が流行する時期は12月〜7月の冬から夏にかけてですが、8月〜11月にもかかる方もいるため、1年を通してかかる可能性があります。
潜伏期間は10日〜20日と長いのが特徴です。体にウイルスが入り込むと、リンパ内で増殖します。感染から4日〜6日後には血中にウイルスが排出され、臓器や他の部位へウイルスが運ばれます。臓器や他の部位でさらにウイルスが増殖し、数日後に再度、血中にウイルスが排出されると症状が出始めるのです。
水疱瘡では発疹が代表的な症状ですが、出始める48時間前からかさぶたになるまで感染力があり、発疹が出る当日は一番感染力が強いと言われています。このように感染力が強いため、学校への出席が停止となるのです。
水疱瘡の初期症状
水疱瘡を発症したときに見られる症状は、蚊に刺されたような発疹や37度台〜38度台の微熱ですが、子どもでは発疹が先に出始めることの方が多いです。
発疹が出る順番として頭皮、体、手足となっており、全身に発疹が出始める前に、頭皮に発疹が見られる方が多いため、早めに気づくことが重要となります。
しかし頭皮の場所によっては気づきにくく、数個の発疹は蚊に刺されたときと似ているため見えづらいです。またワクチンの接種が定期化されたことで接種する方が増え、初期症状が軽い方も多くなっています。
毎日発疹が増えることが水疱瘡の特徴のため、日に日に数が多くなっていく場合には水疱瘡を疑いましょう。
水疱瘡の代表的な症状
蚊に刺されたような発疹が初期症状ですが、代表的な症状は、かゆみのある水ぶくれを伴う全身の発疹です。発疹は次第にプクッと少し大きくなり、赤みが増します。その後、水ぶくれが形成され、水ぶくれの周りに赤みが出るのです。
最初に頭部や腹部に発疹が出始めてから、数日かけて発疹がどんどん増えていくため、発疹や水ぶくれ、かさぶたが混在することが水疱瘡の特徴となっています。発疹はかゆみの程度が強いため、水疱瘡にかかったときには、かきむしらないようにすることが重要です。
水疱瘡の死亡率は10万人に1人ほど、100人に1人の割合で重症化をする感染症となっています。健康な子どもは合併症の危険性は低いですが、合併症として脱水や肺炎、髄膜炎や脳炎などが挙げられ、発疹が出ている際にアスピリンを服用した場合にはライ症候群を引き起こすことがあるため、免疫機能が落ちているときには注意が必要です。
水疱瘡は大人にもうつる?
水疱瘡は大人にもうつる可能性があり、家庭内感染を起こしやすい感染症です。家庭内での感染率は90%と高く、さらに空気感染や接触感染でうつるため、直接接触をしていなくても感染する可能性があります。
大人は全身のだるさと1日〜2日の発熱が初期症状のことが多く、その後子どもと同じように全身に発疹が出ます。そのため、全ての発疹がかさぶたになるまでは学校や仕事を休み、感染を広げないようにしましょう。
健康な子どもでは、合併症の危険性や死亡率も低いですが、15歳以上の方は合併症の発症率が上がり、脳炎になる方が多いです。死亡率に関しては、10万人あたり15歳〜19歳は2.7例、30歳〜49歳は25.2例となります。
子どもよりも大人の方が合併症にもなりやすく死亡率も高いため、前もって対策をしておくことが重要です。
2014年から水痘ワクチンが定期化され2回受ける形になりましたが、それ以前は自分や親御さんが接種するか決められる任意接種だったため、ワクチンを接種してない方もいます。
そのため、まだ水疱瘡にかかったことのない方はワクチンを2回接種するのがおすすめです。また、妊娠している方が水疱瘡にかかると流産や肺炎などのリスクがあり、お腹の中にいる赤ちゃんには手足の低形成などの多発先天奇形の危険性があります。
前もって予防接種をしておくと安心です。
病院を受診する目安と注意点
初期症状が蚊に刺されたような発疹のため、出始めに水疱瘡と気付きにくいですが、発疹を見つけたら早めの受診が重要です。水疱瘡が疑われる場合には、小児科もしくは皮膚科を受診するようにしましょう。
そこで、病院を受診する目安や受診をする際の注意点をはじめ、治療方法と自宅での注意点について解説していきます。
受診する目安
病院を受診する目安は頭皮に発熱を見つけたときと発熱がある場合です。水疱瘡は発疹が出始める48時間前から感染力が強まるため、発疹が出た時点ですでに他の人に移す力を持っている状態となります。
子どもによっては発疹よりも発熱が先に見られる場合もあります。周りに移さないためにも、早めに受診をしましょう。
低学年の子どもは、だるさや全身のかゆみなどをうまく伝えられない可能性もあるため、周りに水疱瘡にかかった子どもがいる場合には、食欲や体調を注意深く見守ることが重要です。
多くの子どもは、水疱瘡になるとはじめに頭皮に発疹が出るので、頭皮に発疹がないかも普段から合わせて確認しておくと早期発見できます。発疹を見つけたらすぐに受診をするようにしましょう。
発症から48時間以内の受診がおすすめ
発症後、48時間以内に抗ウイルス薬のアシクロビルを飲み始めると、症状を軽くできる可能性があります。そのため、発疹が出始めてから出来るだけ早めに、もしくは48時間以内に受診をするようにしましょう。
家庭内感染をしやすい水疱瘡に対しては、発症を予想した日の1週間前からアシクロビルを飲み始めることができます。事前の内服は、症状を軽くしたり免疫反応を得られたりするため、子どもがかかったときには内服しておくのもおすすめです。
受診をする際の注意点
病院を受診する際には、水疱瘡の可能性があることを必ず伝えるようにしましょう。水疱瘡は感染力が強く、空気・接触・飛沫感染をするため、受診時に他の子どもや大人に移してしまう可能性が高いです。
診察まで別室に案内をされる病院もあり、事前に準備が必要な所もあります。そのため、受診前には電話で伝えるもしくは受付時に水疱瘡の可能性を必ず伝えるようにしましょう。
受診をすると、抗ウイルス薬だけではなく、熱を下げる薬やかゆみを抑える薬も処方してもらえることもあります。
夜間や休日に症状が出たときの対処法
お風呂上がりや学校が休みの夜間、休日に発疹や発熱などの水疱瘡の症状が出る可能性もゼロではありません。水疱瘡は発症してから48時間以内の投薬で症状を軽くすることが期待できますが、連休や夜間、休日は診察をしていない病院も多く、その場合には翌診察日まで待たなければいけないこともあります。
48時間以内の内服で症状の軽減が期待できるので、オンラインで診察をしたり自宅まで往診をしてくれるサービスを利用したりするのがおすすめです。オンラインでの診察や自宅で往診をする場合、外に出る必要がないため、他の方に移す心配なく診察を受けることができます。
利用する場合には、24時間365日休みなく対応しており、全国に対応しているところを選ぶのが良いでしょう。
水疱瘡の治療方法と自宅での注意点
水疱瘡にかかった場合、抗ウイルス薬が処方されることもありますが、発症してからの日数によっては抗ウイルス薬の服用ができないこともあります。
解熱剤やかゆみ止めが処方されることもありますが、これらは今ある症状を和らげる薬です。ウイルスを少なくするものではないため、自然に治るのを待つ治療方法となります。
自宅で治るまでの間、かゆみが強いため、掻きむしらないように注意しましょう。その他には、マスクでの感染防止や食器類やタオル類を同じものを使わないのも家庭内感染を防ぐのに有効です。
お風呂に浸かったり動き回ったりすると体温が上がりますが、体温が上がるとかゆみの程度が強くなるため、体温に気をつけて過ごすようにしてください。
水疱瘡は早期発見・早期受診が重要
2014年以降は小学生での水疱瘡発症が多く、小学生で初めて水疱瘡にかかる子どももいます。感染力が強いため、初期症状の頭部の発疹や発熱に気が付いたら早めに受診するのがおすすめです。
水疱瘡と診断をされると、学校へは完治するまで登校することができません。全ての発疹や水ぶくれが、かさぶたに変わった頃が完治の目安となりますが、登校再開のために、許可証の発行が必要な学校もあります。
完治かどうかは医師の診察が必要なため、受診をするようにしましょう。
また、水疱瘡を早期発見するために、流行する12月〜7月にかけて発熱や子どもの様子、発疹がないかを注意深く見ておくのが早期発見のポイントです。
参照サイト一覧
・学校保険安全法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC0000000056)
・公益財団法人日本学校保健会(https://www.hokenkai.or.jp/kaiho/pdf/0097_311_b.pdf)
・国立感染症研究所(https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/10892-varicella-20220113.html)
・オトナのVPD(http://otona.know-vpd.jp/vpd/chiken.html)