血糖値を下げる方法|上下する要因と正常値を解説
毎日の食事から得られる栄養素は、私たちの日々の活動を支える燃料となります。その中でも、糖分は特にエネルギー源として働きます。しかし、この血糖値が適切な範囲を超えて上昇すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
糖尿病は、血糖が高い状態が続くことで起こる病気で、全世界で増加している健康問題の一つです。しかし、生活習慣の改善や食事に気を付けることで、血糖値はコントロール可能です。
そこで、この記事ではなぜ血糖値が上下するのかその要因と、血糖値の目標値、さらには「血糖値を下げる」方法についてわかりやすく解説します。
血糖値を上げる要因・下げる要因
そもそも血糖値はなぜ上がったり下がったりするのでしょうか。まずは血糖値を上げる要因と、下げる要因について解説します。実は血糖値は、1日中ずっと同じ値で保たれているわけではありません。
下図のように食事だけでなく、勉強や仕事・運動、ストレスなどで常に変動しています。
血糖値を上げる要因
まずは血糖値を上げる要因を紹介します。具体的には、次のようなものがあります。
- 糖質を含む飲み物や食べ物
- 膵臓や甲状腺などの病気
- 肥満
- ストレス
- 感染症
- 薬
- 早朝の成長ホルモンの分泌
血糖値を上げる代表的な要因は、糖質を含む飲食をした場合です。とくにショ糖を含んだ甘味やジュースは、果物や炭水化物と比べて急激に血糖値を高くするため注意が必要です。
そのほかにも、膵臓の病気でインスリンの分泌が悪くなったり、肥満でインスリン抵抗性が生じたり、ストレスで血糖を上昇させるホルモンが増えてしまったりと原因は多岐にわたります。
また感染症にかかると、病原菌と戦うサイトカインという物質が体内のインスリンを効きにくくしてしまい、血糖値が高くなります。
薬も例外ではありません。
ステロイド薬やブドウ糖がたくさん含まれている点滴、一部の抗悪性腫瘍薬や免疫抑制剤、第二世代抗精神病薬、インターフェロン製剤、サイアザイド系利尿薬、βブロッカー・プロテアーゼ阻害剤など。血糖値を上げてしまう可能性がある薬には、とてもたくさんの種類があるのです。
また、夜間の睡眠中に分泌される成長ホルモンは朝方の血糖を10-20mg/dl程度上昇させる働きがあります。健康な人は自分の膵臓からインスリンが分泌され、血糖値に大きな影響がでることはありませんが糖尿病の人は血糖値が上がりやすくなります。
血糖値を下げる要因
続いて血糖値を下げる要因を紹介します。代表的なものは以下のとおりです。
- 体内のインスリン分泌
- 運動
- 薬
膵臓から分泌されるインスリンは、血糖値を下げる重要な役割を担っています。しかし、インスリンの分泌量が減ったり、分泌量よりも多くの糖分を摂取してしまうと血糖値が上がってしまいうのです。
運動をすると筋肉に流れる血液の量が増加します。体の隅々までインスリンがいきわたると、筋肉の中に糖分が取り込まれ筋肉を動かすエネルギーとして活用されます。その結果、血液中のブドウ糖の量が減り血糖値が下がるのです。
そのほかに、血糖値を下げる薬は数多くあります。代表的なものはインスリンですが、糖分を体に吸収しにくくしたり、インスリンが働きやすくしたりとその働き方は多岐にわたります。
血糖値はどのくらいに下げるべき?
血糖値はどのくらいに下げるべきなのでしょうか。まずは、血糖値の正常値と目標値を理解しましょう。
血糖値の正常値と目標値
血糖値は、2つのタイミングで測定した値が基準値になっています。
1つ目は、お腹が空いているときの値(空腹時血糖値)です。空腹時血糖値の正常値は以下の通りです。
空腹時の血糖値が100~109㎎dlの場合には、糖尿病予備軍やかくれ糖尿病の可能性があるため注意が必要です。
2つ目は、食後2時間値です。
食後2時間値の正常値は以下の通りです。
食事をすると誰でも血糖値が上昇しますが、多くの場合は血糖値は自然に70~110㎎/dlの範囲内に低下します。しかし、血糖値が糖尿病や糖尿病の可能性がある人は値が高めになってしまうのです。
なお糖尿病患者の治療で血糖値を下げる場合にも『空腹時血糖値 70~110㎎/dl』『食後2時間値 140㎎/dl未満』を目標にしています。さらにHbA1cや低血糖症状など、多角的な視点からお一人おひとりの合わせた血糖値の目標値を設定します。
しかしながら、高齢者や低血糖を起こしやすい人は、目標値をやや高めに設定するケースがありますので、必ず主治医と相談するようにしましょう。
血糖値を下げる3つのポイント
血糖値を下げるためには、次の3つのポイントが重要です。
簡単に表にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
食事内容を見直す |
よく噛む、野菜を食べる、規則正しく食べる、暴飲暴食を避ける |
生活習慣を見直す |
規則正しい生活をする、ストレスを減らす、運動する |
薬物治療をする |
医師の指示に従い薬を使用する |
血糖値を下げる食べ物はある?具体的な方法は?
血糖値を下げる食べ物はありません。なぜなら、どのような食べ物でも微量の糖質が含まれているからです。では、血糖値を下げるにはどうしたらいいのでしょうか。方法は簡単です。血糖値を上げないようにするのです。体内で分泌される最大量のインスリンで賄える程度の血糖上昇におさえれば、おのずと血糖値のベースラインはさがります。
血糖値を上がりにくくする具体的な食事
食品には、ほかの食品と比較して血糖値が上がりにくいものがあります。たとえば、野菜・きのこ類・豆類・ 海藻類です。これらの食品には食材に含まれる糖質の量が少ないため、ブドウ糖として吸収される量も少なくなり、血糖値が上がりにくくなります。血糖値を上がりにくくするために、食事全体に占める野菜・きのこ類・豆類・ 海藻類の比率を多くしましょう。
そのほかにも糖分の吸収を妨げ、血糖値の上昇を避ける食品を活用する方法があります。
代表的な食品は「食物繊維に富んだ野菜」です。さらにたんぱく質などが多く含まれる主菜を先に食べ、その後、主食の炭水化物を食べると食後の血糖が上がりにくいといわれています。
これらの食品を上手く食べることで、血糖値を上がりにくくすることができます。その結果、食後高血糖が是正され、体内のインスリンが効果的に使われるようになり血糖値が下がりやすくなるのです。
血糖値を急激に下げる方法ある?危険性はないの?
血糖値をより急速に下げる方法はあります。具体的には、以下の方法です。
- 食事を抜く
- 医師の指示より多めにインスリンを投与する
- 血糖降下薬を飲んだり、インスリンを注射したりした後に糖分をとらない
しかしこれらの方法は、意図的に低血糖を起こし血糖値を下げるとても危険な行為です。
最悪の場合、痙攣(けいれん)をおこしたり、意識を失ったり、心臓が止まってしまったり、体に悪影響を及ぼすリスクが高いためおすすめしません。
血糖値を下げるための特効薬というのはありません。糖分の摂取量や運動量、血糖降下薬やインスリンの使用量に気を付けて、血糖値が上がりにくいようにしましょう。血糖値を下げるのではなく“血糖値を上げ過ぎない”ようにすることが大切です。食生活に気を付けて、血糖値が上がりすぎるのを防ぐことが、体にも優しく安全に血糖値を下げる方法ということですね。
まとめ
血糖値を適切な範囲に保つことは、糖尿病を予防し、健康を維持するために非常に重要です。生活習慣の改善、特にバランスの取れた食事と適度な運動は、血糖値をコントロールするための効果的な手段です。
当院では体に優しく、お一人おひとりの生活に合わせた血糖値の下げ方を指導しています。そのほかにも、血糖値や糖尿病について不安なことや気になることがある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。健康を守るために、スタッフ一同全力でサポートします。
参考資料
1)糖尿病診療ガイドライン 日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
2)重症副作用疾患別対応マニュアル 高血糖 平成21年5月 (平成30年6月改定) 厚生労働省
https://www.pmda.go.jp/files/000224773.pdf