コレステロールの正常値はいくつ?異常を放置すると大変なことに?!
「要検査。医療機関を受診してください。」健康診断の結果を見て慌てたことはありませんか?「まったく自覚症状はないんだけど」そう思われたかもしれません。なんとなくは知っているけど、コレステロール値が高いってどういう状態?HDL、LDLってどっちが「善玉」でどっちが「悪玉」だったっけ。コレステロール値が高いとどうしていけないの?
本記事ではコレステロールを正常に保つための食事や、運動方法についても紹介します。健診でコレステロールの数値が高いと指摘された方はぜひこの記事を読んで、健康的な生活を送るための参考にしてください。
コレステロールとは
コレステロールとは血液の中を流れている脂質のひとつです。
コレステロールには3種類あり、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪に分けられます。脂質と聞くとあまりいいイメージがないかもしれません。しかしながら、脂質は炭水化物、タンパク質と共に3大栄養素のひとつであり、人の生命活動や健康を保つために必要なものです。
細胞膜や臓器、神経組織などはコレステロールによって作られます。コレステロールには、髪や肌の滑らかさを保ち、細菌やウィルスが入り込まないように細胞を守る役割もあります。もしコレステロールがまったくなければ、髪はバサバサ、肌はガサガサになり、わたしたちは常に有害な感染症に曝されることになるのです。
コレステロールは、体の中にもともとあるものであり、外から食物として体内に入ってくるコレステロールはそれほど多くありません。
全体の総コレステロールのうち、70%〜80%はもともと体内にあるもので、食べ物から摂取するコレステロールはわずか20%〜30%です。多すぎる脂質は排泄され、常に体の中でバランスがとられています。ただし、摂取される脂質の量が多すぎれば脂肪として蓄えられ肥満につながります。一方、肥満体形ではないのにコレステロール値が高いと指摘される場合もあります。この場合はHDLコレステロールの数値が基準よりも低く、LDLコレステロールの数値がそれほど高くなくても、いずれ動脈硬化を起こすリスクが高いということです。
善玉コレステロールとは
「善玉コレステロール」とはHDLコレステロールのことです。HDLコレステロールは、血中に増えすぎたコレステロールを回収し、さらに血管壁にたまったコレステロールを取り除いて、肝臓へもどす働きをします。HDLコレステロールの数値が高ければいいかというと、そういうわけではありません。血管の壁についた脂は血管の柔軟性を保ち、破れにくさを保つために必要だからです。
悪玉コレステロールとは
「悪玉コレステロール」とは、LDLコレステロールのことです。肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を持ちます。ただし最近はLDLコレステロールそのものが悪いわけではなく、LDLコレステロールの血液中に占める割合が高くなることにより、血液の粘度が上がり血管を傷つけることが問題であることがわかっています。
総コレステロール値の新基準とは
近年、HDLコレステロール、LDLコレステロールの値を単体で見るのではなく両方の数値のバランスで見るという「総コレステロール値」を重視するようになってきました。総コレステロールの新基準値は、1dLの血液中に150〜219mg/dLというものです。
単に高ければ「悪い」低ければ「良い」というものではないのがコレステロール値です。コレステロールについての正しい知識を持ち、健康な生活をしましょう。
善玉コレステロールの基準
40mg/dlが基準値とされており、これよりも低いと低HDLコレステロール血症といわれ、脂質異常症の疑いがあるとして医療機関の受診を勧められます。ほうっておくと動脈硬化の原因となることがあり、改善が必要です。やせ型なのに高コレステロール血症と指摘される場合もあります。
悪玉コレステロールの基準
悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール基準値は、140mg/dL未満が理想です。180mg/dLを超えた場合、高脂血症といわれる状態になり、医療機関を受診するようにすすめられます。ここまで数値が高いと、血液はいわゆる「ドロドロ」の状態です。さらに、酸化した脂が血管の壁に引っかかってたまり始めると壁は厚く硬くなります。これが「動脈硬化」です。また塊になった血液が血管の壁から突然はがれて心臓や脳の血管に詰まれば心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の原因になります。
新基準としてnon-HDLコレステロール値を知る
non-HDLコレステロールとはつまり、「HDLコレステロールでない」コレステロール、という意味です。HDLコレステロールから「LDLコレステロール」「リポタンパク質」「レムナント」の数値をさし引いた数値を指します。
「レムナントコレステロール」とは中性脂肪とコレステロールが合体した「リポタンパク質」が分解された後に残った、いわば「ゴミ」のことです。血中のマクロファージが回収していくのですが、そのまま血管の壁にくっついたままになります。これが血管の壁を肥大化させます。血中の中性脂肪の割合が高く、LDHコレステロールの比率が低い人に多く見られます。
「non-HDLコレステロール」=「総コレステロールの数値」-「HDLコレステロールの数値」
170mg/dl以上で「高non-HDLコレステロール」となります。高脂血症のコントロールのためにはLDLコレステロールの数値だけでなく、non-コレステロールの数値も一緒に見ることが重要です。
non-HDLコレステロールの種類
LDLコレステロール |
悪玉コレステロール |
リポタンパク質 |
中性脂肪とコレステロールが合体したもの |
レムナントコレステロール |
中性脂肪とコレステロールが分解された後のゴミ |
コレステロール値の異常
「高脂血症」と「高コレステロール血症」とはどう違うのでしょうか。「高脂血症」とは血中の脂質の占める割合が高いことを指します。一定の数値を超える値が出た場合、「高脂血症」と診断されます。そのうち「LDLコレステロールの数値が高すぎる」のが「高コレステロール血症」です。
高コレステロール血症 |
LDLコレステロール値160mg/dl以上 総コレステロール値240mg/dl以上 |
高コレステロール血症について
高コレステロール血症の血管内では、コレステロールを運搬するLDLが増え、血液がスムーズに流れにくくなり、血管壁に傷がつきます。さらに、酸化LDLを取り込んだ泡沫細胞は血管壁に沈着し、柔らかく破れやすい「脂質プラーク」と呼ばれるコブを形成します。
血管は狭まり、血が流れにくくなります。これが動脈硬化です。一般的に、血管が75%まで狭まっても血流は100%保たれると言われています。階段を上ると息切れする、常に動悸がする、血圧が高いということが続いているなら、すでに血管はかなり狭まっており危険な状態であると考えるべきです。
低コレステロール血症について
コレステロール値が低ければいいのかというと、そういうわけではありません。「低コレステロール血症」と診断されるのは「総コレステロール値」が120mg/dl以下の時、またはLDLコレステロールが50mg/dl以下の時です。
なぜコレステロール値が低くなるのかについてはよくわかっていませんが、何かしらの病気によって過度に排出されてしまう場合(二次性低脂血症)と、遺伝などによる「原発性低脂血症」によると考えられています。
低脂血症を引き起こすと考えられる疾患は以下のようなものです。
- 甲状腺機能亢進症(バセドー病)
- ガン
- 低栄養
- 慢性感染症
- 消化不良
- アジソン病などの副腎不全
低コレステロール血糖症の場合、血管が薄く、脆くなります。食生活の乱れやストレス、加齢などによって高血圧症を併発した場合、脳出血などのリスクが高くなります。
コレステロール値が高くなる原因
コレステロール値が高くなる原因はひとつではありません。生活習慣や食事、遺伝や何らかの疾患が隠れている場合があります。女性は閉経後にホルモンバランスが変化することなど、様々な原因が関係しているのです。
食事
コレステロール値を上げる最大の原因は偏った食事です。脂質の多いジャンクフードや、マーガリンに使われているトランス脂肪酸の過剰摂取は避けましょう。肉や牛乳、卵黄やバター、チョコレートなどに多く含まれる飽和脂肪酸の摂りすぎにも注意すべきです。
肥満
肥満を指摘されている場合、体内の中性脂肪の割合が高くなっています。中性脂肪とはエネルギーとして代謝されなかった脂肪が内臓のまわりに蓄積されたものです。中性脂肪は体温を保ち、人間が活動するときに必要なエネルギーを生み出すものですが、消費される割合より代謝されなかった分が上回ると肥満の原因になります。
肥満はほとんどの場合、脂質の多い偏った食事と運動不足によって起きます。特に女性は閉経後、代謝率が低くなるため内臓脂肪が多くなる傾向にあり、注意が必要です。
中性脂肪は「アブラ」なので、水分である血液には溶けないため「リポタンパク質」と結合して血中を流れています。代謝されずに酸化すると血管の壁に付着し、動脈硬化の原因になります。
体質・遺伝
遺伝子の異常によって脂質が処理できない人がいます。この場合、若い時から動脈硬化が進んでしまい、心筋梗塞や狭心症といった心臓病を発症するリスクが高くなります。これは家族性高コレステロール血症と呼ばれ、年齢や生活習慣とは関係ない場合がほとんどです。難病として指定されており、注意深い観察が必要とされています。
コレステロール値を下げる方法
コレステロールを下げるためには、生活習慣の改善が求められます。まずは栄養指導です。その他にも運動療法や、飲酒や喫煙の制限、ストレスコントロールなどがあります。
食生活を改善する
2015年に厚生労働省が、日本人の食事摂取基準について改訂しました。それまで「卵は1日1個まで」とされていましたが、その基準は現在廃止されています。だからといって、どれだけ食べてもいいというわけではなく、一日に摂取する飽和脂肪酸の量をコントロールすることが大切です。コレステロールは野菜やキノコ、海藻類や大豆などの繊維質のものを食べると下がることがわかっています。バランスの取れた食事をすることが大切です。
運動する習慣をつける
運動することにより代謝されるエネルギーの量は必然的に増えます。内臓脂肪を減らし、血中のコレステロール値を下げるのに効果的です。少し息が上がるぐらいの強度を目安に、一日20〜30分の有酸素運動を週に2回〜3回程度行うように心がけましょう。エネルギーはおもに筋肉で消費されます。適度な筋力トレーニングをするのもいいでしょう。
筋力アップを目指して、エレベーターを使わずに階段を上がる、ひと駅手前で電車やバスを降りて歩く、などの軽い運動から始めてみてはいかがでしょうか。
- 水泳
- ウォーキング
- スロージョギング
- エアロビクス
- サイクリング
- 軽い筋力トレーニング
飲酒の制限と禁煙
お酒は脂肪を含みませんが、糖分を多く含むものがあります。また、お酒があれば脂肪分の多い食事を摂る機会も増えるものです。多量の飲酒は控え、節度ある適度な飲酒量を心がけましょう。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素やニコチンは悪玉コレステロールを増加させるということがわかっています。また、一酸化炭素は活性酸素の過剰生産を促します。LDLコレステロールが酸化し、血管の壁に潜り込みやすくなるため血管が狭くなります。
またニコチンはLDLコレステロールを増やすばかりでなく、HDLコレステロールを減らすことも知られています。コレステロールの数値が高く、生活の改善を勧められたら、いますぐにでも禁煙するようにしましょう。
ストレスコントロール
ストレスを受けると、交感神経が刺激されて血圧が上がり脈拍が早くなります。アドレナリンが放出され、ストレスフルな状況に体を備えさせようとするからです。さらに、ストレスによって体がダメージを受けることを避けるため「抗ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾールが増加し、糖を生成して血糖値を上げます。
これは体の防御作用として大切なものですが、慢性的なストレス状態が続くと、血糖値がずっと高いままの状態になるのです。糖を分解しきれなくなり、内臓脂肪や皮下脂肪となって蓄えられていきます。結果として血中のコレステロール値が高くなるのです。ストレスがあっても負けない体を作るため、規則正しい生活を送り、特に睡眠時間をしっかり確保するようにしましょう。
まとめ
コレステロールを含む脂質はわたしたちの生命活動にとって不可欠なものであり、基本的には「善悪」はありません。問題になるのはバランスが取れなくなったときです。健康を保つ秘訣はコレステロールのバランスが取れた状態を保つこと、と言えます。上記内容を踏まえて、コレステロールを下げるような生活習慣を整えていきましょう。
参考にしたサイト一覧
- 大正製薬(https://brand.taisho.co.jp/contents/livita/231/#m1)
- サンスター(https://www.sunstar-shop.jp/column/article/20191015.html)
- 足立胃腸科クリニック(https://www.adachi-ichou.com/consultation/30.html)
- 一般社団法人日本健康倶楽部(https://www.kenkou-club.or.jp/check_mikata06.jsp)
- MSDマニュアル家庭版(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0)
- 農林水産省(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_eikyou.html#:~:text=%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%E9%A3%BD%E5%92%8C%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8,%E5%A4%9A%E3%81%8F%E5%90%AB%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)
- 時事メディカル(https://medical.jiji.com/topics/2424)